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魔王になっても  作者: 暴虐の納豆菌
第1部1章 《最強のヒト》
33/37

第29話 《司書》〝第ニ席〟アザミ

明けましておめでとう!



それ(・・)は、圧倒的な存在感でそこに立っていた。



「貴女は……」


「まさか……!」



その存在感に、姿が見えない筈のゲンキちゃんですら身構え、魔剣形態であるヒムちゃんすら震えている。


____それ(・・)は、少女のカタチをしていた。

紅いコートを羽織った隻腕の少女。


本当に人間なのか疑問に思う……いや、人間ではあり得ない。見るだけで、私たちとは文字通り次元が違う『別物(・・)』なのだと、本能が教えてくれる。



「失礼、名乗り遅れました。私はアザミ。姓はありません。____一応、英雄学園特務竜撃部隊『スリープゴート』の《幻想司書》〝第ニ席〟を拝命しています」



何度か聞いては、ボカされてきた《司書》。


それを名乗った、アザミという少女は、コートを翻しこちらに近づいてくる。



「その名高い《司書》様が、僕たちの決闘に介入するのかい……?」



魔剣を人型に戻して戦闘態勢を解除しながらも、疑問は尽きないのか、セイランが尋ねる。



「当然です。何が鍵になるかわからないのだから、こちらとしても慎重にならざるおえないというもの。徒らに部下を死地に追いやるのは、愚将のする事です」


「先程の決闘に『スリープゴート』が介入するべき事態になり得る何かがあったとは思えません。……それに死地、と?………貴女の言っている事はイマイチ理解ができかねます」



疑問の答えは、イマイチ容量を得ないものだった。それにセイランは噛み付くが……



「貴方が理解できてなくとも、こちらには説明義務は無いのです。さっきの言葉で充分でしょう。………ほら、そこの方も、早く魔剣を解除して下さい」


「えっ?………えっと……え?」



アザミという少女が持つ存在感に呑まれて今まで黙っていたが、いきなり話しかけられてビックリする。しかし、魔剣を解除しろとは………つまりこの人は私たちの決闘に水を差しに来たのか?


困惑していると、アザミさん?は「はぁ……」と溜息を吐き、こちらを正面から見て言葉を紡いだ。



「言わなければ分かりませんか?____ここは貴女の(・・・・・・)始まりの地ではない(・・・・・・・・・)と言っているんです」


「………っ!!」



この人……っ!


確かに私は決闘の最中、『始まり』を予感した。でも、彼女が言うには、それは誤りだと言うのだろうか?どちらにしろ、思考ですらない、直感に近いナニカを読まれたのだ。それは、ただ思考を読むより難しい。………というか、ほぼ不可能に近い事なんだろう。だが、この少女の前では不可能程度では(・・・・・・・)意味がないのだろう(・・・・・・・・・)


___何故ならば、彼女は文字通り『別物』だから。


人の常識や理の『外』にいる存在だからだ。



『ここは、言う通りにしましょう。ヒムちゃん、元に戻って下さい』


『は、はい……っ』



ゲンキちゃんが半ば放心状態のヒムちゃんに呼びかけて魔剣形態を解除させる。人の姿に戻ったヒムちゃんは、目の前の少女の威圧感に立てないのか、尻餅をつく。


魔剣(あいぼう)は手元に無い。これで私も、戦闘は不可能だ。

というか、そろそろ限界が近い。右腕の痛みで頭がおかしくなりそうだ。



「二人とも、武装解除を確認。なーんか、変なヤツ(・・・・)の介入も有ったみたいですけど………まぁ、いいでしょう」



!?!?……この人、見えない筈のゲンキちゃんに気づいてる……?!


私は目の前の存在の規格外さに改めて戦慄する。

これが《司書》か……!



「では、私はこれで。えーっと……名前なんて言いましたっけ?……まぁいいや。二人とも、もう喧嘩なんてしないでくださいよー」



そう言い残して、去っていくアザミさん。

しかし、その言葉にセイランは我慢できなかったらしくーーー



「待って下さい!これは喧嘩などではなく、二人の意思を持って雌雄を決する、正真正銘の〝決闘〟なのです!!」



そう言った途端。














____場の空気が絶望で支配された。





「「「「っっっ!?!?!?」」」」



私たちは一様に金縛りにあったかのように動けなくなった。

何があったという驚き。何かしてしまったのではという恐怖。何が逆鱗に触れたのかという疑問。


呼吸すら躊躇する程の気当たりに呑まれて、今までの底冷えするような存在感すらも彼女にとっては児戯だったのだと、私は自分の愚かさと目の前の少女の規格外さを自覚する。



「君たちが学生じゃなかったらキレてたよ……。あんなオママゴト(・・・・・)で闘争を語るなんて………ま、痛い目に遭いたくなかったら、今度から気をつけるんだね」



そう言いながら、去っていく背を見送るしか、できなくて。



「____っっっはあぁぁぁぁぁぁ……!」



そうして、彼女の背中が見えなくなってから、やっと私たちは呼吸を思い出したかの如く大きく深呼吸した。


未だに、あの恐怖は忘れられない。《司書》という存在の恐怖を、心臓まで刻み付けられた気分だ。

早鐘を打つ心臓を落ち着かせるのに、時間がかかる。


腕の痛みすら忘れるほどに、私は彼女の気に呑まれていた。



「僕の全身全霊の戦いが………オママゴト……?」



そんな中、セイランだけは何かに打ちのめされたようにフラフラと立ち上がり、そして会場を後にしていく。



「ちょ、ちょっと待てよ、セイラン!」



その姿に尋常じゃない雰囲気を感じた私は、急いで呼び止めるが



「ちょっと一人にさせてくれ……」


「え……?」



その力のない姿に戸惑い、言葉を止めてしまう。その間にセイランは会場から出て行った。


私は、その姿を見ているしかできなかった。



「あいつ、あんなに自信に溢れてたのに………」


『………まぁ、貴女はそれよりも早く傷をアリスさんに診てもらった方がいいですよ?』


「っそうだったぁ……!くそう……、痛てぇぇぇぇ……っ!」


「お、お姉様!大丈夫ですか!?」



自信に溢れている人が打ちのめされているのを見ると、他の人より心配になるなぁ……、と考えてると、ゲンキちゃんの声で自分の状態を思い出し、色々あって仕事を放棄していた痛覚がいきなり仕事をしだした。

いきなり悶えだした私にヒムちゃんが肩を貸してくれて、痛みに気が遠くなりながらも丁度決闘を見ていたらしく、近くに居たアリスさん腕を治して貰ったのだった。


………そういや《暗黒剣》使う時はアリスさんの立会いが必要なんだっけ。通りでゲンキちゃんが何も言わない訳だ。近くにアリスさん居たのか。

最近の子が天然パーマ知らないって本当(マジ)ですか………?

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