第12話 『検問』
皆さん元気〜?最近、あれ?そういや口調って丁寧語で良かったんじゃ、なんて思い始めて後悔してるリュミエルちゃんだよ!
いや、ね。〝男でも女でも無い口調〟なら身近な丁寧語があるだろうに、なんでわざわざオレっ娘とか言って素の言葉遣いを通したのか、コレガワカラナイ。
と、今はそんな話じゃないんだった。
実はアイリーン英雄学園に行くことは決定事項(だって他に案無いし)なのだけど、実はこの世界、戸籍制度は無くとも犯罪者かどうかを見分ける技術はあるのだ。
そのおかげで私は恐々とその技術である『検問』というゲート型魔道具を潜ったのだがーー
「驚くほど見事に素通りできたね」
『魔王が人間殺すのが法に触れる訳ないじゃないですか』
「まさかの人間じゃないから人間の法で裁けないオチ」
『そもそもこの学校殺人鬼とか珍しくないですしね』
なるほど、それで今『検問』に引っかかってアタフタしてるヒムちゃんも歓迎ムードなのか。多分、スラム育ちの時の行動が法に触れたのだと思うが、その程度ならアイリーン英雄学園は歓迎だ、と駅員さんが言ってた。
なんでもあの『検問』に引っかからない方が稀なんだとか。そら、この世界割りかし物騒だしね。
………あれ?案外そもそも殺人自体が犯罪じゃないパターンもあるのか?
『十分あり得ますね。色々物騒な世界ですし』
「はぁ、はぁ……やっと追いついたのです」
「あっ、ヒムちゃんおかえりー」
『無事『検問』を突破できたようで何よりです』
「スラム育ちの〝生きる為〟は、理由として強すぎますから」
「あらやだ、結構強か」
実はこの通り理由があれば『検問』に引っかかっても割と許してくれる。中世あたりの法感覚は緩いというか、なんというか。
中世といえば、この世界やけに清潔なのよね。と、俺は街並みを観ながら考える。
実は、中世時代の衛生観といえば、街中の人や道路にフケや垢、糞尿垂れ流しが基本らしくて、それを聞いた時中世ファンタジーには行きたくないと思っていたものだ。
だって貴婦人が日傘さしてるのってあれ、空から降ってくる糞を避ける為だって言うからね。聞いた時、うげってなったよ。
ただこの世界はそうじゃないようだ。神様が意図して創った世界というのもあるだろうが、多分歴史上の偉人に潔癖症が多かったんじゃないかな?
とりあえず、偉人の方々には感謝しかない。
さて、現実逃避もそろそろ限界だ。
「………どうやって入学しよう?」
『ほんと、そうですよね。どうしましょう?』
「考えてなかったんですか!?」
春うららかな季節。桜舞う天気にヒムちゃんの絶叫が木霊した。
たしかに戸籍制度は無いが似た制度はあるんだよなー。