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鐘がために英雄はなる  作者: こんぐま
最終章 君と絆の物語
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42話 わたしには心配事がある

※今回はみゆ視点のお話です。



「ねえ、にくすちゃん。にくすちゃんのお師匠様のたいむお兄ちゃんって、不老不死に出来る能力スキルがあるんだよね?」


「せやなあ」


「だったら、お兄ちゃんを不老不死にって出来ないの?」


「ヒロには多分無理やろな」


「そっかあ。それが出来たら、お兄ちゃんも死ななくて済むって思ったんだけどなあ。やっぱ不老不死なんて、そう簡単にはなれないんだね」


「ちゃうちゃう。なれる事はなれるやろうけど、なる為の条件をクリア出来んやろうなって思たんよ」


「条件……? ってなあに?」


「大切な人を殺す事や。不老不死になる為の条件ってのはな、不老不死になりたい本人が大切な人を殺す事で、それを引き換えにして不老不死になるんや」


「えー!? 何それ!? そんなの絶対無理だよ! それに、そんな事して不老不死になったお兄ちゃんなんてヤだ!」


「せやろ? それになあ。もし、ビビって大切な人やない人を大切な人や嘘こいて殺してしまったら、そん時は殺した瞬間に一緒に死ぬんや」


「そっかあ。不老不死になるのって、そんな簡単な事じゃないんだね」


「せやな。ヒロもそうやけど、大切な人を殺してまで不老不死になりたい人なんて誰もおらんやろうし、不老不死なれる言うても現実的やないんや」


 わたしには心配事がある。

 それは、お兄ちゃんの事だ。


 そしてこれは、にくすちゃんがたいむお兄ちゃんを追っていなくなる前の会話。

 ピュネちゃんから心の声の会話でお兄ちゃんの事を聞いて、わたしはお兄ちゃんを不老不死に出来ないかなって思って聞いたの。

 でも、結果はこの通り。


 大切な人を殺さなきゃ不老不死になれないだなんて、そんなの絶対駄目だし、お兄ちゃんにはそんな人にはなってほしくない。

 それにお兄ちゃんもそんなの絶対にしようだなんて思わない筈だもん。

 だから、この話はこれでお終い。

 ちょっとだけ期待したから、がっかりしちゃった。







 クラライトのお城に戻ってきて、お兄ちゃん達が王様とお話をしている間、わたしはお庭に散歩に出かけた。

 すると、散歩の途中で先代どれくのお爺ちゃんを見つけたんだけど、お庭にお酒を広げて楽しそうに一人でお酒を飲んでいた。


「あー! またお昼から飲んでるー」


「おお。帰って来たのか」


「こんな所で飲んでたら、めれかお姉ちゃんが怒っちゃうよ」


「ほっほっほっ。それより、どうじゃ? 成果はあったか?」


「うん。お兄ちゃんが聞きたい事は聞けたみたいだよ」


「ほうかほうか。どれ。お前さんも飲むか?」


「いらない。それよりお爺ちゃんは邪神退治に一緒に来ないの?」


「そうじゃなあ。最近めっきり出てこない孫も気になっておったし、わしもついて行くとするかのう」


「あ。そう言えば最近見ないね。どうしたんだろう?」


「さあのお。あの馬鹿者、まだ巫女を殺すなど阿呆な事を思っとらんと良いんじゃがなあ」


 先代のお爺ちゃんが「やれやれ」って顔をしてため息を吐き出した。

 でも、わたしは心配しなくても良いと思うんだよね。

 だって、本当にべるお姉ちゃんをまだ殺そうって思ってるなら、もうとっくに出てきてると思うもん。


「みゆちゃーん」


「っ? ……あ」


 不意に空から声が聞こえて振り向いたら、ぴゅねちゃんが空からこっちに向かって来ていた。

 だから、わたしが手を振って迎えると、ぴゅねちゃんはニコニコしてわたしの目の前に着地した。


「ぴゅねちゃんおかえり」


「ただいま~、みゆちゃん。先代もお久しぶりです~」


「うむ。変わりなかった様じゃな。ティアマトは元気にしておったか?」


「はい。ティア姉様も元気でしたよ。こんな所にいないで英雄と巫女を助けに行きなさい。って言われちゃいました~」


「それでぴゅねちゃんは戻って来たの?」


「そうなのよ~。ガブリエル様の命令より、ティア姉様の命令を優先しないといけないから。うふふ」


 ぴゅねちゃんはそういうと、とっても嬉しそうに微笑んだ。

 やっぱり、ぴゅねちゃんは天使さんの言う事はあまり聞きたくないみたい。


 やっぱりそうだよね。

 だって天使さんは嘘つきなんだもん。

 お兄ちゃんもわたしと一緒で寿命が減らないって言ったから信じたのに、あれは嘘だったんだもん。

 だから、わたしは天使さんに怒ってるの。


 わたしはこの世界に来る時に、天使さんからお兄ちゃんの寿命を減らない様にしてくれるって言われて喜んだ。

 でも、ぴゅねちゃんから聞いたんだ。

 本当は全然そんな事無くて、お兄ちゃんはわたしの分と含めて、二人分の寿命が今も減り続けてる。

 そして、二人分の寿命が減っているのはお兄ちゃんも知ってる事。

 それなのにお兄ちゃんは全然急がないし、妹としてはお兄ちゃんが本当に心配なのだ。

 だけど、今ならその心配もなくなるかもしてないの!


「お爺ちゃん、にくすちゃんって戻って来てる?」


「ニクス? まだ戻って来ておらんのう」


「……そっかあ」


「あら~? まだヒロさんの件は終わってなかったのねえ」


「そうなの。ぴゅねちゃんの顔を見て思い出したけど、にくすちゃんはたいむお兄ちゃんを追いかけて行った以来会ってないんだよ~」


「ふむ? ニクスがどうかしたのか?」


 先代のお爺ちゃんに聞かれて、話そうかどうかわたしは考えて、ぴゅねちゃんに視線を向けた。

 すると、ぴゅねちゃんは首を縦に振ったので、わたしはお爺ちゃんに心の中で説明を始める。


『にくすちゃんの能力スキルの一つに、寿命を元に戻せるものがあるでしょう? それをお兄ちゃんに使ってもらおうと思ってたの』


『な、なんじゃと!? どう言う事じゃ?』


『先代様、それはわたしから説明します』


 わたしはぴゅねちゃんとにくすちゃんと三人だけの内緒のお話を、ぴゅねちゃんと一緒に説明を始めた。


 にくすちゃんには、見た目を変える能力スキルの他にも、寿命を元に戻せる能力スキルがある。

 なんとビックリな能力スキル二つ持ちなのだ。

 しかもその内の一つが、寿命を元に戻せるって凄い能力スキル

 でも、それは能力スキルの効果の内の一つにしか過ぎなくて、そんな断定的なものじゃなくて、本当はもっと色んな効果のあるものみたい。

 そしてこの命に係わる能力スキルがあるからこそ、たいむお兄ちゃんの弟子をしているらしいよ。


 でも、この凄い能力スキルの事を知れたのは良かったけど、タイミングは最悪だった。

 運が悪い事に、これを知ったのはお兄ちゃんが氷の砂漠(アイスデザート)に行った後で、しかもお兄ちゃんが帰って来た時は入れ違いで出て行ってしまった。

 にくすちゃんがたいむお兄ちゃんを追って出て行ってしまったのは、たいむお兄ちゃんが残りの寿命を知る方法を知っていたからだった。

 何故そんな事を知る必要があるのかは、にくすちゃんの能力スキルの使用する為の条件が原因だった。


 その能力スキルの条件と言うのが結構厄介で、必要なのが二つ。

 それは、何故そうなったのか、後どの位の寿命なのか、それを知っていないと使えないのだ。

 原因と現在の状況を知る事でしか使えない能力スキルだから、にくすちゃんは急いでたいむお兄ちゃんを追いかけていった。


 実は、わたしも最近能力(スキル)について書かれている本を色々あさっているんだけど、その理由はそれを調べる為だった。

 にくすちゃんの能力スキルはとっても凄くて強力だけど、条件が厳しすぎるから、何か良い方法が無いか調べようと思ったの。

 だから、頑張って調べてたんだけど、結局にくすちゃんの能力スキルについて書かれている本は見つからなかった。

 もし見つかったら、わたしだけでもにくすちゃんを迎えに行って、お兄ちゃんの寿命を元に戻してもらおうと思ったんだけど……。




 先代のお爺ちゃんに説明を終えると、先代のお爺ちゃんはピタリとお酒を飲むのを止めて、いつになく真剣な顔になる。

 そして、立ち上がって、わたしの頭を撫でて微笑んだ。


「酒なぞ飲んでおる場合では無いな。状況がかんばしく無ければ、英雄殿に何か変化が起こっておる筈。英雄殿は己の事を我慢して表に出さぬお方じゃ。一先ずは体調不良を起こしておらぬか、確認をするとしよう」


「お爺ちゃん。うん!」


「みゆちゃん、ヒロさんは今何処にいるの?」


「今は謁見中だよ」


「そうか。ならば、扉の前まで迎えに行くとしよう」


「うん!」


 いつも飲んだくれの先代のお爺ちゃんが、お兄ちゃんの為にお酒を二の次にして行動に出てくれたのが嬉しくて、わたしは大きな声で返事をして頷いた。




 謁見を終えたお兄ちゃんに何処か悪い所は無いか聞いたら、お兄ちゃんは特に何かを隠す感じもなく“無い”と答えたので、とりあえずまだ大丈夫みたいだった。

 聞いたお話によると、何らかの特殊な影響で寿命が削られて、それが原因で寿命が尽きかけると魔力に異常が起きて体調が悪くなるらしいの。

 だから、とりあえずまだ平気みたい。

 でも、油断は出来ないし、にくすちゃん早く帰って来て。って、わたしは遠い空を見上げてお願いした。

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