その67・強盗は元カレ
私は一人のコンビニ店員だ。
ごく普通の場所にあるコンビニの店員としてアルバイトをしているのだが、今日はごく閑散しており、あまりお客さんも入っていなかった。
いつも勤務しているのは夜間であり、深夜帯はほとんどをコンビニのバイトに費やしている。
何故だかあまりお客さんが入らないと、自分としてもかなり退屈に感じてしまう。
普通ならこの時間が幸せと思う人もいるかもしれないが、私は仕事が嫌いではないため、仕事がない分不満に思ってしまうのだ。
ため息をしながらも、レジカウンターにて一人、立ち尽くしていると、黒い服を着たマスク姿の男性が入ってきた。
すると、私にナイフを向けて
「金を出せ」
私はいきなりのことに、驚きを隠せずにいた。
「やめてください」
「いいから、金を出せ」
この時のマニュアルを、私は念のため覚えていたのだが、突然のことで頭が真っ白になってしまったため、何をしていいのか分からなくなってしまった。
目の前には凶器があるため、あまり下手に刺激をさせないほうがいい。
金を本当は出さない方が良いかもしれないが、このまま刺されてあの世に参るよりかは、まだ全然マシである。
私は言われるがまま、レジからお金を取り出した。
すると強盗が
「あれ、絵美じゃん」
「え?」
強盗がいきなりマスクを取り出した。
その顔は完全に元恋人であった。
謎の再会に、私は開いた口が塞がらないまま
「康介、何してるの」
元恋人は少し戸惑いの表情を見せてから
「あっいや、ボランティア活動だよ」
これは言い訳には最低の部類だ。
そのため、怒りを露わにしながらも
「なわけないじゃん。これのどこがボランティア活動だよ」
「だから、別に強盗じゃないって」
「あのさ、私たちが別れた理由分かる?」
「えっと、すれ違いだっけ?」
「違う。あなたのお金の使い方よ。毎日毎日パチンコ三昧で、私のお金まで使い始めたから別れたの」
「あぁ、そうだっけ」
元恋人はとぼけた顔をした。
私はよく覚えている。
もちろん、この人のことは好きだった。
だが、私が必死に働いて結婚費用のために貯めたお金を、こいつは半分以上もパチンコに使った。
もちろんお金も全部返っては来なかったため、幻滅して去年別れたのだ。
恐らく現在もギャンブルにはまっているのだろう。
だから強盗をしているのだ。
私はため息をしながらも
「あのさ、今から警察を呼ぶからさ。ちゃんと反省して」
「い、いや、それだけはやめてくれ」
「ダメよ。凶器向けてるんだから」
「頼むよ」
「ダメ、ちゃんと更生して戻ってきて。そしたら、私あなたとやり直してあげるから」
「え?」
「あなた、私がいないとこんなことまでしちゃうんだから。仕方ないわ」
この決断が決して正しいとは思わないが、これが私の愛の形である。
そのまま彼は警察に連れていかれたのだった。
あの人が更生するのを見届けるために、内心祈っていたのだった。
~終~




