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鐘がために英雄はなる  作者: こんぐま
第2章 魂の帰路
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23話 地下迷路攻防戦 その1

「はっはっはっ! 五名様追加で地獄の入り口までご案内だああ!」


「お断りだ、牛頭」


 牛頭の魔族、魔人マラクスが俺達に向かって駆けだした。

 だが、こっちも黙って立ってるだけなわけじゃない。

 俺は直ぐに拳にイメージを固めて、マラクスを待ち構えた。


 一撃で終わらせる!


 マラクスが俺との距離を縮めて、持っていた巨大な斧を振り上げ、そして……。


「――――っ……な――」


 俺を襲ったのは、マラクスでは無く突然の浮遊感。

 そして、目の前に見える物は急激に変化する。


「――にいいいいい!?」


 俺は叫んだ。

 マラクスが巨大な斧を振り上げた瞬間に、俺が立っていた床が突然消えて、真っ逆さまに落ちてしまったのだ。


「ヒイロ!?」

「ヒロ様!?」


 くそ!

 嘘だろおい!?


 俺は上を見上げ、落とされた俺を心配そうに見つめるナオと目が合った。

 しかし、直ぐにナオも俺から目をらす。

 それもその筈だ。

 向こうにはマラクスがいる。

 今は穴に落ちた間抜けな俺に構ってられる余裕はない。

 勢いよく穴を落ちる俺は完全な足手纏い。

 俺自身はと言うと、なす術などあるわけも無く、勢いよく落ちていくだけ。

 しかし、だからと言って諦めない。


 俺の能力スキルは想像の体現化だ。

 イメージしろ。

 飛ぶんだ!


 ……。


 …………。


 って、んなの出来るわけないだろ!

 俺は鳥じゃねえっての!


「って、やべえ何処まで落とされるんだこれ!?」


 くそ、すげえデジャヴを感じるぞ。

 そう言えば前も洞窟で落ちたよな……俺。

 ちっくしょう……どんだけかっこ悪いんだよ。

 って、めげてないで、とにかく集中しろ。

 地面に着地した衝撃で死にましたじゃ話にならないんだぞ。


 どんな落ち方をしても良い様に、全身にイメージを張り巡らせる。

 するとその時、穴の横壁が突然轟音を上げて爆発した。


「お前が英雄だな? オイラの手で葬ってあげるよ」


「ぴ、ピエ――」


 爆発した場所からピエロ姿の男が現れ、次の瞬間、俺は不思議な現象に襲われた。


「――がっ……!」


 突然襲いくる地面に落下した様な衝撃。

 勿論、まだ穴は続いている。

 しかし、俺は強い衝撃を受けて、ついでに落下も終わったのだ。


 いってえ……。

 どうなってんだ?


 下を見ると、まるで透明なガラスの上にいる様で、だけどそこには何も無い。

 手で触れても、実際にガラスが張られているわけでも無く、そこにあるのは空気のみ。


 わけが分からず驚く俺に向かって、ピエロが手をかざし、茶色に淡く光る魔法陣を浮かび上がらせた。


「ストーンニードル!」


 ――ヤバ!


 頭上から石の針が降り注ぐ。

 突然の事で咄嗟に横に跳ぶと、今度は壁がある筈の場所をすり抜けた。


「すり抜けた……?」


 驚きながら周囲を確認すると、すり抜けた壁の先は、ぼんやりと淡い光を放つ壁がある通路になっていた。


 先に進めそうだな……。

 どうする?

 多分、あのピエロは魔族だ。

 ここで倒すか?

 いや駄目だ。

 さっきから訳が分からない状況が続いてる。

 しかも、この通路はかなり狭い。

 こんな所じゃ、まともに戦える気がしないぞ。


「待ちな!」


 不意にピエロの声が聞こえて、背後から床に着地する音が聞こえた。

 急いでその場を離れると、ピエロが俺を追って壁をすり抜けて姿を現して、俺は逃げる為に駆けだした。


 ――ん?

 あいつ、今笑わなかっ――――っ!


 瞬間――目の前にバスケットボールサイズの大きさの球体が現れ、それが突然破裂した。

 そして、破裂した球体から、大量の鉄釘の様な針が全方向に勢いよく飛び出した。


「――っつぅ!」


 あまりにも突然の事に俺は反応が遅れてしまい、それを何本か受けて体に刺さってしまった。


「さあ! ショータイムの始まりだよ!」


 ――来る!


 ピエロがもの凄いスピードで俺に接近し、俺の立つ地面に魔法陣が浮かび上がった。


「グラビティショック!」


 瞬間――俺は下からもの凄い威力の衝撃を食らった。

 それはまるで、全身を下から硬い物で殴られるような感覚。


「――ぐぁ……っ!」


 ヤバいぞこいつ!

 なんつう威力の魔法を使うんだよ!

 気を抜いたらマジで死んじまうぞ!

 くそっ。

 だからって、こんな狭い通路で戦えるかっての!


 とにかく今は逃げるのみと、俺は走り出す。


「お前は英雄だろう? どうしたんだい? 逃げてばかりで情けない英雄だね!」


 んな事分かってるっての!

 って、くそっ。

 分かれ道かよ!

 どっちだ? どっちが正解だー?


 ピエロから逃げていると、分かれ道が現れる。

 ここは慎重に選びたい所だが、今はそうも言ってられない。

 俺は立ち止まる事なく、右側の通路へと走り出した。

 しかし……。


「うごっ!」


 通路があると思った先には見えない壁があったようで、俺は勢いよく壁にぶつかってしまった。


「馬鹿だね! そっちはハズレだよ!」


「くっそお。何なんだよここー!」


 見えない壁にぶつけてしまった鼻を押さえながら、急いで左側の通路に進路を変えた。


 ちくしょういてえ。

 でも、少しだけ収穫はあったぞ。


 収穫、それは、あのピエロについての情報だ。

 先程あのピエロは、「そっちはハズレだよ」と言っていた。

 つまり、あのピエロはこの訳の分からない通路の事を知っている。

 だから何だと思うかもしれないが、朗報で無いにしろ、多少はこっちの振る舞い方も変わる。

 少なくとも、この訳の分からない狭い通路で、ピエロと戦うという選択肢が完全に消えたのは言うまでもない。


 にしても厄介だな。


 慎重になりながらも、走る速度を緩めず周囲に注意する。

 すると次の瞬間、踏んだ床が光った。


「これか!」


 床が光って直ぐに、目の前に先程と同じバスケットボールサイズの大きさの球体が出現する。


 やっぱりな!


 球体が破裂し、鉄釘の様な針が周囲に勢いよく四散した。

 俺はそれをガードして、そのまま走り続ける。


 別れ道!


 集中力を高め、魔力を視認する。


「こっちだ!」


 別れ道も難無くクリア。

 魔力の視認を維持して、周囲に目を配る。


 そこ等中に魔力の罠が張り巡らされているみたいだな。

 っつうか、壁にも罠があるぞ。

 こんだけ罠があって実際にかかった量が二つって、俺は運が良いみたいだ。


 正直、まさかの罠の量に驚いた。

 ここもあそこも罠だらけで、正直な所、全てを避けて通るのは厳しい程だった。


 何度か、わざと罠を発動させながらも走り続ける。

 途中で本物の別れ道もあり、それも迷っている余裕はないので適当に選んで進む。

 そうして走り続けて暫らくが経ち、違和感に気がついた。


 これ、同じ所を何度も回ってないか?

 罠の位置に見覚えがあるぞ?


 そして、その時、俺はやっと気がついた。


「騙された!」


 後ろから俺を追って来ていたピエロを見て叫ぶ。

 何故なら、いつの間にかピエロは、ただの魔力で動く人形に変わっていたからだ。


「どうりで途中から攻撃が止んだと思った。ったく、勘弁してくれよ。無駄に走らされたじゃねえか」


 文句を言いながらピエロの人形を殴って粉砕して、肩を落とす。


「しっかし、どうすっかな~」


 改めて周囲の魔力を目で探って確認した。

 すると、通路の壁の一部が、罠とは別の魔力の流れを出していた。


「あれ? 何だアレ?」


 不思議に思って、その壁に近づいて目を凝らしてよく見てみる。

 すると、薄っすらと奥に続く通路が見えてきた。


「こっちが正解って事か……」


 呟きながら、壁に触れられるかどうかを確認する。


 やっぱり壁が無い。

 魔法で壁を見せてるって感じかね。


 用心しながらゆっくりと壁をすり抜けて、俺は再び周囲を注意しながら奥へと進む。


 こっちには罠が無いみたいだな。

 もしかして、魔族の連中が知らない通路って事か?

 いや。

 そんな事より、何であのピエロは俺を追うのを止めたんだ?

 ……案外、罠だけで始末出来るって、俺が舐められてるだけかもな。

 って、また別れ道かよ。

 森といい地下といい、迷路ばっかで嫌になるな。


 右にするか左にするかと立ち止まる。

 魔力は視認出来ない。


 罠はやっぱり無いか。

 うし。

 気持ちを切り替えて行くか。

 とにかく、早くナオ達と合流しないとだよな。

 っつうか、そう言やウルベ達はどうなったんだ?


 ウルベとミーナさんは俺達より先に階段を下りて、そこで牛頭に襲われて姿を消した。

 牛頭は地下迷路に招待と言っていた。

 その言葉から察するに、恐らく命に別状は無い筈。


「ま、俺は人の心配してる場合じゃないよなあ。とりあえず……左にするか」


 そう呟いて、別れ道を左に進む。

 勿論念の為に魔力を視認する目は持続する。




 暫らくの間進んで行くと、上へ上れる階段を見つけたので、慎重に階段を上って先に進んだ。

 それなりに長い階段を上りきると、そこは行き止まりになっていた。


「行き止まり……? じゃないよな」


 階段を上って直ぐ行き止まりなんて、普通に考えたらありえない。

 あくまで俺の考えであり、中にはそう言う階段もあるかもしれないけど、それだと階段の意味がない。

 そんなわけで、何かあるだろうよ、魔力を視認する目で確認する。

 すると、そこにある壁が、すり抜け可能の壁である事が分かった。

 と言っても、今度はすり抜け可能の範囲がかなり小さい。

 寧ろ小さすぎて、通れないまである。


「……いっその事、この壁ぶっ壊すか?」


 と、俺が呟いたその時だ。

 壁の向こうから「止めてくれ」と声が聞こえた。


「――っ!?」


「ヒロ、君は思っていたより……と、そんな事より、ちょっと待っててくれ」


「ウルベ? そこにいるのってウルベなのか?」


「ああ、そうだ」


 ウルベが返事をした途端に、目の前の壁が開いた。

 それはまるでふすまを……いや、自動ドアが開く様に、真横に引く様に開いていった。

 壁が開くと、直ぐそこに立っていたウルベが、俺の顔を見上げて目を合わせた。


「まさかヒロが先にいるとは思わなかったよ」


「先……?」


「あれ? 気がついていなかったのかい?」


「あ、ああ」


 一瞬何を言われたか分からなかったが、その答えは直ぐに分かった。

 つまりは、穴に落ちた事で、先に進んでいたウルベを追い越していたのだ。


 んで、そっから入口に戻ってたって事か。

 あ、そうだ。


「ミーナさんは一緒じゃないのか?」


「魔族の罠にハマって、途中で別れてしまったんだ。そう言う君こそ、メレカさんとナオ、それにフウとランがいないようだね?」


「俺だけ穴に落ちたからな」


「穴?」


 俺はウルベに今までの事を説明する。

 すると、ウルベは何か考え込んで顔を顰めた。


「そのピエロの魔族……恐らくは魔人サルガタナスだ。そして、ヒロが落ちた落とし穴は、その魔人サルガタナスが作った罠だろうね」


「まあ、そうなるよなあ。って、あいつが牛頭が言っていたサルガタナスか」


「ヒロ、僕はこのまま先に進むつもりだ。君はどうする?」


 ウルベが真剣な面持ちで俺と目を合わす。

 俺の答えは勿論決まっていた。


「俺も一緒に先に進むよ」


 正直に言うと、ナオ達の事は心配だ。

 しかし、それと同時に信頼もしていた。

 だから、俺はウルベと一緒に先に進むと決めた。


「わかった。それなら先に進もう」


「おう」


 ……ん?

 って事は、またあの罠だらけの通路を通るのか。

 気が重いな。

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