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魔王になっても  作者: 暴虐の納豆菌
第1部1章 《最強のヒト》
25/37

第23話 心配かけちゃいました。



きっかけは、なんてことない事だ。それこそ、人によっては「それだけ?」って言われるような事。


でも、私にとっては重要な事だった。


理由は簡単だ。



____大丈夫なのです?



そう、ヒムちゃんに言われただけ。


Sクラスについていけない私を見て相棒を心配させてしまった事に、私が耐えきれなかった。

Sクラスの人達は皆、化け物みたいな力を持っている。そんな中にただ体力が他人より多いだけで入った私が食らいつける筈もなく。

それでも、座右の銘が思いっきり怠惰を推奨してるのもあって私が頑張る事は無かった。


私の座右の銘〝何も考えず、何もしない〟はこの世界に来てからあまり活躍してない。


最初の一年はぐーたらしてた気がするけど、ヒムちゃんに会ってからは私なりに行動していた気もする。

でも、それはSクラスなんていう化け物集団に追従できる程の努力じゃなかった。


それを破ったのは


私を動かしたのは


ーーーーやはり、彼女の言葉(ココロ)なのだろう。










◆◇◆◇






「………ここは」


『起きましたか。まったく、山と一緒に自分の腕吹き飛ばすなんてどんな秘密の修行してたんですかね?』



起きたら知らない部屋だった。ゲンキちゃんからの辛口が飛ぶ。

私は確か、ヒムちゃんにもゲンキちゃんにも秘密で学園領内の小山に行き、《暗黒剣》の試し打ちをしていたのだが。そういえば、初っ端から最大威力を試してから、記憶が無い。


ここは、………保健室か。


隠れて修行を見ていたかもしれないゲンキちゃんはいても不思議じゃないが、ゲンキちゃんには私を運ぶ程物質への干渉力を持っている訳じゃない。誰かが私をここに運んで来た筈だ。



「………何があったの?」


『大騒ぎ。近隣の山がいきなり吹き飛んだから現場に行ってみると、そこには片腕が消滅した自分の相棒がありまして。ヒムちゃんと一緒に半狂乱になりながら治療できる人を探しましたよ』


「ヒムちゃんと一緒に………また、心配かけたかな?」


『当たり前の事を聞くのはバカだけでいいです!……あっ、そういえばバカでしたね!そうでしたね!!』



ゲンキちゃんの語気が荒い。これは随分怒ってるな。後で謝ろう。



「治療は誰が……?」


『通りすがりのアリスさんが。ほかの医師の人が匙を投げた〝消滅箇所の復元〟なんて馬鹿みたいな治療魔術を本物の馬鹿に施す聖人なんてあの人くらいですよ!後でお礼言うんですよ!』


「アリスさんか……。あの人神出鬼没なんだよなぁ……」



少なくとも、ここ二週間で学園中回ったのに会ったのは二回だけという事はマトモな所に居ないんだろう。


そう考えて憂鬱げに溜息を吐くと、ガラリと、保健室のドアが開いた音がした。



「お姉様!」


「あう……!」



そこに居たのはヒムちゃんだ。多分保健室の前を通った時にゲンキちゃんの声が聞こえたのだろう。こちらの意識が回復している事に気づいているようで、こちらが目を向けた時にはタックルを食らって思わず声が出た。



「よかった!傷を治しても意識が戻らないから、わたし、心配しました……」



そう言ってこちらに抱きついてくるヒムちゃんを抱き返しながら「本当に、心配かけてごめん」と言葉を紡ぐ。


いや、本当にごめん。


本当ならこんな危険なスキル、封印するべきなんだろうけど、Sクラスについていくには………何よりヒムちゃんに心配かけない為にはこのスキルがいるんだ。多分、今後も使っていくだろう。


おそらく、私の腕が吹き飛んだのは最大威力で打ったからだ。元々レベル100のレイドボスのHPを3割削った反動ダメージなんだから、データを引き継いだといってもレベル一桁台の私が耐えられる威力じゃなかったんだろう。

だが、幸い《暗黒剣》には加減が効く。手加減して使えば今日みたいな参事にもならないだろう。


心配をかけさせない為に心配をかけるのは本末転倒だが、それでもこのスキルなら、使いこなせばそのうちSクラスについていける筈だ。


これは、これからも心配かける事をある程度許容して、先に謝っておくべきだろう。



『ム?また、何か良からぬ事を考えてますね?』



さ、察しがいい相棒も考えものだな……。



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