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魔王になっても  作者: 暴虐の納豆菌
第1部序章 入学まで
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第8話 戦犯リュミエル



「はっはっは…!ふ、ふざけんな!こんな、こんな……!?」



その男は逃げていた。世界を呪いながら逃げていた。


もう既に体力は底をついた。それでも逃げずにはいられなかった。

息切れが苦しく男の呼吸を乱す。足は動いてるのが不思議なくらいだ。



そして、その男は逃げながらこの世界に生まれ落ちた時の事を思い出していた。



ーーー話が違う、と。


心からの罵倒を天に投げながら。





初めは幸運に感謝していたらしい。



____おめでとう!君は選ばれた。

数多の戦い渦巻く戦乱の世界で、その絶対の力を振るいたまえ。

願わくば、やがて君が勇者の糧とならん事を。



最初は、訳の分からない声に困惑したが話を聞いていくと同時に期待しか生まれなくなっていた。


声の話によると、自分のやっていたゲームのキャラクターになって異世界へ連れて行ってくれると言う。

その異世界は理不尽な天災や戦いの多い世界であれど、その世界の強者の平均能力はゲームでいうレベル20。

対して彼のゲームのアバターは、トッププレイヤーには劣るものの限界であるレベル100に到達している。十分その世界で無双できるレベルだとか。


俗に言ってしまえば、彼はゲームキャラで俺Tueee、無双してハーレムとか何とか考えちゃった訳である。




プレイヤーが異世界転生して成功するのはあらゆる小説を読んで来た彼にとって常識だ。

だからこそ、彼はこの事を天啓か何かかと勘違いしていた。



だからこそ、思ったのだ。


その世界の理不尽な天災を前に、何もできなかった自分に。

所詮、自分など主役を彩る為の脇役でしかなかった事に。



ーーー話が違う、と。







「ハァ……魔神リュミエルなんて、……ハァハァ……勝てる訳、ねぇだろ……!」



魔神リュミエル。


彼がしているゲームのある意味看板キャラと言っても過言では無いキャラだ。

位置的には裏ボスで、ストーリーに全く絡まない癖に人気はゲーム内最高だった。


だが、同時にゲーム内最強でもあった。


無限ダンジョン地下1000層ボスで、耐性を貫通する広範囲即死攻撃とコストの無い無差別全体攻撃で、1ターン毎にマップ全体を死地に変える凶悪な攻撃方法と、HP驚異の九億という高耐久から無理ゲーと称され、当時最強だったギルドの精鋭42人を相手にワンサイドゲームを展開した化け物。



無限ダンジョン地下1000層というだけで選ばれた者達しか挑めないのに、未だ撃破報告を聞かずそこで無双を続けている化け物キャラ相手にレベル100といえど、特に才能厳選やドーピングも利用してないただレベルが高いだけ(・・・・・・・・・・)の自分が勝てるわけが無いのだ。



だから、当然なのだ。『傾国』討伐任務と言われて軽い気持ちで参加した戦場から逃げ出しても、しょうがないのだ。



「そうだ。俺は悪くない。あんな化け物がいるなんて聞いてない!………ヒ、ヒヒ、ゲームバランス壊れんじゃねぇの?運営早く修正しろよ!」



だから、こうして丁度よく見つけた大木の裏で体を丸めて震えていてもしょうがないのだ。彼は勇者なんかじゃないんだから。

彼はあくまでプレイヤー。人生(ゲーム)に不具合が起きた時は(運営)に頼るしかないのだから。




___だからしょうがないのだ。人生を呪い、世界を呪うしか選択肢の存在しない彼が、後ろから迫る影に気づかなくても、しょうがないのだ。



____《死を刻む》



「ヒヒ、ヒヒヒ…………は?」



そして、彼は後ろに立っていた魔神によって命を刈り取られた。身体が凍っていくかのように感覚が無くなっていく様は、まるで生前の焼き回しだった。


そこにドラマなど無く、異世界からの来訪者は、魔神の手によって呆気なくその命を散らしたのだった。



「えっ?さっきのプレイヤーだったの!?あまりにも弱いから普通に殺しちゃったよ!?」

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