領地で事業を見学したり、宿題したりしています。
コリーヌはアシュッツベルク公爵家の領地へ帰って来た。
テリアスが、レオンフィード皇太子に訴えて、迅速に調査した結果、エリーヌ・カティリシアス公爵令嬢によるマーシュリー伯爵家の妨害行為だと判明した為、証拠を突きつけ、カティリシアス公爵家にはそれ相応の賠償を、エリーヌは簀巻きにされて、外国へ行く船に乗せられ、長期海外留学という処置を施された。しばらくは帰ってこれないだろう。
両親や、姉達は本婚約を凄く喜んでくれて。
再び、夏休みの残りを過ごすためにテリアスと共に領地へ行き、コリーヌは今、アシュッツベルク公爵領地屋敷の裏手にある滝の傍の草地に腰かけていた。
壮大な滝の光景は、見事の一言に尽きるのだが。
裸のテリアス様が、滝壺で泳いでいなければね…
白竜の化身のテリアスは水が好きみたいで、何も素っ裸になって目の前で泳がなくてもいいのにとコリーヌは思う。
私だって乙女なんだっーー。少しは恥じらいを持ってっていうの。
と叫びたいが、ここはぐっと我慢して、なるべく視界に入れないように、
滝にかかる虹を堪能することとした。
どうして、テリアスは、自分を気に入ってくれたのか…
もし、自分が特別な力がなかったら、テリアスが白竜の化身でなかったら、
絶対に結ばれる事がない縁だったであろう。
プロポーズされた事は嬉しかったし、この際、もう竜だと言う事は目を瞑って。
家族だけでなく、テリアスの両親も幽霊たちも応援してくれるし…
とりあえず、領地に来たからには、アシュッツベルク公爵領の事を少しでも勉強して帰らないとと思った。
それに、学園の宿題もある。
コリーヌはまだ学生である。王立学園の宿題は結構大変なのだ。
テリアスが滝壺から上がってきて、素っ裸のまま隣に腰かけて。
「ああ、気持ちよかった。ここで泳ぐのは気に入っているんだ」
「服っーーー。服を着て下さいっ」
テリアスのファンの女性達が見たら、卒倒するような恰好だろう。
テリアスは服を着ながら、
「アシュッツベルク公爵家の事業を見たいとの事だったな。丁度いい。我が公爵家一押しの事業を見せてあげよう。学園の宿題にもあるんだろう?」
「はい。事業を見学してレポートにしたいです。よろしくお願いします」
「君の役に立てて嬉しい」
テリアスが額にチュッとキスをしてくれた。
何だか照れくさい。
二人で屋敷に戻り、馬車に乗って街へ出かけることになった。
見渡す限りの葡萄畑。葡萄はまだ収穫時期ではなく、緑の実を付けて実っている。
今日も暑く、良く晴れていい天気で。
馬車の向かい側に座ったテリアスは、
「一押しの事業見学の後は、我が公爵家のワイナリーへ案内してあげよう。ワインを作る事も事業の一つでね」
「わぁ、楽しみですね。一押しの事業ってなんですか?」
「藁を使い、ゴザを作っている。皇室御用達だ。我が公爵家の誇りとなる事業だ」
「それは素晴らしいですね」
ん?皇室の方々はゴザの上で涼むのかしら…。確かに暑い季節、ゴザの上で涼んだら気持ちいいかもしれないよね。
馬車は街へ乗り入れ、とある一軒家の前に止まった。
テリアスにエスコートされて、馬車から降りる。
扉をノックすれば、職人のような男が出て来て。
「これは公爵様。お待ちしていました。さぁどうぞ」
中へ案内してくれた。
中では10人位の職人達が、藁を編み、ゴザを作っている。
様々な色に着色されたゴザで器用に模様を作ったり、一目で高級品だと解るようなゴザだ。
コリーヌはこれは素晴らしいと思った。
「凄い芸術品ですね。さすが皇室の方々。品位のあるゴザの上で涼をとるのですね」
すると、職人さんがこちらを見て、困ったような顔をしたので、
コリーヌはテリアスに聞いてみる。
「あの…。違うんですか?」
テリアスは頷いて。
「これらのゴザは、皇太子殿下直々の命により、簀巻きにされる罪人たちに使われるゴザだ」
「えええええっーーー」
「今回は、マーシュリー伯爵家の商売を妨害したエリーヌ・カティリシアス公爵令嬢を簀巻きにして外国留学へ行かせる為に使用した。いかに罪人とはいえ、令嬢を包むゴザには特に凝った模様を施さねばならない。それがレオンフィード皇太子殿下の美学だ」
うわっ…。変な皇太子殿下と言う噂はあったけど、知らなかった。
簀巻きのゴザはアシュッツベルク公爵家の事業だったんだ…。
テリアスは説明を続ける。
「皇宮の一角には今までの罪人を包んだゴザが展示してあるぞ。有名なゴザは、第二皇子ヘンリー殿下が数年前に簀巻きにされ、辺境の国境警備隊へ護送する時に使われたゴザだ。
それから、ヘンリー殿下をたぶらかし、リリアーナ皇太子妃様を陥れようとした当時の男爵令嬢が処刑場へ運ばれる時に簀巻きにされて護送されたゴザだな」
「展示してあるんですか?それ…」
「ああ。一番目立つところに展示してある。今度、皇都に戻った時に、案内してあげよう」
「有難うございます」
うわっ…見たいとも思えないが、断れない。
何で簀巻きにして護送するんだろう。この国だけだよね?
変わった風習だわ。
ともかく、夏休みの学園の宿題の為に、良く話を聞かないと。
コリーヌはメモを取りながら、簀巻きのゴザの作り方。
いい藁の選び方。模様を入れる時の入れ方。
そしてテリアスから、簀巻きのゴザの歴史。
どうも、レオンフィード皇太子の最愛の妻、リリアーナ皇太子妃を守る為に、
罪人を簀巻きにすると言う事を考え出したのがきっかけとの事。
いかに手際よく罪人を簀巻きにするか。
そう言えば、簀巻き講習なんて物が、入学当初あったな…
来年も学年が変われば必ず受けなければならない講習だったような。
そんなに大事なのかっ???簀巻きって…
一般人が受けなければならない程に…
ぐったり疲れ果てたコリーヌはテリアスと共に馬車に乗る。
一応礼を言っておかないと。
「有難うございました。いい勉強になりました」
「それは良かった。我が公爵家自慢の事業だからな。結婚したらコリーヌも、この事業に関わらねばならない。勉強になって何よりだ」
簀巻きのゴザの事業の後は、約束通り、公爵家のワイナリーへ連れて行って貰った。
ひんやりする洞窟の中に、ワインの樽が沢山並んでいて。
管理人がテリアスとコリーヌを出迎える。
「これは公爵様」
「婚約者のコリーヌ・マーシュリーだ。ワイナリーを見物に連れて来た」
「承知しました。ご案内します」
ワインの樽を色々と見せて貰い、(テリアスは色々な年代のワインを味見していた。)
コリーヌは見学の後、葡萄ジュースとチョコケーキをご馳走になった。
「うううーーん。美味しい」
「それは良かった。」
「今日は色々と有難うございました」
「コリーヌが喜んでくれたようで嬉しい」
本当に楽しかったが、しかし…。宿題がまだまだ残っている。
これは手伝って貰おう。
「テリアス様。お願いが…」
「何だね?」
「王立学園の宿題が結構大変なんです。手伝って貰えませんか?」
「ああ、あそこの学園は宿題の量が半端でないからな。いいだろう。手伝おう」
「ありがとうございます。では、今夜から…よろしくお願いします」
コリーヌは思った。
幽霊たちにも手伝って貰おうと…。
人手は沢山あった方がいい。
屋敷に帰ると、先祖の主という幽霊と、幽霊のテリアスを探した。
廊下でばったり会って、
骸骨姿の先祖の主は、
「わしは名はソルジュというんじゃ」
幽霊の少年姿のテリアスは、
「それじゃ僕はリオでいいや。混乱しなくてすむだろうから」
「それじゃソルジュとリオ。これから宿題をやるから手伝って」
「えええ?ワシ、幽霊じゃけれども」
「僕も幽霊ですけど…宿題って幽霊も手伝わないとならないんですか?」
「暇でしょ。テリアス様も手伝ってくれるし、これから全員集合で宿題片付けるよ」
強引に幽霊たちにも手伝って貰う事にした。
部屋にテリアス、ソルジュ、リオを集めて。
ただし、テリアスには幽霊達の姿は見えないし、声は聞こえない。
コリーヌはまずはソルジュに、
「この国の歴史的出来事を調べないとならないの。解る事を頼むわ。それからリオは、絵を描かかないと。テリアス様は、私が体験した事を日記風にお願いします。」
3人は頷いて、一つの机の前に座り、宿題にとりかかった。
コリーヌは数学の宿題があるので、それを片付ける。
しばらくして、骸骨のソルジュが、
「書けたぞ。コリーヌ。読んでみるがいい。」
「どれどれ。」
- 〇月〇日 勇者一行がアシュッツベルク公爵領を通りかかった。我が公爵家は勇者一行を屋敷に泊め、もてなすことにした。
勇者のあの豊満なボディ。輝くような美しさ。星のようなキラキラした瞳。
全てがワシの好みじゃった。
従ってワシは夜這いを書けることにした。勿論、妻には内緒じゃ。
勇者のベットに潜り込み、
いいじゃろういいじゃろういいじゃろう。
何故か勇者は抱き枕に変化しており、背後に殺気を感じて振り向くと、妻が鬼のような形相で睨みつけていた。
翌日ワシは、頬を腫らしながらもリベンジ… -
「ちょっとどこが歴史的出来事なのよっーーー。勇者に夜這いなんてかけるんじゃないっーーー。書き直しっ」
リオが出来上がったと言うので、描かれた物を見て見ると、
コリーヌがそれはもう本物より美しく芸術的に描かれていた。
「ちょっとリオ。これじゃ出せないじゃないっ。どんだけ自意識過剰な女なのよっ。これって。美人に描いてくれたのは嬉しいけど描き直しっ」
テリアスはどうだろうと、ちらりと書いてある内容を見て見れば、
― 今日は婚約者のテリアス様が、滝壺で泳いでいる姿を見て堪能した。何という素晴らしき身体。鍛えているのだろう。乙女として私は胸の高鳴りを覚えた。近くで見たテリアス様は更に美しく男らしく、私は…もう愛しくて愛しくて。思わず抱き着きたくなるところを耐え忍んで、平然さを装って見せた。それから ―
「テリアス様。私の心情まで書かなくてよろしいですから。これじゃ恥ずかしくて提出できません」
「なかなか良いと思ったんだが…」
何だかどっと疲れてしまった。宿題完成するのかしら。
何だかんだで賑やかに時間は過ぎていくのであった。




