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5話「かさねた時間」

 

「もしもし、静月どうした?」

「優平くん、転校生には近づかないで欲しい」

「はぁ?何言ってんだよ。嫉妬、じゃないよな?」

「違う。彼女には悪霊がついてる。今まで見たことないくらい禍々しくて真っ黒なのが」

「えーっと……」

 ヤバい頭が追いつかない。

 つまり、雲雀野には悪霊がついてる。ヤバそうだから関わらないで欲しいってことか。


「静月は雲雀野を見たってことだよな?その目で」

「うん。廊下ですれ違ったの。美人だし目立つからすぐに分かったよ」

 静月がわざわざこんな嘘をつくとは思えない。だとしたら疑問が一つある。


「なぁ、静月。もしかして悪霊が付いてるか見えないのか?」

「見えないよ」

「そっか」

 今までそんな話は聞いてない。わざと話さないようにしてたな。


「雲雀野は悪霊を払う力を持ってるって昨日の夜電話で話したよな。もしかしたらーー」

「だとしても自分のは払えないんじゃない?払えるならとっくに払ってるはず」

「だよな〜」

 毎日のように電話をするので、昨日も電話をした。その際に美術室であった雲雀野との一通りのことは話しておいた。

 静月が悪霊という言葉を使ってるのも電話で言ったからだ。


 自分のは払えない。なら他人なら?

 雲雀野に払えるなら、同じ目を持つ静月も、もしかしたらーー


 ーー『私には見えるだけ、何もできない』

 まだ付き合う前にそんなこと言ってたっけ。その言葉にきっと今までの静月の人生の重さがある。


 そもそも不幸が訪れる人間のそばに静月にいては欲しくない。

 静月が見た中で酷い不幸には火事や交通事故、死に至るものもあったらしいし。


 雲雀野を見捨てる。それしかないのか?



『傘なんて貸さなくても?ダジャレのつもり?0点ね』


『そろそろ、さんなんて他人行事な呼び方やめてくれないかしら?り・ん・ねって呼んでほしいわ』


『明日も会えるのね。夢や妄想じゃなくて。また明日もまた明後日も』


『私は、雲雀野ひばりの 輪音りんね。優平の恋人です!』


『ねぇ、あなたは前世って信じてる?』


 あぁ信じてる。信じてるよ雲雀野。

 前世?


 ーー『あなたも使えるはずだけど』

 ーー『俺が?なんで?』

 ーー『前世で使えていたからよ』


 気の力は、俺にも使える。雲雀野は昨日美術室で確かにそう言ってた。


「俺だ。俺が雲雀野の悪霊を払う」

「?」

 静月に首を傾げられる。いきなり言われても理解なんてできないよなぁ。

「思い出したんだ。雲雀野は言ってた。俺にも気の力が使えるはずだって」

「でも、優平くんが危ないよ。払う前に不幸が訪れたら優平くん、死ぬんだよ」

「分かってる……」

 いや、本当の意味では多分分かってない。

 死なんて全然身近じゃないし静月の方がよっぽど本質的なものを理解してるんだろうけど。


「別に……わたしだって出来るかもしれないよ。なんで自分がやろうとするの」

「……静月に傷ついて欲しくない」

「勝手だよ。わたしだって怖いよ。()()()だって危なかったのに今回はもっと」

 あの時、静月と俺がまだ付き合う前の話。俺は交通事故で死にかけた。

 とっさに静月に助けてもらったけど本当の本当に危なかったよな〜あれは。


「わたしは納得できないよ。優平くんが命をかけるならわたしも一緒。それは絶対条件」

「……分かった」

「じゃあ優平くん、明日昼休みに転校生さんも連れてきて話そう」

「おう。じゃあバイバイ」

「うん。バイバイ」


 ハクション!!

 あー、電話に夢中忘れてたわ。雨だ雨。

 早く帰んないとな。



 静月は俺を死なせたくない。もし命がけなら自分も、か。


 当たり前だけど俺にとって静月が大事なように静月にとっても俺は大事だ。


 きっと、多分前世の俺と前世の雲雀野(あいつ)も……。


 あれ?

 明日悪霊の話をしたら雲雀野はどう反応する?


 そうだ。

 馬鹿正直に話したらお前は。


 作戦を練らないといけないな。


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