第4話 新たな旅立ち
その日、俺はこれまで以上に絶望のオーラを漂わせてベッドに突っ伏していた。
『いや〜、見事な失望絶望の顔達でしたね〜。やっぱイメージって大切ですね!』
「ほんとだよ。召喚されたその日に送還された魔王って俺だけじゃないか?」
威厳ある登場がしたいって言ったのに。
こんな事になるなら、どうせ人なんかいないだろとか思って瓦礫から発掘したパーティグッズなんて着けなければよかった。
『それを私のせいにするのは違うのですよ。召喚されてからも何もせずグータラ過ごしていた貴女のせいなのです』
そーだけどさー、それもあるけどさー。
俺は廃屋の中でポティトゥを頬張りながら、今まで読んでいた本を閉じる。
さて、次の本は………………はっ!?
「娯楽が……ないっ!?」
『あぁ、とうとう………。良かったじゃないですか。本当の意味で〝何もしない〟グータラな日々を送れますよ?』
ふざけるな!娯楽の無く何もしない日々なんて唯の地獄だろ!!こっちは娯楽に溢れた都市日本在住なんですー!!
どうする!?どうすれば、この状況を打破できる?何もしたくないけど、何も無いのは嫌なんだって言ったじゃないですかー!
………今現在、俺はこの世に生を受けて始めて全力で頭を回している。
気がつけばポティトゥも無くなっている。娯楽の匂いを全力で探すが、どこにも反応は無い。ついでに食料も尽きた。
___まさに 絶 対 絶 命 ! !
こんな時俺はどんな顔をすればいいんだろう……。
笑う?フザケンナよ、他人の不幸が美味しいのかよ。
………冒険者になるか?
いや、ダメだ。冒険者なんてスリルに溢れた日々は俺には似合わない。
暇つぶしがしたいだけだからなぁ……。
よし!
「娯楽を探す旅にでよう」
『血迷ってんですか?』
だって無いんだもん!暇つぶしが!
『だからって仮にもこの世界のラスボスの行動理由が暇つぶしに必要なものを探しに行くって………格好つかないですよ』
………格好?え、ゲンキちゃんまだそんなの気にしてたの?俺は魔王召喚されたあの時からプライドすら捨ててるというのに。
『それ捨てちゃダメなヤツです』
知りませんわ。おーほっほっほ!
俺はゲンキちゃんの言を無視して準備する。
ケータイに、トラバサミに、市松人形に、10円玉に、コックリさんに、煙草に、ケータイに、と。ついでに狗と狐と狸の人形も旅に連れてってやろう。
さて、……行こうか!
『ケータイ以外いらないですから。コックリさんしたいのはわかりましたけど』
あっ、わかっちゃう?行動で今したい事が分かるなんてゲンキちゃんも俺のことわかってきたじゃないか。
よくわかったな。絆だな。
『いえ、トラバサミと煙草とケータイが二個ある事に関しては未だに何なのか全く分からないんですが……』
それは俺もわからんから、安心しろ。
『じゃあ何で持って行ったんですか……』
荷物を入れたリュックサックを背負い、申し訳程度の武器として木の棒を片手に、廃屋から出る。
久しぶりの日光はかなり眩しいな。最近ニート一直線だったからなぁ……。
心機一転、暇つぶしを求めて流離う『魔神ちゃん』のお通りだー!日光よ、退けー!!
なんて、やっても日光には意味ないんだが。
『あ、そこ村があります』
マジかよ、虐殺してこうぜ。