きよちゃん
きよちゃんは、もういはらへん。
一年半前に、死なはったん。
老衰で、死なはったん。
眠るように、死なはったん。
きよちゃんは、わたしのお母さんやったけど、認知症になってからは、赤ちゃんみたいやった。
初期の頃は、5分前のことまで覚えてはった。
でも、死ぬ3年前には、ほとんど話すこともなかった。ほんとに、赤ちゃんみたいにならはった。
でも、泣いたり、わめいたりはしはらへんだ。おとなしい赤ちゃん。
話しかけても、うつろな目で見てはるだけ。
嫌なことは、首をふったりして、徹底的に嫌がってはる。
ここちいいことは、じっとこっちをみて、しずかにしてはる。
いつもぼんやり、夢をみてるような感じやったんかな。
ほんまは、私の悩みとか聞いてほしかった。
でも、なんにも答えてもらえへんだん。
淋しいような、気持ちにいつもなったな。
でも、ほんまに死なはったあとは、もっともっと淋しかった。
ただ、聞いてもらうこともできひんようになったから。
今は、少し落ち着いてきた。
写真に話しかけたりしてるん。
もう、魂にならはったから、思いついたときに話しかけたらいいかと思って。
あいかわらず、なんにも答えてもらえへんけど。
いつまでも、こころの中にいはるわ、きよちゃん。
これからも、よろしくね。