RELOADに夢はない
忘れられた主人公は、気づいたら1人ぼっちだった。
いつの間にか施設にいて、いつの間にか養子として斎藤夫妻の元で愛情に与えられ、育てられてきた。だからこそ、将来は親孝行をしようと思っていた優しい少年。そんな矢先に交通事故に合う。
目覚めた先には、変な世界に来ていた。
残した親や友人を思い出し、わんわん泣きながら異世界をさ迷っている中
1人の少女と出会う。
夕暮れを見つめる悲しい眼が、あの日の自分と重なった。
ここでの思い出が増えると同時に、懐かしく優しい思い出を忘れて
今日もこの世界で生きていく。
「あそこのお宅の息子さんって…」
「全然似てないわよね~」
「あの子って、確か養子でしょ?」
「え?血が繋がってないの?だからあんなに似てないのね~、すごく乱暴な子だしさ」
「ちょっと!声が大きいわよ!!!」
犬のお散歩帰りの夕方
近所の人が俺を横目に話しているのを、聞いていた。
なにか良くない話をしている気がして、俺は聞かないふりをして、犬の名前を呼んで、俯きながら帰った。喉元になにかが詰まったように苦しくて、リードを持つ手に力がなくなっている。
幼いながらも、この言葉の意味を理解した彼は、
このころをきっかけに、胸の中に大きなおもりを付けることになった。
血が繋がってないの?_______________
「ぼくは、ここの家の、子どもじゃないの?」
最初は冗談だと思った。否定をしてくれる。きっとそうだと
ねぇ、おとうさん、おかあさん、なんでこっちを見ないの?
「ぼくは、この家の子どもじゃないの?」
二回目の言葉は、詰まらずに言えた。
呆然とした母は箸で掴んでいた、から揚げを皿に落とす。その瞬間に我に返り、母は口を開け、泣きそうな顔で少年の肩をつかむ。
「そんなわけないわよ!!あなたは母さんと父さんの大切な子どもよ」
「血が繋がってるから家族だ??父さんと母さんは血は繋がってないが、家族になったんだ。良平は父さんたちの子どもで家族だ。」
母も父も、本当の親ではないけれど、たくさんの愛情を注いで、悪いことをすれば、俺に向き合って、ちゃんと叱ってくれた。その親元ですくすく育てられてきた結果、彼は自称家族大好きな品行方正の好青年に成長した。
「はぁ、今日から大学受験の講座が始まる・・・しんど・・・」
「がんばれよ、父さん息子と酒が飲みたいんだ。」
スーツ姿の父親は通り過ぎに俺のおでこを軽くこつんとグーで殴る。ちょっと痛い。
「じゃあ、二人ともいってくる」
「「いってらしゃーい」」
「良平も早く支度なさい」
「はーーーい」
俺は伊藤良平、実母と実父はいないが、母と父との3人家族だ。
成績は平均。顔は平凡、才能もない。特技もない。
まぁ品行方正、好青年とはいったが、その件に関しては、ちょっと盛りました。
遅刻してパンを加えて学校に行くこともないし、世話好きな幼馴染はいない。
きっと、これが漫画だったら俺は主人公にはなれないだろう。
いつだってモブだ。
大学に出たら大人しく生きて、親孝して、大団円ルートを目指して頑張るんだと思っていた。
「じゃあ、行ってくるね」
「あんまり遅くならないようにね」
「うん!」
その日までは
「おい!早く救急車を呼べ!!!!!!」
「え、なになに?信号無視?」
「私も巻き込まれてたところだった・・・」
「事故だってさぁ」
「トラックに…?」
「救急車よんでも、遅いでしょ」
「うわぁ…朝から嫌なもん見たわ」
スマホをこちらに向ける高校生
シャッターの音が響いている
通りすがりのサラリーマンが俺を見ていく
汚いものを横目で流しながら歩いていく人もいる
俺の事を見る人人人人人人
「あ…………………ヴゥ…」
たすけて…たすけて…
そんな言葉を出そうとしたのに、
声が出ない、薄れていく視界の中で、鈍い痛みが息を吸うたびに身体中を走っている。鉄の匂いが俺の鼻を包む。止まらない出血で、だんだんと寒くなっていく体。足は通常ではありえない向きに曲がっている気がしている。今自分がどんな状態なのか想像もしたくもないし、今は見る余裕もない。大衆の言葉から、聞き取れる言葉を繋げるほどに絶望に落とされる。
「ヴぁ………うぅ……………」
痛くて、つらくて、早く楽にしくれよって思っても、意識が途切れたら、もう目が覚めないんじゃないか?とか、そんなこと考えたら、怖くて、でも、体は言うことを聞いてくれない。
親孝行は?大団円ルートは?
俺………死ぬの?
父さん?母さん?友達は?
とんだ親不孝だ。
あと、友達に借りたゲーム、返したっけ…?
遊ぶ約束、守れるかな?
視界がぼやけて、
意識が遠のいていく。
あ、やっぱり、これ、死ぬのかな