第28話 魔神ちゃんVS公爵家最高の剣(1)
遅れてすみませんでした。(恒例行事)
戦闘描写が難しい……。
ついでに報告すると、更新する時間を15時から0時に変更します。
「来い……エミル!」
「はい!」
相手のセイランとかいうヤツーーアロン王国公爵家最高の剣術家とか聞き捨てならない事が明らかになったがーーの隣に侍るメイドさんらしき人物が光を纏い、その身を双剣に変える。セイランはその剣を掴むと、地面から勢いよく引き抜いた。
「ヒムちゃん、行くよ……!」
「了解です。最高のサポートを目指します」
それに合わせて、こちらも魔剣を展開する。ヒムちゃんの体が茨の装飾が施された刀身までまっ黒い剣になる。
私がその剣を手の中に収めると___戦闘の準備は整った。
「さて、最早言葉など交わさなくとも、十分だろう。___行かせてもらう!!」
そう言ってセイランは突っ込んでくる。私はヒムちゃんを正眼に構えて、タイミングをうかがうように、じっと正面から相手を見据えていた。
___さて、皆さんお忘れだろうが、本来私は『何もせず、何も考えない』という座右の銘を自称するぐーたらである。
そんな私が決闘という面倒極まりない事を、衆人環視の中というこれまた面倒極まりない状況で受けたのは、Sクラスに相応しい所を見せつけるとか、相棒であるヒムちゃんに心配されないように、とかの理由があったりする訳だが。
実は決め手になった理由は割と単純な事だったりする。
___一つは、彼ーーセイランが前世の友と重なったように見えた事。
「まずは、小手調べだ!受けてみろ!!」
___もう一つは、そもそもまともに戦う気がないからだ。
威勢良く、剣を振りかぶるセイラン。私は目を逸らさず、じっと見続けて、待つ。
範囲内まで、あと__3、2、1
__ゼロ!
カウントが終わった途端、私は地面に向かって剣を振りかぶる。
「インパクトぉおおおおお!!!」
「ーーっ!?」
闘技場の地面に叩きつけられた剣は焔を纏い、地面に向かって走る。
瞬間、世界を爆音が支配した。
私の剣は地面との衝突と同時に莫大な破壊を齎した。
一眼でその破壊力を認めたのか、セイランが後退したようだが間に合わず、私の剣は大地を放射状に砕き、射線上に居たセイランを巻き込んで、その向こうの壁まで壊しながら暴風の衝撃波とともに闘技場を壊し尽くした。
その様はまさしく指向性を持った小型の台風だ。
その局所的暴風によって、会場は砂埃に覆われ、正しく会場を見ることができない。
確実に殺す事のできる一撃だ。威力を多少弱めたがそれでも勝ちを確信できる威力だ。
「ーーーっっっ!!」
だが、その代償も軽くはない。私の両腕は剣を持った指が千切れかけ、二の腕まで腫れ上がっている。当然、血塗れだ。
思わず、ヒムちゃんを手放してしまう。カラン…、と寂しい金属音が闘技場に響いた。
「う、嘘だろ……」
「一撃で、あんな……」
「バカな、ありえない……」
そんな声が観客席から聞こえてくる。事ここに至って彼らは己の認識が間違っている事を理解したのだろう。
いくら代償ありきとはいえ、ここまでの破壊を齎せる存在が人間な訳が無い。
つまりは、彼女も正しく『Sクラス』の仲間なのだと。
もはや皆、私の勝利を疑っていない。あれ程の破壊を齎した私に畏怖さえ抱いている。
無理もない。私は勝つために初手で最高威力の攻撃を繰り出した。そこには戦いの楽しみもなく、そもそも無情な事に戦闘にすらなっていない。
初手から試合の意義そのものをひっくり返す拒絶の剣を私は放ったのだ。
しかし、私の心の中は今、後悔でいっぱいだった。
なぜなら___
(っ……この手応えの無さ……!外した……!?嘘だろ、躱せない様にタイミングを図ったってのに……!)
___そう、まともに戦えば確実に負ける。ならば、一撃に全てを賭けて戦闘になる前に倒せばいい。
そう思い、仕掛けた初手の最高攻撃。私の体が許容できる範囲の《暗黒剣》の出力限界の一撃を、限界の範囲で、躱せないと確信できる距離で放った。
ここで外せば勝ちは無い。だからこそ初手に全てを賭けた。___それを外した。
モクモクと立ち昇る砂埃が晴れた時___
「___確かに高威力だ。代償が酷いようだが、それを補って余りある破壊力。なるほど、これが切り札か。ーーー些か拍子抜けだな」
___そこには公爵家最高の剣が立っていた。
セイランくんのレベルは14位です。総合力で勝ってても勝てないのは防御特化あるあるなのです。