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鐘がために英雄はなる  作者: こんぐま
第2章 魂の帰路
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20話 ニャーとムキムキの戦い

※今回はナオ視点のお話です。



 赤い肌の筋肉ムッキムキな上半身が大きな短足魔族。

 ニャーが前から来るその魔族に向かって走り出すと、魔族はニャーを待ち伏せするように立ち止まって金砕棒かなさいぼうを構えたにゃ。


 あのムキムキ、大きな魔道具を持ってるにゃ。

 きっと力比べはしない方が身の為にゃ。

 でも、先手は譲らないのにゃ!


「先手必勝! ピラーファイア!」


 挨拶変わりに炎の柱を魔族に向かって放ってやったにゃ。

 そしたら、魔族はニャーが出した魔法に向かって金砕棒を振り回したんだにゃ。


「ふんっ」


「にゃっ!?」


 魔族はピラーファイアを金砕棒で打ち払ってしまったにゃ。

 それから直ぐに、その巨体からは想像も出来ない速さで、ニャーに向かって跳躍したのにゃ。

 ニャーは後ろにぶ準備をして、魔族が振り下ろす金砕棒を魔爪まそうで受け流すように防いで、直ぐに後ろへ跳んで距離をとったにゃ。


「獣人の小娘一人が相手か。随分と儂も舐められたものだな」


「お前なんか舐めないにゃ! ばっちいにゃ!」


「言葉の意味も解からんほどの小娘か。まあ良い。礼儀と言うものを儂が教えてやろう。まず出会った相手とは、例え敵同士であっても名乗り合うものだ。いきなり魔法を使い攻撃するなど、言語道断である」


「にゃー? 魔族の癖に細かい奴だにゃ」


 ニャーが顔をしかめると、魔族がやれやれと言いたげな表情で首を横に振ったにゃ。


「儂は魔人カラビアだ。この廃墟の町でお前達をほふる者だ。小娘、お前も名乗れ」


 本当に名乗りだしたにゃ。

 仕方がないにゃ~。

 礼儀には礼儀で返すのが大人の女の正しいあり方にゃ。


 ニャーは胸を張って、掌を胸に添えて堂々した態度をとったにゃ。


「ニャーはナオ=キャトフリーだにゃ」


 ニャーが名乗ると、魔族がニヤリと微笑したにゃ。


「ナオか。ではナオよ。お前の魂の名は覚えた」


「魂の名? どう言う事にゃ?」


「儂は死んだ者の名を魔石に刻む事で、その者を操る事が出来るのだ」


「にゃ!? じゃあ、兵士の皆を操ってるのは、お前の仕業かにゃ!?」


「その通り。そして、ナオよ。お前も死んだ後は、死人の奴隷として思う存分働いてもらう」


「にゃーっ! 騙されたにゃ! 何が礼儀だにゃ! ムカつくムキムキだにゃ!」


 ニャーが眉根を上げて怒っていると、いつの間にか間合いを詰めたムキムキが、ニャーに向かって金砕棒を振り上げていたにゃ。


「――っ!?」


 このムキムキ、やっぱり図体のわりにはずばしっこいにゃ!


 ニャーはギリギリで攻撃をかわして、後ろに跳んで距離をとって構えたにゃ。


「ほっほっほっほっ。中々良い反応をするではないか。では、これならどうかな?」


 ムキムキが金砕棒に魔力を集中して、ニャーもそれに合わせて魔爪に魔力を溜めたにゃ。


「レッドスイング」


 金砕棒が炎に包まれて、ムキムキがニャーに接近しながら金砕棒を振り上げるにゃ。


「にゃっ!? クロウズファイア!」


 ニャーは驚きながら、ムキムキの攻撃を真横に跳びながら受け流したにゃ。


「魔人なのに、何で純粋な火属性の魔法が使えるにゃ!?」


「なーに、簡単な事だ。儂の能力スキルが魔石を自在に操る【魔石使い(ストーンマスター)】と言うだけの事。よって儂に属性の垣根は無い」


 ムキムキはそう言うと、左手の手の平をニャーに見せたにゃ。

 手の平の上には幾つもの魔石があって、ムキムキは直ぐに魔石を握ったにゃ。


能力スキル! 魔石使い(ストーンマスター)にゃ!? やっぱり魔族は能力スキルを使えたのにゃ!?」


「ほう、小娘。やはり英雄の一派は、魔族でも知っている物が少ない能力スキルの存在を知っていたか。言われた事を理解出来ずに終わると思っていたがな」


「そんなの常識だにゃ!」


 ニャーはムキムキに向かって勢いよく跳んだにゃ。

 それから、魔爪じゃなくて足に魔力を集中するにゃ。


 ムキムキの側まで行ったら、ニャーは魔爪でムキムキに斬りかかって、ムキムキがそれを金砕棒で受け止めたにゃ。

 でも、ニャーは金砕棒を掴んで、地面を蹴り上げたにゃ。

 そして、金砕棒を中心にしてクルりと回って、逆立ちした状態で体をひねるにゃ。


「いっくにゃーっ!」


「――ぬっ!?」


 捻った体をそのまま勢いよく回して、足に集中していた魔力を一気に解放するにゃ。


「ローテイションキックバーニング!」


 ニャーの両足から炎が上がって、ニャーはそのままの姿勢から回転蹴りを繰り出したにゃ。

 そして、炎を纏った素早い回転蹴りが、ムキムキの顔に直撃したのにゃ。


「ぐおおっ!」


 ムキムキは勢いよく数十メートル先まで吹っ飛んだにゃ。

 吹っ飛んだムキムキは、廃墟になった家に突っ込んだにゃ。

 廃墟だった家は凄くもろかったにゃ。

 ムキムキがぶつかると大きな音を立てて崩れて、ムキムキを崩れた家の下敷きにしたにゃ。


「にゃっふーん。ヒイロと編み出したニャーの新技にゃ!」


 実はスネアに向かう途中で、休憩の合間にやるヒイロの特訓に付き合っている最中に、ヒイロにこんな事を言われたにゃ。


“気になったんだけどさ。魔力を溜めてする攻撃って、魔法である必要性とかあるのか?”


 ヒイロのその言葉は、ニャーだけじゃなく、姉様もウルウルも他の皆も驚いたにゃ。

 ニャー達にとって、魔力を使う事は魔法を使う事だったにゃ。 

 だから、そんな事は考えた事も無くて、ヒイロの言葉で見えなかった何かが見えたんだにゃ。

 そして、ヒイロと一緒に完成させたのがこの技なのにゃ。

 ニャーには元々脚力があるから、それを利用して体を捻って威力を上げて、更に魔力の後押しで威力を上げるだけの蹴り技にゃ。

 だけど、これが意外と高威力に仕上がったのにゃ。


 ガラガラと音を立てて、ムキムキが瓦礫がれきの中から這い上がって、姿を見せたにゃ。


「にゃー。少なくとも、最近までのファングフレイムをより、威力が強いんだけどにゃー」


 ムキムキは無傷とまでは言わないけど、それでも傷は浅かったみたいにゃ。

 まだまだ余裕だって表情でムカつくにゃ。


「どうやら、小娘だからと言って手加減は出来なさそうだな。今の攻撃でだいたい分かった。お前さんがまだ本気でない事もな」


 んにゃ!?

 見抜かれてるにゃ。

 こんな所でヘトヘトになってられないから、魔力を温存しようと思っていたのにゃ~。


「お前相手にはこちらの方が良さそうだ」


 やっぱりあの大きな金砕棒は魔道具マジックアイテムだったにゃ。

 ムキムキが左手に持っている魔石の一つ“水の魔石”を、金砕棒にはめ込んだのにゃ。

 武器として使う魔道具マジックアイテムには、ああやって魔石をはめて使えるタイプもあるにゃ。

 でも、そんな事よりおかしいにゃ。


「水の魔石にゃ? 火の魔石じゃないにゃ?」


「言っただろう? 儂は魔石を操る事が出来ると」


 その時、金砕棒に水の魔力が集束していったにゃ。


「にゃ~。ちょっと危険かもにゃ」


 火の属性相手なら同じ属性なりに有利に立つ自信はあったけど、水属性が相手だと話が違うにゃ。

 火と水の属性は互いを弱点とする属性だからにゃ。

 火と水の属性は、実力がそのまま影響の出る属性同士だにゃ。

 だから、実力の少しの差が命取りになってしまうのにゃ。

 これは以前戦ったブールノ様との戦いで、苦戦を強いられたとも言える理由だにゃ。

 でも、もしブールノ様が生きていれば、苦戦すらさせて貰えずにニャーは負けていたけどにゃ。


 問題は、魔石はともかく相手が魔人で、ムキムキの方が遥かにニャーより魔力が高い事にゃ。

 魔法の威力は、そのまま使い手の魔力に依存されるにゃ。

 別属性の魔力を魔石で使った場合にどうなるのかは知らないけど、楽観視出来ないのは間違いないんだにゃ。


「ブルーバースト」


 ムキムキが構えた金砕棒から、魔力に覆われた水の塊が放たれたにゃ。

 でも、その水の塊に勢いはなくて、簡単に避けれそうな速さだったのにゃ。


 パワータイプにゃ?

 もしそうだったら、油断したら危険なやつにゃ。


 ニャーは警戒しながら魔法を避けたにゃ。

 でも次の瞬間に、案の定で水の塊が爆ぜたんだにゃ。

 そして、周囲一帯に高威力の水しぶきが弾け飛んだのにゃ。


「にゃーっ!」


 ニャーが飛び散る水飛沫みずしぶきを魔爪で払いのけていると、そこへムキムキが近づいて来て、金砕棒を振り回して攻撃を仕掛けてきたにゃ。


「ふんっ!」


「――にゃっ」


 ニャーが透かさず攻撃を避けると、それを狙っていた様に動きの先を読まれてしまったにゃ。

 ムキムキはニャーが避けた先に左手を出して、ニャーはお腹を大きな左手で鷲掴みされてしまったんだにゃ。


「――っにゃ!?」


「ブルーインパクトオオッ!」


 ニャーを掴んだムキムキの左手から強い水の衝撃が放たれたにゃ。


「にゃぐ……っ!」


 ニャーは逃げる事も防御する事も出来ずに水浸しになって、強力な一撃で吹き飛んだにゃ。

 吹き飛ぶ勢いを止める為に、ニャーは地面に両手の魔爪を突き刺したにゃ。


「けほっけほっ……」


 結構痛かったにゃ。

 やっぱりニャーも本気でいかないと、このままだとられちゃうにゃ。


 勢いが止まると、ニャーは血を吐いてから口を腕で拭うにゃ。


「今ので死なんとは、タフな小娘だ」


 ニャーは一度大きく息を吸って、ゆっくりと呼吸を整えるように吐くのにゃ。

 そして、真っ直ぐとムキムキを見据えて、威嚇いかくの姿勢をとったにゃ。


「む? 目つきが変わったな」


「フレイムダンス!」


 まずは、辺り一面に火の玉を散りばめるにゃ。

 それから火の玉を散開させて、宙を舞わせながらムキムキを狙ったにゃ。


「ブルースイング」


 ムキムキは金砕棒を振り回して、ニャーの放った火の玉を次々と消し飛ばしていったにゃ。


 あのムキムキ滅茶苦茶にゃっ!

 ニャーの魔法を全部一振りで消し飛ばしたにゃ!


「小娘、奇遇だな。儂も今、それと同じ様な魔法を使おうと思っていたところだ」


 ムキムキが金砕棒を構え直して、左手の手の平を上にしたにゃ。

 その手の平の上には、さっき見た時よりも無数の魔石が乗っていたにゃ。


「にゃ?」


「マインフロート“セット”」


 ムキムキの手の平に乗っていた無数の魔石が、浮かんで散開したにゃ。

 そしてそれは、ニャーの周りにも勢いよく飛んで来て、ニャーは無数の魔石に囲まれてしまったにゃ。


 にゃー?

 全然同じじゃないにゃ。

 あれは時限式……それとも操作式にゃ?

 どっちにしても厄介な魔法を使われたにゃ。

 でも、ジッとしてても仕方ないにゃ!


「クロウズファイア! 斬り裂くにゃ!」


 ニャーは跳躍して一気にムキムキに接近して、クロウズファイアで斬りかかるにゃ。


「ブルースイング」


 ムキムキの持つ金砕棒が水に包まれて、ニャーの攻撃を受け止めてしまったにゃ。

 それに、それだけじゃ終わらなかったにゃ。


「アクティベート!」


 ムキムキが魔法を唱えると、ニャーの背後に浮いていた魔石が炎に包まれだしたにゃ。

 そして、炎に包まれた魔石が、ニャーの背中を狙って勢いよく飛び出したにゃ。

 ニャーは突然の事で反応が遅れて、そのせいで直撃してしまったにゃ。


「……っ!」


 更に、その衝撃で隙が出来たニャーに向かって、ムキムキが金砕棒振り上げたにゃ。

 そして、ニャーは避ける事も出来ずに、それを左肩にもろに食らってしまったんだにゃ。

 

「――っぐにゃぁ!!」


 ニャーは金砕棒を受けた衝撃でまた吹っ飛ばされたにゃ。

 しかも今度は、浮遊してる無数の魔石にぶつかって、魔石は衝突すると色んな攻撃をニャーに与えていったにゃ。

 それは、時に爆発し、時に風の刃が襲いくるなど、様々なものだったにゃ。

 ニャーは魔石の攻撃を食らいながら吹っ飛び続けて、数十メートル先にある廃墟に勢いよく衝突したのにゃ。


 本気で厳しいにゃ。

 今ので左肩から先が動かなくなったし、色んな魔石に仕掛けられた魔法のせいで、いっぱい傷を負っちゃったにゃ。


 ニャーはふらつきながら立ち上がって、ムキムキがニャーに向かって走って来ている姿を見たにゃ。


「にゃ?」


 そこで変な違和感に気がついたのにゃ。

 さっきまで体の大きさや、足の短さからは考えられない程の動きの速さだったのに、手負いのニャーを前にしてあまりにも遅いにゃ。

 遅いと言っても、さっきまでの動きと比べたらにゃ。

 でも、それでもわざわざ速度を落とす必要は無いはずにゃ。


 ニャーなら弱った所をズバッと殺るのに、何でにゃ?


 そこで、ニャーは当たり一面に浮かぶ無数の魔石を再度確認すしたにゃ。


 ムキムキは魔石を操る能力だと言ってたにゃ。

 それなら、今までは魔石の魔力で動いていたかもだにゃ?

 今は動きが速くなる為の魔石……例えば、風属性の魔石を浮遊させてしまったから、動きが鈍くなってしまっているにゃ?

 それにゃらっ!


 魔力を集中するにゃ。

 集中する場所は右手に装備している魔爪に、そして両足にゃ。


 こっちに来てるムキムキを見据えて構えるにゃ。

 時間が随分とゆっくりと流れている様に感じたにゃ。


 何となくだけど、この一撃で終わらさなければ、次が無いようにニャーは感じたにゃ。

 それは、ムキムキ……魔人カラビアの実力を認めているからこそなのにゃ。

 未だに宙に浮かぶ無数の魔石は、恐らく自由自在に動かす事が出来る。

 それは解除も同じだと、ニャーは予想していたにゃ。

 仮に一撃で仕留めそこなえば、間違いなく警戒されて魔石を手元に戻すはずにゃ。

 解除されて魔石が手元に戻ってしまえば、手負いな上に左腕が動かなくなったニャーでは、最早あらゆる攻撃に対処しきれなくなってしまうにゃ。

 だからこそ、今しかなかいのにゃ。


 一撃で仕留めるにゃ。


 カラビアが近づいて、金砕棒に魔力を溜めだしたにゃ。


 ……まだにゃ。


 目の前にカラビアが迫って、金砕棒を振り上げたにゃ。


 ――今にゃ!


 カラビアが金砕棒を振り下ろし、ニャーに攻撃する瞬間に足に溜めた魔力を解放して、カラビアの背後まで高速で移動したにゃ。


「――何!?」


「ファングフレイム“デスバイトオオオォォッッ”!」


 響く轟音、放たれたのは炎で作られた大きな虎の顔と鋭い牙。

 ニャーから解放された魔力は、カラビアを覆い尽くす程の大きな虎の頭を現して、鋭い炎の牙を剥き出しにして背後からカラビアを噛み砕いたにゃ。


「ぐおおおぉぉぉぉぉっっ!」


 カラビアは燃えながら噛み砕かれた場所を中心にして、全身からヒビが入りだしたにゃ。

 そして、ヒビの入った場所からは、黒紫色の光が次々と放出されていったにゃ。


「こんな小娘に儂が負け――」


 次の瞬間に、カラビアは最後の言葉を言い終える前に、大きな音を響かせて爆散して、木端微塵になって絶命したにゃ。

 すると、周囲に浮かんでいた魔石が地面に落ちていったにゃ。


「にゃー。もう暫らく動きたくないにゃー」


 ニャーはクタクタになって、へたりとその場に座ったのにゃ。


「……ヒイロ達はどうなったかにゃー?」


 ヒイロの事が気になったから、せっかく座ったけど重い腰を上げたにゃ。

 それから、来た道をフラフラと歩いて戻る事にしたのにゃ。


【魔族紹介】


 カラビア

 種族 : 魔族『魔人』

 部類 : 人型

 魔法 : 闇属性

 能力 : 魔石使い(ストーンマスター)


 祭壇スネアで死んだ兵士を操っていた魔人。

 上半身と下半身が八対二の割合で筋肉が凄い。

 自分の背丈と同じくらいの大きさがある金砕棒を武器として使っていて、その一振りは鉄を砕く程に強力。

 能力スキル魔石使い(ストーンマスター)で魔石を操り、それを死人に埋め込む事で操っていた。

 実は鉱石洞窟マリンバで採掘した魔石の一部を、邪神から貰って使っていた。

 趣味は魔石磨きと筋トレ。

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