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魔王になっても  作者: 暴虐の納豆菌
第1部1章 《最強のヒト》
31/37

第28話 魔神ちゃんVS公爵家最高の剣(2)

相変わらず戦闘描写苦手。まぁ、今回は戦闘描写ないんでけど。



『な……なんとぉ!!立っている!?あの攻撃を受けて、セイラン・レーヴァインが立っている!!……いや、躱したのか!?いつ!?マジでかー!!』


「「「お、ぉぉおおおお!!!」」」

「さすが俺たちの期待の星ーー!」


司会の驚きと観客の人たちのセイランを讃える声が聞こえる。



(これからどうする……!?勝てるか?……無理だ(・・・)!初撃が決まらなかった時点で詰んでいる!)



そんな中、私は必死に状況を打開する策を考えていた。だが、どんなに考えても打開策は浮かばない。

当然だ。前世では考えることすらしなかった身である。どんなに相棒の為と取り繕った事で、その怠惰に塗れた脳は今更仕事をしてくれることはない。



『………………』



そんな私をゲンキちゃんは静かに見守っていた。まるで、私を見定めているかの如く。傍観に徹して。



「その両腕ではもう戦えまい。次へと繋がる剣を持たなかった自分自身を恨むんだな」


「……くっ」



私が後悔している間にセイランは徐々に距離を詰めていく。歩きながら、ゆっくりと。

最早見るものは無いと、この戦いに終止符を打つために。

それもそうだ。私は初撃で全てを使い果たした。血湧き肉躍る戦いを求めていた彼にとってはまさしく拍子抜け、というものだろう。



「おおおお!!!」

「やっちまえー!!」

「Sクラスの面汚しに制裁をーー!!!」



そんな中、観衆は口々にセイランを応援し、私の敗北を後押しする。精神的にも、私に味方はいなかった。


どうする!?どうすればいい!?なにか手は無いのか!?


どうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうするどうする___!!!



『お姉様、棄権しましょう』


「___は?」



そんな時、剣の姿のまま、ヒムちゃんは私には到底受け入れられない言葉を口にした。



「それって__!?」


『だってそれしか無いじゃ無いのです!

最初の攻撃を外した時点でもう、決着は着いたのですよ』


「___っ」



私はその言葉に反論ができなかった。

なぜならば正しいからだ。

確かに初撃で決着はついた。この上なく、惨めに私は敗北した。なのに、まだ勝利に縋りつこうとするのは、どうなんだろうか?


もともと考えるのは苦手なのもあって、私の意識は徐々に敗北を受け入れ始める。


たった数秒で着いた決着。この上なく惨めな、『自滅』という敗北。この上恥を上塗りする意味など___



『それに、私はお姉様がそこまで勝利に(・・・・・・・)固執する理由が(・・・・・・・)わかりません(・・・・・・)。別にお姉様がSクラスの落ちこぼれと呼ばれようと、お姉様がSクラスである事を覆す存在は居ませんし……』



そして、その言葉にはっとする。

別にこの勝利の無意味性に気付いたとかでは無い。


ただ、相棒に言えてなかった事を自覚しただけの事。


確かに、私がSクラスである事は既に決定した事だ。それを一学生の決闘で覆す事はできない。



___でも、そんな事関係ないのだ。



だって、私は___自分のパートナーであるヒムちゃんに釣り合う為にこの決闘を受けたのだから。



ならば、元より考える必要なんか無い。ただ、自分の全てを(・・・・・・)ぶつけるだけだ(・・・・・・・)

___そこに小細工なんて必要ない。



『お姉様!?』



地面に落ちたヒムちゃんを拾い、また黒い焔を纏わせる。

私が見せた明確な戦闘続行の意思。

それにヒムちゃんは驚きの声を上げる。



「忘れてた訳じゃないんだけどなぁ……。ちょっと道を間違えそうになってたみたいだ」


「ほう……?」



私が突然、剣を構えた事にセイランは少し驚きながら目を細める。



「その目………ようやくまともに戦う気が起きたと見える。逆転の策でも思いついたか?」


「策…….策ねぇ……」



セイランのその言葉にちょっと笑ってしまう。確かに私はさっきまでその『逆転の策』とやらを手繰り寄せようとしていた。

でも、それは策士の領分だ。長年思考停止してきた自分には似合わない。___そんな事に気付くまでどれだけ掛かったのか、私は。



「策なんかない」


「何……?」



そもそも私のこの決闘での目的はなんだったか。


Sクラスに相応しい所を証明する為?


それもある。でも、私は根源的に一つの事をこの決闘に求めていた筈だ。

そのために先生に相談だってしたというのに。



___大丈夫なのです?



ヒムちゃんから告げられた心配の言葉、そこから端を発した私の悩み。


『相棒に相応しい存在になりたい』


頭には入ってはいたのにさっきヒムちゃんに棄権を勧められるまで、自覚が足りなかった。


そうだ。私は心配される存在から対等な相棒になる事を望んだのだ。これは、ヒムちゃんには言ってない事。ヒムちゃんがわからないのも無理はない。


でも、私がヒムちゃんの相棒であるためにはこの決闘は必要な事だった。


まともに相手をしない、というなけなしの頭を振り絞った策は通用しなかった。そもそも私が考えて策を練り出す時点で失策だった。

勝率はかなり低い。絶無と言っていい。でも___



「ここからは、策なんてねぇ!__()の全てを賭けて、相棒に精一杯見栄を張るだけの、簡単で単純な戦いだ___!!」


そうだ、信頼を得るのに策士を気取る必要などどこにも無い。私は私の全身全霊を曝け出せばそれでいい。



「いいだろう!その気迫、その情熱!我が剣の錆とするに相応しい!!」


「言ってろ、棒振り野郎!!」


「来るがいい、お前の全身全霊を全て!受け止めて見せようではないかっ!!」


「言われなくても__っ!!俺には、それしかできないんだからな____!!!」



そして、ボロボロの魔王と無傷の剣士は再び激突した。

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