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天国と天使と

穏やかな日差しが少年を照らす。一面草原に包まれた中に孤独な少年が寝ている。

植物たちが優しい風に吹かれ、彼をくすぐっている。


「…?ここは?」


声が出る。


「天国…?いや、夢か?」


見渡す限りの草原には見たことない花が咲いている。先ほどまで彼をくすぐぐっていたのはその花だった。その花に触れようとしたときにはじめて自分が動ける状態であることに気づく。


「?」


体も軽い、声も出る。事故にあった俺の体は無傷だ。思いっきり叫んで転がってみた。


体がちょっと痛い、


草と土の良い香りがする。


「……………あれ???もしかしてこれは…」



もう一度ほほをつねってみた

これは夢でもない。


つまり、今いる世界は夢じゃない。

ここから分かることは1つ




「…俺死んだんだ…」


だってここが病院じゃないことはわかっている。

冷静になって思い返したらポロポロと涙がこぼれてきた。




親不孝だ


もっと、甘えておけばよかった。


もっと、感謝しておけばよかった。




友達


ゲーム返すのもっと早く返せばよかった


もっと遊べばよかったな


遊びに行く約束守れなかったな






「……………」




後悔してもしきれない。

こんな俺が、天国にいていいのか…?


もうこれは、地獄に行ってしまった方が良い

閻魔大王もミスって俺をこっちの天国に連れてきたんだ。


「こうなったら、閻魔大王にあいに行く…」



俺は袖で鼻水と涙を吹いて、立ち上がった。










「…閻魔大王ってどこにいるの」





広い草原で一人の声が響く。











がさガザ










よく分からずに道を進んでいたら


山の中にいた。










ぐぅううううううううううううう






「…死んでも、腹減るのか…?」




どれくらい歩いたか分からない。


アテもなく歩いていけば、もしかしたら、どこかに彷徨う魂を導いてくれる天使とかがいるかもしれないってご都合設定を考えてた。




「お腹空いた…死ぬ…あ、そっか死んでるのか…!」


なんて、つまらないギャグを1人で言ってみる。

これに返答してくれるのは、木に止まっている鳥だけだ。

奴は、気持ち程度にチュンと鳴いてくれた。気がする。


「前が緑しかねぇよ」


草をかき分け、道無き道を進む。その度に


空腹メーターが上がっていく。




唐揚げ、シチュー、カレー、グラタン、味噌汁…


そんなものはなくて、こんな状況になると人の知能は低下する。

普通では手に付けない、深いピンク色の果物に手をつけた。


近くで嗅ぐと甘い香りがして、ピンクの可愛らしい実だった。




「いただきま…………………」


「#&^+.^%.%!!!!!」


「へ?」


「×!!」




ひょいと口に、入れようとすると茂みから


少女がいきなり現れた。


「なっ!この果物はやらんからな!!!」


コバルトブルーの目が、俺を睨んだ。

どうやら、歓迎はされていないようだ。




しかし、こんな状況だが、この少女可愛い。




絹のような黒髪

毛先に近づく度に青くなっていた。

少しウェーブがかかっており、動く度に


ふわふわと揺れる。



そして、小さな花が彼女の髪のあちらこちらに、咲いているかのように、飾られている。

え?これ生えているの?




「え?え?天使?花の生えた天使??!!!」


「××××××○!!!!!」


「…何言ってんの?」


「×××××????」


「え、ちょ…可愛いけど怖い」


「………」




少し困った少女は、俺から果物を優しく取り上げた。




「お前何すんだよ!俺のご飯!!!」


「××××!」




彼女は桃色の実を持ち、手のひらでバツ印をする。




「ん?天使様はお腹すいてたのか??」




目の前の少女が何を話しているのか分からないので、俺は首を傾げる。それを見て少女は困惑しながらも少し考える素振りをして、閃いた!と花を髪の毛に満開に咲かせる。見てなさい!と言わんばかりに、その辺にある枝をドヤ顔で持った。




する土に枝の先で丁寧に絵を描き始め、手でちょいちょいと俺を呼んだ。絵を見ろってことだろう。




「ん?お絵描きか?」




彼女の描いた絵はドクロマーク




その隣に先程の桃色の実を置いて、枝でドクロマークと桃色の実を指す。




「なるほど!!!毒があるってことか!!」


「……………!」




どうやら俺の言葉は、通じないようだ。




しかし、自分の言いたいことが伝わったことに彼女は俺の反応から察して、ウンウンと頷いて見せた。




この世界ではまず俺は言葉を習得しないと何も出来ないことに気づいた。天国というのは不便なようだ。




とりあえず、俺は自分を指さし、


彼女と同じように土に絵を書く。




泣き顔の絵。


一人ぼっちの絵。


草原に佇む自分の絵。


ここが何処か分からず困る俺の絵。




意味が通じるように、頑張って描いた。


少女も一生懸命、俺の絵を見て、俺の状況を理解しようとしてくれた。






少女がまた枝をもつ。そして、俺の絵のいくつかを丸で、囲み、なにこれ?どういうこと?と言いそうな顔で、悩むポーズをする。




俺の描いた意味が分からなかったことを丸で囲むことで、質問してきた。天才かな?




それに返すように俺はまた絵を描いた。




ある程度これがつづき、いつの間にか日は暮れていた。少女が枝でまた絵を描く





オオカミ



左矢印




俺のことを指さし




夜も遅い


オオカミが出る


家に、おいで


左に向かうとある




と言ってくれた気がした。




その意味を理解した俺は唇が緩くなった。


そして、俺の顔を見て笑ってくれた。




こんな数時間で、友情が芽生えた気がするのは俺だけだろうか。




少女の心遣いに感動しながら、俺はまた泣きそうになった。




「あれ?でも、男が女の家に行っても…いや、なにもしないし…それに俺そういうの全然わからないし……うーーーん、え、どうしよう…」




葛藤を繰り返しながら俺は少女の後ろを着いていく、いつの間にか少女の家にお邪魔した。安心したのか、俺はぐぅうと腹の音がする。恥ずかしい。




少女はクスクスと笑いながら、ご飯を食べさせてくれた。




見た目はシチューだが、食べたことの無い味がした。


なんの味だろう、知らない木の実が口の中で溶けてホロホロ崩れた。甘くて美味しい。



「本当にありがとう!天使さん?えっと!名前なんて言うの?」




と俺は一方的に喋るが、意味は通じてない。


沈黙した空間で、少女は何か思いついたように、戸棚から本を持ち出し、俺の前で本を開いた。




「##.^9378!」




どうやら、言語書のようだ。


俺に覚えろ、と言っている気がする。




次に青年は戸棚から果物を持ってきて、俺の前で




「⊂」




と発音し




本の中に書いてある文字を指さす。






どうやら、この果物の名前のようだ。




「⊂」


と俺が同じように発音すると


少女はパァと笑った。当たりだ。




「…」




ふとそこで、俺は考えた。




確かに、今閻魔大王に、会ったとしても何も言えないし、状況を伝えることが出来ない。




天使の元で言語を習得する必要がある。




そう考え、この日から俺は青年の元で、この世界の文字を勉強することにした。そして、少女の畑の手伝いや、魚釣りなどをして食材を提供し家事や洗濯をした。それを言語を教えてもらう対価として受け取ってもらった。




まぁ俺、言葉知らないから働けないしさ?






その日から俺と少女の生活は始まった。






優しいこの少女は、いつも人に囲まれていた。困った人がいたらその人の手伝いや相談を聞き、子どもが泣いていれば、すぐ駆けつけ笑顔にさせる。ヒーローみたいだ。


疲れた顔を一切見せず、いつも必死に、元気に、明るく、だからこそ、その姿は人を和ませた。




その姿を見る度に俺は焦る




「早くここから出ていかなきゃな…あいつも迷惑だろう…」




俺と対象的な少女だからこそ、居心地が悪く、村人からは、変な目で見られている。




優しい少女を騙して住んでいる




言葉がわかってくるようになると、ただただ申し訳ない気持ちでいっぱいだった。




そのためにも、早く言語を覚えなければならない。


俺は必死で勉強した。








少女との出会いは春。

俺が現実で死んだのは夏だった気がする。


あれから、夏が来て、秋が来た。




日は刻々と過ぎ、こちらの世界での生活にだんだんと染っていく。

それと同時に、俺は大事な思い出が消えていくような感じがした。

窓からは見える外、柔らかそうな粉雪が降っている。


今日は積もるだろうなとか、明日の雪かきが大変そうだとか

そんなことを考えてしまう。

あちらの世界ではどんなふうに過ごしていたっけ。


「今日は一段と寒いね」


後ろから聞こえる声にびっくりする。そこには眠たそうな眼をこすり

暖炉の火にあたっているアイリスだった。。

毛布を巻いた彼女は見るからに気だるそうだった。

心なしか、髪の花も寒くて萎れている。


「そうだね、今日のご飯はシチューにしようか」

「りょうへいはさ、料理どんどん上手くなっていくね」

「そうかな?」

「それに言葉も、あんな短期間でこんなに覚えれて凄いよ!」

「アイリスの教え方が上手だからさ!」

「もぅ!そんなこと言って!!!」


アイリスのパンチが俺の肩をたたく。一見か弱そうに見えて、威力が意外と強い。

後、褒められるとすぐ調子に乗る。


先ほどまで萎れていた花も、花開いている。正直、厄介な特徴だと思った。気持ちがすぐにわかってしまうという点で、アイリスは嘘が付けない。


「暖炉の火力あげなきゃね」

「髪が焦げるからやめときなよ…」


アイリスは表情と共に、髪に咲く花も変化する。照れると蕾になったり、笑ったり喜ぶと一面に色んな花が咲く。今は蕾になったり咲いたりしたり忙しそうだ。可愛い。天使。天使だ。


以前、ここにいることに申し訳なくなり、1回だけ、出ていきたいと行った時は、髪に咲いていた花が怒りで枯れたり、飛んで行った。


仲直りをした後に、その花弁を掃除しながら、アイリスの一部…と思うと、興奮したのは黙っておく。








「そういや、アイリスの髪の花ってどうなってんの?枯れないけど、そういう飾り?」


だいぶ落ち着いたアイリスがこちらを見て、次は驚いた顔で、俺に問いかける。


「ねぇ、りょうへい、ひとつ聞きたいんだけど…あなたって魔法使えるの?これまで使ってるの見たことないんだけど」


花もアイリスに合わせて、驚いたように咲いてないつぼみが花開く


「魔法って?天国に魔法が必要なのか?」


「天国?え?」


「ここは天国じゃないわよ?ほら、私のこの髪の毛の花も魔法で咲いてるのよ」


「え、じゃあここは地獄?」


「いや、違うでしょ… 」




お互い噛み合わない会話が続く。








「「お互い何か勘違いしてない?」」





※追加


良平の視点からの紹介。


アイリス(年齢は16歳)


村人みんなから、信頼されている。

可愛い、天使。


柔らかい髪質で毛先はウェーブ

頭部の髪は暗めの黒、

毛先に近づくにつれて


黒→深い青→青→薄い青となっている


白い小さな花が髪の毛全体に咲いている。

表情に合わせて髪の花も変化する

基本、蕾やら咲いてる花がまばらにある。




嬉しい時、喜び→花が沢山開花


はずかしいとき→全部蕾になる。


怒る→枯れる


驚き→散る



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