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その69・MCサプライズ

先週、私の大事な母親があの世に旅立った・・・


二年前から「アルツハイマー型認知症」を患っており、長らく介護につきっきりだったが、やはり悲しさは消えない。


一人娘として恋愛・仕事・趣味を投げ出してでも、少しでも母の傍に居てあげたいと思い、面倒を見た。


二年前から始めた内職により、少しの貯えがあるがものの、ほとんどが介護に消えていった。


それでも私は一切不満に思ったことはない。


少しずつ消えていく記憶を止めてあげたい。


無理と分かっていても、たった1%の希望を胸に抱きながら、日々過ごしていた。


だが、先週亡くなってしまったことにより、悲しさや寂しさが消えないまま、現在私はライブ会場にいる。


友達が気を遣ってくれたのか、私が大ファンである〈バンド〉のツアー千秋楽のチケットを取ってくれていた。


人気のバンドでもあるため、そのチケットが取れただけでも運がいいと思い、ステージから少し離れた位置で友達と並んで立っていた。


少し介護疲れもあったため、これで気分が晴れたらいいなと感じていると、バンドのメンバーが続々とステージに立ち始めた。


その瞬間、聞いたことのない声援やメンバーの名前を叫ぶ声などで、会場が揺れていた。


初めてバンドの生身を見たため、私も小さく拍手をしていると、ボーカルがマイクを手に取って、曲紹介と共に音色が奏で始めた。


私が高校時代に好きだった曲から、介護の間に発売された曲までを演奏してくれており、それだけでも幸せな限りだった。


「ありがとう!!」


そうボーカルは叫んでから、しばらくしてMCタイムへと入った。


「今日はみんな来てくれてありがとう。遠くから来てくれたファンのために、最高のライブにしたいと思っております!!」


声援が大きく響き渡った。


するとボーカルが真剣な表情を浮かべてから


「今日は、少し僕の思い出話をしたいと思います。僕の母親は認知症でした。僕がバンドを初めてすぐに親父から「診断を受けた」と連絡が入り、僕は愕然としました。その二年後に認知症が進み、記憶がない中、亡くなりました」


そんな過去があったのか。


ボーカルは所謂「ヴィジュアル系」としてスタイルなどを維持してきたのだが、そんな目の奥に私と同じような過去があったとは思いもせず、話を聞き入れていると


「それでも、今日来てくれた中には、僕と同じ過去を持った方もいます。そんな方に言いたいです。大丈夫。君がしたことはきっと、お母さんに届いていると思います。偉いよ。凄いことだし、俺には到底出来ない。だから、これからは自分の好きなことを費やして、生活を送ってほしい。そんな言葉を送って、この曲に行きたいと思います」


そう言って曲は「しんみりとしてバラード」が演奏された。


私は思わず号泣してしまった。


後から聞いた話、どうやら友達がスタッフに言って、無理を承知でお願いをしたみたいだ。


ボーカルもそうだが、隣にいる友達に感謝を伝えてから、私はこのバンドの推し括を進めていったのだった。


~終~

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