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魔王になっても  作者: 暴虐の納豆菌
第1部1章 《最強のヒト》
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第22話 《暗黒剣》



ーーー《暗黒剣ソード・サクリファイス》。



基本的に高耐久広範囲殲滅系魔導師である【魔神リュミエル】が接近戦を強いられた時に高確率で使ってくる『ユニークスキル』だ。


リュミエルは運営にも愛されたキャラなのか、ユニークスキルがとても多い。

私が『即死の魔眼』と呼んでいる広範囲貫通即死系の魔法《死を刻む宣告》や単体確定即死系の魔法《死を刻む》もユニークスキルだし、今は低レベルによる魔力不足で使えないが、雷系統の最上位魔法 《エスパーダ・オブ・リュミエル》もユニークアーツである。


これらの多くがリュミエルを倒す為に研究されている中、ひとつだけあまり研究が進んでないユニークスキルーーーそれが《暗黒剣ソード・サクリファイス》である。


これは、リュミエルの高いHPを一挙一動に湯水の如く使う代わりに近接戦闘で極悪なまでの威力(ダメージ)を発生させるリュミエルの奥の手、というか追い詰められた時の手だ。

基本的に魔導師タイプである【魔神リュミエル】が近接ゾーンに侵入される事は致命的だ。それを補う為のスキルなのだが、これが、近接ステータスの低いリュミエルが使うにしては不自然な程凶悪なダメージ数値を叩き出すのだ。もはや「運営データ調整ミスったか?」と疑う程である。


ただ、それだけあって代償のHP消費は激しい。それこそただのプレイヤーでは扱いきれない程に。一度この《暗黒剣ソード・サクリファイス》使用時に一撃で前衛壊滅と共にリュミエルのHPバーが三割消滅したという事件があった。

ぶっちゃけ壁を厚くして前衛を断続的に送らせ続ければ反動ダメージだけでリュミエルを倒せるんじゃないかと思われた程だ。当然、実行された後最大レイド数である42人では圧倒的に人員が足りない事に気付き、結局リュミエルの無敗伝説を曇らせる事は無かったが。

そもそも、常に台風の目の様に魔法をエリア全体にばら撒いているリュミエルに接近戦をするだけでかなりのプレイヤースキルを要求される。簡単に言うと《暗黒剣ソード・サクリファイス》を発動されられる程のプレイヤーが大手ギルドでも中々用意できなかった事からこの戦術は却下された。


だが、この《暗黒剣ソード・サクリファイス》はさっきも言った通りリュミエルが〝追い詰められた時の〟手だ。そもそも発動する事自体が危険だと言うレベルの形振り構ってられない時の泣きの一手である。


ぶっちゃけ自分の体が大切なら一生使わない程の禁術だ。私も使う気は無かった。HPの回復手段がゲームの時程多くないのも使いたくない事に拍車を掛けていた。


でも、そういうのはもう過ぎたのだ。ここからは男の意地……いや、女の意地である。


ーーいつまでも情けない所を相棒に見せたくない。


その心からの声が聞こえた時から覚悟は決まっていた。


正直、〝HPの減少〟という現象が現実でどう影響されるのかわからない。

ただ単に身体に傷を負うだけなのか、HPがゼロになるまで傷を負わない《生命の鎧》が現れるなんて小説もあったっけ。HPの概念を現実的な観点でどう処理するのかはMMO転生の一つの課題だとも言える。


どちらにしろ、〝犠牲(サクリファイス)〟なんて名前が付いてる以上《暗黒剣》はかなり危険なものだろうが、どうせHPなんて大量にあるのだ。

それに加えて『勇者の聖剣しか効かない』なんていうHPを減らす余地の無い保険だってある。

一発殴っただけで絶叫する程痛い目に遭うだろうが、それを理由に引く理由も無い。


もう、相棒に情けない姿を晒す意味なんて無い。


恐怖で逃げるのはやめだ。



私は、ここにーーー《暗黒剣ソード・サクリファイス》の解禁を宣言する。

やっちまったゼ☆

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