四度目の初恋
最初の初恋は保母さんだ。
家族以外の大人の女性。親しく面倒を見てくれる優しい人。
こちらが好意を寄せたから向こうも好意を返してくれただけ。仕事。
それでも今思えば依怙贔屓もあった。他の子よりも優遇されていた。
子供の世話がよく分かっていたのだろう。周りに比べ大人だった。
我が儘や悪戯など、対処に苦労しただろう。それなのに笑顔を絶やさず、優しく窘めていた。
その保母さんはもしかしたら飼い犬が一番かわいいと同じように好意を寄せたからお返しに好意を分けてくれただけなのかも知れなかった。
だがそれも卒園してしまえば、ただの憧れ、想い出の欠片。初恋ではなかったと考える。
次の初恋は同級生だ。
身近な女の子。好意を寄せられたから好きになった。最初とは逆パターン。
ちゅっちゅとキスをせがむキス魔だった。皆に揶揄われたりすると隠れてするようになる。
物陰や草むら、物置の中だったり部屋の中の密室だったり。
低学年の頃は異性でも構わず学年も関係なく遊んで、だからこそ僕たち二人が多少抜けても大丈夫だった。
しかし同性で別れて遊ぶようになると二人きりにはなかなかなれず、いつしか疎遠になってしまった。
二度目の初恋は、相手の好意に頼った、自発的でないものだった。
また行為も幼かった。だからこれは初恋と呼べないと気付く。
三度の初恋は年下の女の子。
隣に越してきたため面倒を見ることになった。それで懐かれ付いてくるようになった。
身近な女の子。前回で覚えたキスを熟す。
成長して性欲が現れて、その捌け口があった。逆らわず従順で大人しい。
だから貪った。
年齢を重ねれば言い訳も思い付く。前回は揶揄われる対象であっても今は理由として成立。
隣の子を親に言われて面倒を見る。文句は言わせない。
そうやって二人きりの時間を作った。
だが時は進み、学年が上がって学校が離れれば時間が合わなくなる。
そして性欲は同級生の方が満たしやすい。
再三の初恋もやはり偽物。肉欲のためだったと悟った。
そして四度目。
それは情報端末への連絡だった。
間違いと言われた。
連絡を取る間、楽しかった。大人だった。もう働いていて社会人だった。
奥手だったらしく男性経験はなかったが、そんなことは気にならないぐらいだ。
いろいろと連れられた。温泉だったり海水浴だったり遊園地動物園水族館に美術館。
祭りを見たり食べ歩いたり。
そんな中理解したことがあった。
財力だ。
四度目の初恋と思ったものは金の力だった……
僕「五度目の初恋を探そうかな」
作者「まだ初恋いうのかコイツは……」
僕「あれらはニセモノだから」
作者「最初でいいじゃん、初恋。充分だよ」
「僕」のモデルは実在……してる?