第24話 貴族の義務
Sクラスの人たちとの交流はもっと先になりそう。
「ーーー君かい?山一つ消しとばした代わりにボロ雑巾になったとかいう『落第生』のリュミエルとかいうのは?」
「ん?」
それは、ヒムちゃんと一緒に教室まで歩いている時に来た。恐らく、私の噂を聞いてやって来たのだろう、妙に豪奢な改造制服を着た男。
………いったい何しに来たのか。そもそもーーー
「誰?」
「……っ!!そ、そうか、君は平民だったね。……凡俗に理解されるとも思わないが一応名乗っておこう。レーヴァイン公爵家の長男であるBクラスのセイラン・レーヴァインだ。覚えておきたまえ」
「はぁ……」
これは、あれか?貴族ってやつか?また面倒な事に……。
「で、その公爵様は何の用で?」
「敬意が足りないな。所詮凡俗か。………何の用か、だと?当然、決まっている。俺はお前のような存在が、栄誉あるSクラスに入れたのが我慢ならん!………そういう、人間たちの総代として君に決闘を申し込みに来た」
……ほら〜、やっぱめんどくさかったじゃ〜ん。
確かにSクラスについていけてないのは事実だが、どちらかというと〝入れた〟のではなく〝入らされた〟が正しい。そもそも厳正な審査のもと行われる試験に学院長も関わっている以上、この学園が性根から腐ってない限り賄賂などの横行もありえないため、完全なる実力でクラスは決まる。そこに生徒の意思は関係ない。あるのは先生の評価だけだ。
加えて、この男はこの決闘の申し込みが自分の意思で行うものではない事を最後に明確にした。他人の代表として、それも不特定多数の総代となれば、それなりの責任もあるだろうが、自分の意思でない以上決闘を申し込む程の理由になり得るのか疑問だ。
「因みに私の事はどんな風に聞いてるの?」
「曰く、概念武装を使って試験に不正した。
曰く、即死の魔眼なんてありえない上に確認の取れないものを試験判定にでっちあげた事でSクラス入りをした卑怯な奴、とも。………まぁ、これは根も葉も無い噂だろうけどね、概念武装なんて高級品、平民が持てる筈もない。……証拠が無い以上言うこともないが」
ごめんなさい。一応国滅ぼしてるんで、その軍資金がたんまりとあります。なんて言えないが。
「……ふ〜ん」
(即死の魔眼に関しての言い分はわかるんだけど……、概念武装って何、ゲンキちゃん?)
『特定の概念を紐付ける事で凡ゆる災厄から装備者を守る武装。
……簡単に言えば、装備者を特定の条件でしかダメージを受けなくする状態に書き換える防具の事ですね。
そう言う意味では貴女が概念武装をしているというのは全くの嘘でもないです。
まぁ、貴女の場合は世界の理そのものからの概念付与ですので他の概念武装とは規模が違うんですが……』
規模の話はともかく、私がちょっとしたズルをして入学したのは間違いないから耳が痛い。
こいつは、私を打ち負かしたという事実をもって、そういう反発を抑えるつもりなのだろうか?それとも、こいつも同じ私が気に入らないという人?
ちょっとわからないな。唯のお馬鹿貴族の言いがかりであれば、ぶち負かして終わりだったし、ついでに《暗黒剣》の試し打ちができたというのに。こうも理詰で来られると対応に気をつけなければいけない。
なにより、確認したい事がある。
「お姉様……?」
「最後に聞くけど、それは自分の意思?」
『何言って……さっきから不特定多数の総代とか言ってるじゃないでーーー』
「勿論、自分の意思だ」
『えっ!?』
あ〜、なるほど。こいつの事はよくわかった。
ゲンキちゃんが驚いてるが、別におかしくはない。たまにいるのだ、こういうやつ。前世の友人にもいたな……こいつは多分ーーー
「多くの民が不心得者を討てと訴えるのだ。それに応えるのは貴族の義務だろう。それが例え真かどうかも分からぬ噂だろうとも。だから改めて宣言しよう」
ーーー底なしの奉仕体質なのだろう。
「我が全力を持って汝に決闘を申し込む!!」
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