一話 宿題
電車との接触事故
女子高校生死亡、自殺を図ったか
九日午後五時十五分ごろ、神奈川県の私立高校に通う女子高校生(十七)二人が地下鉄××駅にて急行電車にはねられて死亡した。自ら線路に降りる姿が目撃されており、警察は自殺を図ったとみて調べている。複数の目撃者の話では、二人で話しながらホームで電車を待っていたが、電車の入線直前、線路に降りたという。転落防止用のホームドアはなかった。現場に遺書はなく、学校でもいじめはなっかたという。警察は二人の自殺の原因を調べている。
それは、翌日の朝に配達された新聞の内容だった。その記事のために取られた面はとても少なく、世間から興味をひけるようなものでもなかった。目に止まるかもわからない、目に止まったとしてもすぐに忘れ去られてしまうだろう。そのような記事だった。
*
「ねぇ相間ちゃん。好きだよ。」
金曜日の放課後。家に帰る途中に彼女は言った。私に向かって、私の目を見るようにして。
私は彼女の目を見ない。彼女の目は誰よりも綺麗で怖いから。見惚れてしまいそうになる。吸い込まれてしまいそうになる。その目にとらわれてしまったら、私は逃げられなくなる。
だから、私は彼女の目を見ない。彼女から顔を反らす。
「知ってる。私も好きだよ、友達として。」
「ねぇ相間ちゃん。日曜日空いてる?デートしよ」
彼女がいきなりそういうことを言うので驚いた。
「嫌って言ったら?」
「玄関の前でずっと、待ってる。」
「それはやめてほしいな。でも何でいかないといけないの?」
「この前出した宿題の答え合わせをしようと思ってね。」
「……いいよ。玄関の前でずっといられても困るしね。」
彼女は「やった。」と言って嬉しそうにしている。嗚呼、彼女の笑顔はとても綺麗だ。後何度この笑顔を見られるだろうか。彼女が先にいなくなるか、私が先にいなくなるか。どちらにしろ長くは続かないことはわかっている。
彼女の秘密を知ったから。合っているかはまだ分からないが、日曜日に答え合わせだ。この秘密が合っていたら、後なんてないと思う。
「ねぇ相間ちゃん。日曜日楽しみだね。相間ちゃんの答えもとても楽しににしているよ。」
「うん。楽しみにしておいて。それとね、私も三影さんと同じように宿題を出そうと思う。答え合わせの日はまだ決めていないけどね。ヒントも出す。そっちの方が面白いでしょ。」
私は不適に彼女に向って笑う。
彼女も私につられて不敵に笑う。
「そうだね。そっちの方が面白そうだ。その宿題やるよ。ヒントは?」
「宿題は三影さんと同じ秘密を解くこと。ヒントはこの間から上映されている映画の原作。」
「わっかた。それじゃあ、日曜日にデートしようね。またね。」
「またね。」
きっと彼女は私の宿題を解くことができるだろう。
日曜日。その日は私の予想を覆すような驚きがあるような気がして、楽しみにした。でも、心のどこかでこの日が来ないでほしいと思った。