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その72・泣いている僕に

今日も僕は泣いている。


学校でいじめに遭っている小学六年生の僕は、もはや生きる意味も失いかけていた。


母は僕が三歳の時に捨てるように蒸発し、父は仕事一筋で今は祖母に育てられている。


だが、周りには母親がいる。


それだけでも僕は寂しさが募り始めていた。


母親がいるといないの違いだけで、幸福も希望もなくなり、祖母に育てられているとはいえ、なんだか一つ周りとは格が違うことに、薄々と実感していた。


そんな中、僕は「母親がいない」ということで、理不尽ないじめに遭い続けていたのだ。


毎日泣きながら、通学路を歩き始めている自分。


涙も枯れきっており、ただ表情だけが悲しみを表していた。


家に帰っても寂しさが積もっていくばかりで、もうこのまま家には帰りたくない。


そんな感情が出ており、近くの公園にあるブランコに小さく揺られていると


「大丈夫?」


目の前には見知らぬ女性が立っている。


「誰?」


女性はしゃがみこみ、ハンカチを持ち始め、僕の目を拭き始めた。


「こんなにも泣いて。何かあったの?」


見知らぬ女性には話しかけてはいけないと、家族や学校から言われているため、首を横に振ると


「何もないのに涙が出ることはないと思う。目も腫れて、どうしたの?」


「何もない」


「いじめられてるの?足、ケガしてるじゃない」


よく見ると、足から出血をしていた。


恐らくいじめっ子から酷く蹴られたり、叩かれたりするためその際に出来た傷なのだろう。


僕は全く気付かなかった。


それほど、僕は心が追い詰められていたのだろう。


女性が心配そうな表情を浮かべると、近くから祖母の声が聞こえた。


すると女性は気まずい表情を浮かべて、祖母を見るや否やその場を離れようとした。


すると祖母がその女性に


「また逃げる気?」


女性は後ろ姿のまま一瞬立ち止まったが、その場を離れていった。


「おばあちゃん。あの人誰?」


「ん? 誰だろうね。でも大人になったら分かるかもよ」


「え?」


すると祖母が僕の足を見て


「あらやだ。怪我してるじゃない」


「大丈夫だよ」


「そんなことないでしょ。すぐに帰って消毒しよう」


そのまま祖母に連れられて帰ることにした。


一体あの女性が誰なのか。


結局分からずじまいであり、この日を境にあの女性は僕の目の前に現れることはなかったのだ。


だが、時は過ぎ、高校生になった僕は初めて小さい頃の家族アルバムを見ることにした。


その時、あの女性が写っていた。


僕は目を見開きながらも、自然と涙が溢れ出ていた。


赤ちゃんの時の僕を抱きながら。


~終~

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