第6話 相棒ができました。
予約投稿って便利よね。
適当な理由で適当な旅に出かけた俺。
当初、娯楽を探す旅な筈が、いつのまにか色んな所に行くのが楽しくなってきていた。
誰も自分を害することのない生活。食事も排泄も不要なこの身体は、旅を予想以上に簡単なものにしていた。
しかし、それでも俺は大きな問題にぶち当たっていた。
武器が無いのである。
いや、別に俺は徒手空拳でも問題なく戦えるのだが、それではおかしいのである。
なんと、実はこの世界の人間は魔物と戦う時、『魔剣』という不思議な武器を使うのだというのだ。
この『魔剣』とは、人間が能力的に劣る魔物に対抗する為に編み出した魔法の一種で、一つの簡易的な儀式魔法なんだとかで、1200年前からある由緒正しい魔法なんだとか。
方法は簡単。
武器ーー『魔剣』となる人物と、それを扱う人物の二人でペアを組み、『魔剣』となる人間の魔力を武器の形に加工した上で意図的に暴走させ、使い手に魔力制御の全てを委ねることで武器に加工した魔力で、魔力暴走による爆発的な使い手の能力向上を見込めるものだとか。
その際、万物を操るとまで言われるほど影響力のある魔力が体内で本来あり得ない武器型に変化する為、計り知れない魔力の影響力の結果、人体の構造が変化する現象が起きる。丁度、体内で魔力が形作った武器の形に。
その武器を使って人間は初めて魔物に対抗できるらしい。
要は『魔剣』に変身する人間と、『魔剣』を制御する人間がパートナーを組んで魔物を狩るという事だ。
にしても、人が武器に変身するとか、すごいファンタジーだよね。
だが勿論、この『魔剣』システムにも欠点がない訳じゃない。
魔力を意図的に暴走させる以上、どうしたって危険は伴うし、暴走した魔力を制御するには『魔剣』と相性のいい存在じゃないといけないから、並みの相手じゃ使い手になれない。
いわば相性のいい二人がいる前提で初めて成立する儀式魔法な訳で、当然使える人はそんなにいない。
そんな少ない戦力で、人間は魔物に対抗している。
それはつまり、『魔剣』を持って初めて人間は魔物に対抗できる、という訳で、戦う職業の人は殆どの人が『魔剣』を連れている。
これを知った時俺の脳内は荒れに荒れた。
だって、そうなると俺が独り身で旅ができる事がおかしい事になる。
何せ冒険者は無理でも、傭兵として人間共に紛れて依頼とかで金を稼ぎながら合法的に人間を狩ろうとしていたのだ。
だが、当然戦闘を行う傭兵は『魔剣』を持たないなんてありえない。
持たない者もいるだろうが、少数派だ。
それはマズイ。あくまでも俺は人に紛れながら人を狩らないといけないのだ。
何故って?
騒乱の毎日とかになったら自堕落な生活ができないじゃん。最近はお菓子漁りで商店街を回る事が多いね。こんな平和が続くなら魔王とかどうでもいい。
冒険者にならなかったのも、冒険者は三ヶ月以上活動が無かったら死亡扱いされるという事実があるからだ。つまり、三ヶ月以上仕事しないという選択肢が無い。
その点、傭兵なら気ままな風来坊。どこで誰が死んでも気にされないので、気ままにゴロゴロできる。
だが、それも魔剣を持たないなら話は別だ。少数派である以上注目はされるだろうし、そもそも、なまじ魔剣なんかなくても魔物に勝てる分、戦闘を見られたら一躍時の人となるだろう。正直御免被る。
そんな訳で、私の魔剣になってくれる奇特な人を探して商店街を歩いていると、いい感じに人間が騒いでる場所が。
そこを見ると、まるで、奇跡でも起きたかと思うくらい私の魔力と親和性の高い上にエグい程ドス黒いまるで悪魔そのもののような魔力を纏った女の子が!
これは、もはや運命なのでは?と言うわけでササッと人間共には(人生から)退場いただいて女の子と契約を交わした訳ですよ。
まぁ、契約の時にテンション上がって恥ずかしい事口走ってた記憶もあるけど、気にしない。
途中、女の子が【勇者の末裔】と知って、その浮浪児の様なナリから、勇者まさかの没落か!?とか思って「俺(魔王)の存在意義は!?」とか口走った記憶もあるけど、気にしない。
そんな訳で、俺に相棒ができました。まる。