表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

RELOADに夢はない

忘れられた主人公は、気づいたら1人ぼっちだった。

いつの間にか施設にいて、いつの間にか養子として斎藤夫妻の元で愛情に与えられ、育てられてきた。だからこそ、将来は親孝行をしようと思っていた優しい少年。そんな矢先に交通事故に合う。


目覚めた先には、変な世界に来ていた。


残した親や友人を思い出し、わんわん泣きながら異世界をさ迷っている中

1人の少女と出会う。

夕暮れを見つめる悲しい眼が、あの日の自分と重なった。


ここでの思い出が増えると同時に、懐かしく優しい思い出を忘れて

今日もこの世界で生きていく。

「あそこのお宅の息子さんって…」

「全然似てないわよね~」

「あの子って、確か養子でしょ?」

「え?血が繋がってないの?だからあんなに似てないのね~、すごく乱暴な子だしさ」

「ちょっと!声が大きいわよ!!!」


犬のお散歩帰りの夕方

近所の人が俺を横目に話しているのを、聞いていた。

なにか良くない話をしている気がして、俺は聞かないふりをして、犬の名前を呼んで、俯きながら帰った。喉元になにかが詰まったように苦しくて、リードを持つ手に力がなくなっている。


幼いながらも、この言葉の意味を理解した彼は、

このころをきっかけに、胸の中に大きなおもりを付けることになった。


血が繋がってないの?_______________


「ぼくは、ここの家の、子どもじゃないの?」


最初は冗談だと思った。否定をしてくれる。きっとそうだと

ねぇ、おとうさん、おかあさん、なんでこっちを見ないの?


「ぼくは、この家の子どもじゃないの?」


二回目の言葉は、詰まらずに言えた。

呆然とした母は箸で掴んでいた、から揚げを皿に落とす。その瞬間に我に返り、母は口を開け、泣きそうな顔で少年の肩をつかむ。


「そんなわけないわよ!!あなたは母さんと父さんの大切な子どもよ」

「血が繋がってるから家族だ??父さんと母さんは血は繋がってないが、家族になったんだ。良平は父さんたちの子どもで家族だ。」



母も父も、本当の親ではないけれど、たくさんの愛情を注いで、悪いことをすれば、俺に向き合って、ちゃんと叱ってくれた。その親元ですくすく育てられてきた結果、彼は自称家族大好きな品行方正の好青年に成長した。





「はぁ、今日から大学受験の講座が始まる・・・しんど・・・」

「がんばれよ、父さん息子と酒が飲みたいんだ。」

スーツ姿の父親は通り過ぎに俺のおでこを軽くこつんとグーで殴る。ちょっと痛い。


「じゃあ、二人ともいってくる」

「「いってらしゃーい」」

「良平も早く支度なさい」

「はーーーい」


俺は伊藤良平、実母と実父はいないが、母と父との3人家族だ。

成績は平均。顔は平凡、才能もない。特技もない。


まぁ品行方正、好青年とはいったが、その件に関しては、ちょっと盛りました。

遅刻してパンを加えて学校に行くこともないし、世話好きな幼馴染はいない。


きっと、これが漫画だったら俺は主人公にはなれないだろう。

いつだってモブだ。


大学に出たら大人しく生きて、親孝して、大団円ルートを目指して頑張るんだと思っていた。



「じゃあ、行ってくるね」

「あんまり遅くならないようにね」

「うん!」



その日までは






「おい!早く救急車を呼べ!!!!!!」

「え、なになに?信号無視?」

「私も巻き込まれてたところだった・・・」

「事故だってさぁ」

「トラックに…?」

「救急車よんでも、遅いでしょ」

「うわぁ…朝から嫌なもん見たわ」


スマホをこちらに向ける高校生

シャッターの音が響いている

通りすがりのサラリーマンが俺を見ていく


汚いものを横目で流しながら歩いていく人もいる


俺の事を見る人人人人人人



「あ…………………ヴゥ…」


たすけて…たすけて…


そんな言葉を出そうとしたのに、

声が出ない、薄れていく視界の中で、鈍い痛みが息を吸うたびに身体中を走っている。鉄の匂いが俺の鼻を包む。止まらない出血で、だんだんと寒くなっていく体。足は通常ではありえない向きに曲がっている気がしている。今自分がどんな状態なのか想像もしたくもないし、今は見る余裕もない。大衆の言葉から、聞き取れる言葉を繋げるほどに絶望に落とされる。


「ヴぁ………うぅ……………」


痛くて、つらくて、早く楽にしくれよって思っても、意識が途切れたら、もう目が覚めないんじゃないか?とか、そんなこと考えたら、怖くて、でも、体は言うことを聞いてくれない。


親孝行は?大団円ルートは?


俺………死ぬの?

父さん?母さん?友達は?

とんだ親不孝だ。


あと、友達に借りたゲーム、返したっけ…?

遊ぶ約束、守れるかな?



視界がぼやけて、



意識が遠のいていく。



あ、やっぱり、これ、死ぬのかな



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ