その61・花子さんがカウンセラー!?
私は今、女子生徒の相談を聞いている。
学校には様々な怪談がある。
その中で有名なのは「トイレの花子さん」。
夜中トイレに入り「花子さん、遊びましょう」と個室トイレに向けて言うと、花子さんが出てくるというものだ。
各県地域によって、どんな花子さんが出て来るかは違っているが、共通しているのは、どれも花子さんは幼い女の子というところだ。
とある小学校にて、トイレの花子さんをしている私は、毎日子供たちを驚かせる準備をしている。
どんな子が来るかは分からないが、私は来たと分かったら必要以上に驚かせてしまう。
私の仕事はただ驚かせるだけだ。
それ以外の仕事は基本しない。
以前では、女の子が入ってきた際、上から脅かしてしまい、気絶させてしまうことがあった。
あれは私の中でも意外なことであり、後に反省をした。
ただ、一つのルールがあり、決してあの世に連れていってはいけないというところだ。
これは先輩花子さんから教わったことであり、必要のない人間をあの世に送ることによって、私たちはエンマ大王から怒られるという羽目になってしまい、とても面倒であるからだ。
私はその教えをきちんと守っている。
そんなある日のことだった。
私はいつも通り、昼頃。
静かなトイレに潜んでいると、誰かが入ってきた。
これは良い獲物だと思い、ドアをゆっくりと開けると、そこには涙を流しながらも、鏡を見ている一人の生徒がいた。
私は意外な状況に、戸惑いながらも
「うらめしや~」
そう言うと、女子生徒は何も驚かずに
「ねぇ、花子さん。相談聞いて」
「え?」
何故驚かないのか。
むしろ「相談を聞いてほしい」?
誰に頼んでいるのか訳が分からずに
「え?待って、どういうことなの?」
「だから、相談を聞いて」
何故か食い気味に私の傍に寄ってきた。
これは一体どういう状況なのだろうか。
私は学校で有名な花子さんだ。
しかし、女子生徒は涙を流している。
これは相談を聞かずにはいられないと思い、そのまま話を聞くことにした。
「もう、なんだか生きてる心地がしなくて」
「そんな大変なことがあったんだね」
この女子生徒は、他の生徒からいじめを受けていた。
それも私が言うのもあれなのだが、かなり酷いやり方をしている。
「私、もうダメかも・・・」
なんだか生徒が可哀想に見えて来た。
私は幽霊であり、カウンセラーではないが、それでも一人の元人間としてアドバイス出来ないことはないかと、頭の中で探った。
すると、私は
「その女子生徒今度連れてきな」
「え?」
「驚かせるから」
「あの世に連れて行かないでよ」
「そんなことしないさ。私は驚かせるだけが専門なの」
「でも・・・」
「いい?私が絶対に言いたいのは。あなたがダメだと思う必要はないの。人生にダメという言葉はない。人間誰だってきついことはあるかもしれないけど、それでもダメという言葉で片付けることに、私は違和感があるの。みんな必死に生きて、必死に泣いて、必死に笑う同志なんだから。それが分からない限りは、まだまだ半人前ね」
女子生徒は微笑みながらも
「ありがとう。話を聞いてくれて」
「いえいえ、何でも聞くから、またおいで」
「分かった」
そのまま、女子生徒はその場を離れていった。
なんだか私もトイレの花子さん人生の中で、唯一人の役に立ったなと思い、嬉しく思い始めていた。
~終~




