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魔王になっても  作者: 暴虐の納豆菌
第1部1章 《最強のヒト》
32/37

第28話 魔神ちゃんVS公爵家最高の剣(3)

なんだこの駄文……。



両腕が使えない俺と、無傷のセイラン。


どちらが有利かは明白だ。


だが、ここで負けてしまえば俺は最初に抱いた思いすらも守れない愚者になってしまう。



「エミル!」



セイランが、最早言葉は不要とばかりに突撃してくる。


___同じだ。



さっきも、この突撃態勢から必殺の一撃を回避された。一見、回避しづらい態勢に見える。でも、そこから回避できるだけの何かを彼は持っているのだろう。


ならば、こちらから仕掛けるしかない。



「《暗黒剣ソード・サクリファイス》0.2%!!」



脚力を微妙に強化して、こちらも突撃する。この程度の出力ならダメージは無い。

そして、互いが目の前に迫った時、セイランは剣を振り下ろしてくる。



(同じだ!ここまでは同じ。だが、ここから彼がどうやって回避したのかが、わからないーー!)



攻撃方法は隙の多い大振り。だが、彼はそこからでもこちらの攻撃を回避できるのだから、隙が多いと侮る理由は無い。



「せあ!!」



___ガキィン!


振り下ろしをヒムちゃんで防ぐ。セイランの二本の剣がこちらを討ち取らんと迫る。剣を剣で受け止めた時、こちらの腕は悲鳴を上げるが、構ってられない。

そのまま、二合、三合と剣を打ち合い、腕の痛みに脳を侵されながらも決定打は与えられない。



「らぁ!!!」



ヒムちゃんで鍔迫り合ってる間にセイランの体を蹴ろうとするが、彼は当然のように半身をずらすだけで躱さした。



「だあ!!ハッ!!」



だが、鍔迫り合いは崩れた。そのまま、蹴り上げ、回し蹴りの曲芸的なコンボでセイランの体を捉えようとする。奴はバックステップで避けた。距離が開いて余裕が出た為か、彼は口を開く。



「まったく、往生際が悪いなっ!その両腕でまだ戦おうとするとは!」


「ハッ、そう言いながら期待してんだろ、お前!さっきから誘ってんのバレバレなんだよ!!」



言いながら、剣で腹を斬りはらう。それも紙一重で回避される。さっきから、というか最初からだが、まともに攻撃が当たってない。


だが、今の状況は好かない。彼、セイランはこちらが何を使ってくるのか楽しみにしている節がある。

多分、ちょっとした絶望の淵から帰ってきたとも言える俺が何か打開策を持っていると思っているのだろう。そして、それが楽しみで仕方がない。


彼は相手の手札を想像して楽しむタイプなのか、私がどんな打開策を見せるのか待っている。


それは、だめだ。こっちは全力でやっているんだからあちらも全力でやってくれないと意味がない。

だが、これはセイランの全力を引き出せない私が悪いので何も言えない。



だからこそ、彼の全力をこじ開ける(・・・・・)___!!



「【アビスファイア】!」



「魔法かーー!!」



腕を振り下ろすと、そこから黒炎が走る。一直線に放射された黒炎は会場の温度を上げながら、セイランに迫るが、これをセイランは突然こちらに急接近し、魔法の射程外ーーー俺の横に回ることで回避し、その勢いのまま俺の無防備な横腹を蹴り上げた。



「ガッーー!!」



体が接触した瞬間を狙って掴もうとしたが失敗し、そのまま吹き飛ばされる。なんとか地面に足をつけ、失速しようとするが、セイランは俺が足を地面に向けた瞬間、こちらに向かって走り出した。

着地狩りを狙った剣が俺に向かって迫る。



「クソがーーっ【アビス___ぶっ!!」


「させると思うかね?」



魔法を唱えようとすると、顎に剣の柄で殴打をくらい、詠唱がキャンセルされ、そのままもう片方の剣が俺の体を穿とうと閃く。


__近すぎる!このままじゃ!



『お姉様!!』


「くっそがぁああ!!!」


「ーーーっ!!」



ボロボロの右腕を地面に振り下ろし、《暗黒剣》を発動。リミッターなど考える暇は無い。全力で地面を叩いた。


これにより会場全体に衝撃波が伝わり、山を崩した一撃が狭い闘技場で炸裂する。撃ってから気づいた。これでは殺してしまってもおかしくない。それはまずい。



「あぁぁアああアアあアーーッッ!!!!」



二の腕から消滅した右腕の痛みに叫びが漏れる。

意識が遠のきながらも、冷静な思考でセイランの方を見る。



『お姉様……う、腕が……!』



最早闘技場はまともな形をしていない。圧倒的な破壊に観客が恐慌状態になり、近場の教師がやってきて即刻中止させようとしているのを横目で見た



「今のは驚いたな……」



しかし、セイランは無傷(・・)で多少足場の悪くなった闘技場に立っていた。



「最初の攻撃が効かなかった時から、もしかしてと思ってたが………」



出血する腕を抑えながら、無傷のセイランを睨む。そこに、ある確信を抱いて。

初撃を躱された時からずっと思っていた疑問。


奴はどうやって、あの《暗黒剣》を躱したのか。


自慢じゃないが、《暗黒剣》の物理的威力は全スキルの中でもトップだ。それこそ、まともにレベルを上げてない俺が戦略級兵器の如く戦える程に。


それは当然のように範囲も広い。突撃態勢で剣を振りかぶる隙の多い態勢で避ける事など、常識的にあり得ないのだ。

同じSクラスにいるシアさんなんかは常識なんてかなぐり捨てた動きをするが、Bクラスのセイランがそんな動きができるはずがない。


ならば、そこには何か種があるはずなのだ。



最初から、(・・・・・)躱してなかった(・・・・・・・)のか………!」



それがこれだ。

おそらく、セイランは物理無効、又は衝撃無効、それに準ずるスキルを持っている。

それならば、躱しきれない攻撃など躱す必要がない。

躱す必要がないなら恐れる必要も無いから存分に大振りの一撃が出せる。

どんな高威力広範囲の一撃だろうと、それが物理攻撃ならば、意味はないのだ。



「御察しの通り。僕の生まれ持ったスキルは【中級物理攻撃無効】。F〜Aランク相当の物理攻撃を無効化するスキルだ。例え、君の切り札がSランク相当の鬼札だとしても、未熟者が扱う剣に敗れる程のものではない」



成る程、最高の剣、などと言われるのも納得がいく。相手の攻撃を無視して一方的に攻撃できるなら、剣士相手のみならず近接戦で敵はほぼいない。

魔術師相手にも彼の疾さならば魔法を使う前に斬り捨てる事もできるだろう。


それに比べて、俺の手札は未熟な魔法に無効化される切り札。


勝ち目はーーー絶望的だ。













___でも、飽きらめられる訳がないだろう!!




「それでも、俺は勝つ。………勝たないといけないんだ」


「……ほう?何が君をそこまでするのかはわからないがーーーーいいだろう。全て受け止めてくれる」



ここから先は、何も考えない。


___ただ、今以上に本気で、今以上の全力を絞り出すだけだーーー!!!



「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!」



駆ける。駆ける。駆ける。


無事な左腕を黒炎で燃やしながら突撃する。

決死の覚悟。

少しでもダメージを与えるために【アビスファイア】で腕を燃やして、目の前の敵に向かって駆ける。



「はあああああああああああ!!!」



まるで、俺の気持ちに応えるかのようにセイランも双剣を構えて駆ける。

ボロボロの魔王と無傷の剣士。

勝敗は明白。でも、諦めない。諦めたくない。



「こっからだ!!俺はここから___」



___始まるんだ。



その言葉が最後まで放たれる前に
















それは現れた。




「___双方、剣を収めなさい」


手加減した《暗黒剣》がCランク相当で、全力で放った《暗黒剣》がAランク相当の威力……と考えてます。スキルのスペックが最強でも、素の筋力が低いとこんなもんよ。

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