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鐘がために英雄はなる  作者: こんぐま
第1章 異世界召喚
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13話 起死回生

 無謀覚悟でサーベラスと向き合って、剣を構える。

 正直この化け物相手に、俺がどこまで出来るか分からないが、考えていても仕方ない。

 実際に俺が考えた作戦は、失敗に終わっているのだ。

 逃げるという選択肢は既に無い。


 意を決して、サーベラスに向かって走りだす。

 そして、サーベラスに近づいた俺は、とにかく攻撃あるのみだと剣を振るった。

 しかし、それは簡単に避けられてしまった。

 そして、サーベラスは俺の右側に移動して、噛みつこうと大口を開けて飛びかかってきた。


「何度も同じ手でやられるかよ!」


 剣のつかを両手で握っていた俺は、左手を柄から離して、右手だけで剣を勢いよく振り払う。

 しかし、それもサーベラスに軽々と避けられてしまった。 

 だけど問題無い。

 何故なら、サーベラスが避けた方向には、ナオがいるからだ。


「クロウズファイアッ!」


 瞬間――炎を纏った爪の斬撃が、サーベラスの胴体に直撃する。


「グォオオオオオオオッッッ!!」


 サーベラスは堪らず悲鳴を上げ後退し、俺は追い打ちをかける為に斬りかかる。

 だが、思わぬ出来事が起こった。


 サーベラスが口から毒々しい紫色の液体を俺に目掛けて吐き出したのだ。

 咄嗟にその液体を剣で受けとめると、剣がその液体に触れた途端にドロドロと溶け出した。


「――なっ!? マジかよ……っ!?」


 かなり危なかった。

 剣で受け止めなければ、間違いなくそれを食らっていた。


 刀身が溶けて、ほぼ柄だけになってしまった剣を投げ捨てる。

 地面に剣が落ちて音が鳴ると、それを合図にした様に、ナオがサーベラスに攻撃を仕掛けた。


「いっくにゃー! ファング――」


 ナオの右手を炎が包む。


「――フレイムッ!」


 瞬間――ナオの右手を包んだ炎がサーベラスに放たれる。

 その炎は、まるで獲物を仕留めようと大きく口を開けた虎の頭の様な見た目をしていて、その口からは鋭い牙がむき出しになっている。

 炎はサーベラスに直撃し、三つ首の内の一つを噛み千切った。

 首を一つ失ったサーベラスは悲鳴を上げ、その場で倒れた。


「すげえ……。これがナオの強力な魔法の一つか」


 想像以上の威力を目のあたりにして、そのあまりの凄さに俺は魅了されて、その場に立ち止まった。

 ナオは倒れたサーベラスに近寄ると、獅子髪に引っ掛かっていた俺のスマホを取る。


「ヒイロー。これ投げるから受け取るにゃー」


「あ、ああ。ありがとな」


 ナオがスマホを投げて、それを受け取る。

 とりあえず壊れてないか確認する為に、まずは電源をつけると、問題無く電源が入った。


「まぶしっ。……はあ。良かった。壊れてないみたいだ」


 スマホの無事に安堵してポケットにしまう。

 するとその時、俺の横を勢いよく何かが通りすぎた。

 そして、その何かが背後で勢いよく地面を転がって、俺は背筋が凍る様な嫌な感覚を覚えた。

 急いで光る魔石を背後にかざして、その何かに光りを当てる。

 するとそこにいたのは、転がった時の反動で傷だらけになったナオだった。


「ナオ……?」


 ナオが吹っ飛ばされて俺の横を通り過ぎ、そして地面を転がったのだと、理解するまで数秒かかった。

 しかし、理解して直ぐに、俺はサーベラスに向き合った。


「くそっ」 


「ヴゥゥゥッ……」


 ムカつく事に、首を一つ失ったサーベラスが、目を吊り上げて俺を睨んでいやがった。

 首一つ失っても瀕死とは程遠い程の凶暴さを全身から漂わせて、唸りながらジリジリと距離を詰めて来ている。


 ナオが無事かどうか確認したいが、そんな余裕はくれなさそうだ。

 恐らく背中を見せたら確実にられる。

 既に武器は無く、俺が持っているのは光る魔石が二個とスマホだけ。


 だけど、この最悪な状況下で、俺の心は自分でも驚くほど落ち着いていた。

 以前、この目の前の化け物なんかより、もっとヤバいネビロスとか言う奴にあったからなのか、恐怖を感じてすらいなかった。


 何をすれば最善へと繋がるのか、俺は思考を巡らし、先程投げ捨てた剣を見た。


 少し走れば拾える範囲。

 刀身が無くほぼ柄だけの状態。

 だけど、逆に言えば、わずかだけど刀身が残ってる。

 何も無いよりマシだな。


 魔石を一つ、右手で握りしめる。


 あいつが本当に野生の動物みたいなもんだったら、多分これに反応する。

 頼む!

 上手くいってくれよ!?


 剣が落ちているのとは逆の方角に向かって、持っていた魔石を力一杯に放り投げた。

 すると、サーベラスは一瞬魔石に気をとられ、その隙を狙って俺は剣を拾う為に全力で走った。


 しかし、現実は甘くない。

 サーベラスは直ぐに勢いよく俺に狙いをつけて走り出してしまった。 


 くそっ。

 追い付かれる!

 せめて足止め出来る魔法さえありゃ――っ。


 その時、俺はふと、思いだした。

 ベルとメレカさんと交わした会話、そして、ナオの言っていた言葉を。


 メレカさんは“イメージするのは良いかもしれません”と言っていた。

 ベルは“魔法を使う時は、その魔法をどうやって操るかを想像する”と言っていた。

 ナオは“自己の身体能力を上げる魔法があるらしいにゃ”と言っていた。


「身体能力を上げる魔法をイメージ。どうせこのままだと追いつかれるんだ。それならやってやるしかないよなあ!?」


 走るのを止めて、サーベラスに体を向ける。


 ぶん殴れ、俺ええええ!


「うっらぁああああああっっっっ!」


 右手で拳を作り、俺は大声を上げながら拳を振るう。

 そして、俺に向かって勢いよく突進する様に飛び込んできたサーベラスの顔面一つを、殴る事に成功して怯ませた。

 だが、最悪な事が起きた。

 サーベラスを殴った俺の右手は、その衝撃に耐えきれなくて、無残にも骨が砕かれたのだ。


「――づっっ……っい゛っでえええぇぇぇええええぇっっっ!!」


 あまりの激痛に俺が叫び悲鳴を上げた。


 マジで洒落にならない痛みが右手を支配する。

 今までだって喧嘩して、怪我をしたり骨を折るなんて事は何度も経験してきた。

 だけど、ここまでヤバい痛みは初めてだった。

 俺は左手で右手を抑えながらもだえた。


 しかし、こんな状況だと言うのにサーベラスからしたら関係のない事。

 サーベラスは俺に殴られたからか、更に殺気を放ち、俺に勢いよく飛びかかって来やがった。


「――がっ!」


 こんな状況で避けられる筈も無く、俺はサーベラスに地面に叩きつけられる。

 そして最後の魔石を落としてしまい、更には、再び上に乗られて地面に押さえつけられてしまった。

 状況はどんどんと悪化する。

 サーベラスの頭のうちの一つが俺の頭に噛みつこうと迫り、俺は痛みを我慢して右腕でそれを押さえる。


「っくしょう……っ! 最悪だ! 本気でヤベえぞこれええっ!」


 本当に最悪だ。

 こんな右手でよく持ち堪えているなと、自分を褒めてやりたい程の激痛に意識が吹っ飛びそうだ。

 だと言うのに、この糞ったれの犬畜生のもう一つの頭が、恐ろしい行動を始めてしまう。


「おいおい! 勘弁してくれよ!」


 俺に噛みつこうとしていない方の頭の方が、さっき剣を溶かした紫色の液体を、今にも吐き出そうとしているのだ。


「ヤバいヤバいヤバい!」


 意識が吹っ飛びそうになる程の尋常じゃない右手の激痛もあるせいで、落ち着けと頭の中で自分に言い聞かせるが、焦りばかりが湧いて出る。

 一度消えていた恐怖も再び現れて、正直どうにかなりそうだった。

 だけど、こんな時だからこそ冷静になれと、俺は何度も自分に言い聞かす。

 そして、俺は助かる方法を……違う。

 反撃する為の方法を見つける為に思考を巡らせた。


 左手で殴りつけるのはどうだ?

 いいや駄目だ!

 利き手で殴って、このありさまだ。

 左で殴った所で何もならない。

 最悪両手が駄目になって終わる。

 なら蹴り上げるのはどうだ?

 いや、これも駄目だ。

 上半身を押さえられてるこの体制じゃ、まともに蹴りが当たらない。

 いっその事、横に回転して逃げ出すか?

 駄目だ駄目だ。

 そんな事をしようものなら、すぐにでも逃げ出す前に噛みつかれる。

 逃げるんじゃなくて反撃するんだ!

 くそっ!

 何か方法はないのか!?


 考えても考えても答えが出ない。

 だけど、その時だ。

 ふと、視界の片隅に何かが映った。

 そして、俺は落とした魔石の方角へ視線を向けた。


 次の瞬間、俺は考えるより先に直ぐに左手でスマホを取りだして、サーベラスの顔に向けてスマホのフラッシュ機能を近距離から使った。

 サーベラスは突然の強烈な光を目に浴びて、視界を奪われて後ろへよろめいた。

 そして次の瞬間、俺の目の前を真っ赤な炎に包まれたナオが横切った。


「ファングフレイム“デスバイトーッ”!」


 瞬間――ファングフレイムを遥かに超える大きな虎の顔をした炎が、サーベラスを飲み込み全身を噛み砕く。

 そして、サーベラスは悲鳴を上げ、そのまま灼熱の炎に包まれ焼かれた。


 俺は呆然としながら、右手の痛みを忘れてその炎を眺めた。


「これが、ナオが使う本当の強力な魔法の一つか。……はは。すげえ威力」


 炎の火力はかなりのもので、直ぐにサーベラスを骨も残さず燃やし尽くしてしまった。


「やっと終わった……。ちくしょお……。いてえなー、右手ぇ……」


 俺はゆっくりと立ち上がり、ナオに視線を向けた。


「ヒイロ、ボロボロだにゃー」


「おまえもな」


 ナオも随分と消耗したようで、フラフラしながら、その場にへたりと座り込んでしまった。


「ありがとな」


 ナオに近づいて、お礼を言いながら左手で頭を撫でる。

 すると、ナオは気持ちよさそうな顔で笑った。


「しっかし、アレだな。結局俺は魔法が使えなかったよ。身体能力を向上させる魔法でもなさそうだ」


「にゃ? おかしいにゃー。魔法使えてなかったら、あのワンコを殴った時に力負けして吹っ飛んでた筈にゃ」


「……え?」


「ニャーはワンコのあの突進で吹っ飛ばされたんだにゃー。少し気を失うくらいは、もの凄く痛かったんだにゃ。でも、ヒイロは吹っ飛ばされず済んだのにゃ」


「マ? マジなのか?」


「にゃー? その“マジ”って言うのは、本当って意味かにゃ? 本当って意味だったら、本当……マジだにゃー」


「意味はあってるけど、そうかこれ俺の世界の死語だもんな。今まで通じてなかったのか……って、いやそうじゃなくて、じゃあアレか? 俺が使える魔法が、もし本当に身体能力を向上させる魔法じゃなかったら、あの時右手どころか吹っ飛ばされて全身がぐちゃぐちゃになってたって事か?」


「ヒイロの今までを見るかぎりだと、今頃死んでたかもしれないにゃー」


 言われて骨が砕けた右手を見て、血の気が引くのを感じた。

 正直未だに意識が吹っ飛びそうなくらいには滅茶苦茶痛いのだが、つまりはこれでもまだ良い方だったと言う事で……。

 ごくり。と、思わず唾を飲み込む。


「死んでたかもか……。ははっ……」


 そう考えると、この激痛にも愛着はわかないが、ありがたさが出てくる。

 この程度で済んでくれてありがとうと。


 しかし、そんな事を考えている余裕がある状況は終わりを迎えた。

 突然ナオが俺の背後に視線を向けて、猫の様な威嚇の構えをして尻尾の毛を逆立てたのだ。


「――まさか、まだ生きてやがんのか!?」


 俺は焦り、直ぐに後ろに振り向いた。

 しかし、そこに後ろに立っていたのはサーベラスでは無く、見知らぬ綺麗な大人の女性だった。

 そしてその女性が、ただの女性では無い事に直ぐに気がついた。


 一見、美しい髪に綺麗な顔。

 胸も大きく、スタイルも良い美人。

 しかし、それだけでは無く、俺はその姿に一瞬だが恐怖した。

 何故なら、その女性の目は蛇の様で、そして瞳はキラキラと輝く宝石。

 背中からはコウモリの様な翼が生えていて、下半身、腰から下は蛇そのものだった。

 魔人なのか魔従なのかは分からないが、どちらにしても魔族で間違いない姿だ。


 この場に緊張が走り、空気が張り詰める。

 こっちはさっきまで戦っていたせいで、かなり体力を消耗している。

 俺に至っては右手が使い物にならないときたもんだ。

 とてもまともに戦えるような状態じゃない。


 だけどそんな中、この緊張を破ったのは、突然現れたこの魔族だった。


「うっそおー!? ワンちゃんの魔力が急に消えちゃったから様子を見に来たら、うち好みの男の子がいるじゃない! やだもうっ♪」


 魔族はそう言いながら、腰をくねくねと左右に揺らす。

 因みに顔はニッコニコの笑顔だ。


「……は?」


 思いもよらぬ魔族の反応、って言うか言葉使いとその動きに、俺は思わず口をポカンと開けて驚いた。


むしろワンちゃんがこの男の子を噛み殺してたら、ワンちゃんをお仕置きでっちゃう所だったわ~。あっぶないなあ」


「へ、変なのが来たにゃ!」


 さっきまで警戒していたナオも、魔族の酷い言動と動きに、少し遅れて動揺する。

 そんなナオの言動に魔族は驚くべき表情を見せた。


「雌は黙ってな!」


「――っ!?」


 先程までの様子からは想像も出来ない程の殺気が込められた睨み。

 魔族がそれをナオに向けた瞬間に、恐怖でナオが硬直した。


 まさに信じられない光景だった。

 サーベラスにも全く怯まなかったあのナオが、睨まれただけで動けなくなってしまったのだ。

 再び俺とナオに緊張が走り、俺は思わず唾を飲み込んだ。


「やだもー。うちったらー。素敵な男の子の前で、はしたない事しちゃったわー」


 マジでなんだこの魔族?

 俺に対しての態度と、ナオへの態度の温度差が違いすぎるだろ。


 困惑せずにはいられなかった。

 この魔族が何を考えているのか全く読めない。


「あっ。いっけなーい。まずは自己紹介よね! うちの名前はヴイーヴル。邪神様に仕える魔人ヴイーヴルよ。今は彼氏募集中だぞ♪」


 魔族改めヴイーヴルはそう言うと、可愛くポーズをとり、最高に可愛い笑顔を俺に見せる。


「お、おう」


 本当になんだこいつ。

 なんなんだこのノリは?

 違う意味でも関わっちゃいけない系の奴が出て来た感じか?

 しかし、魔人ヴィーヴルか。

 何処かで聞いた事があるような……?


「おい、ヴイーヴル」


 不意に、ヴィーヴルの背後から、老人の声が聞こえた。

 その声に視線を向けると、ローブで身を包み、フードを深く被って口元しか見えない老人がゆっくりと歩いて現れた。、


「おまえは男を見ると、またそうやって直ぐに仕事をサボる。悪い癖だ」


「うげええ! アスタロト様! ほっといて下さいよう!」


「うげーとは何じゃ、うげーとは」


 現れるなりヴィーヴルを叱りつける老人を見て、老人がとてつもない程の実力者だと、直ぐに分かった。

 なんと言うか、ローブやフードで全然体の構造とかは見えないが、雰囲気がヤバいのだ。


 状況はかなり最悪だ。

 魔族が二人いるとは聞いていたが、実際に出て来たのは魔従サーベラスを入れて二人と一匹で合計が三だ。

 しかも、今の今までナオがこの二人に気が付かなかったのを考えると、もしかしたらベル達の方にも、魔人か魔従のどちらかがいる可能性もある。

 どちらにしても、今の俺とナオの二人では、この目の前にいる魔人には勝てないだろう。


「まあよい。ヴイーヴル、もうここには用はない。戻るぞ」


「えー! せっかく素敵な男の子がいるのにー? もう少しで、うちの魅力で彼を虜に出来るのにー!」


「見るに、そやつは例の男だ。その内また会う機会もあるだろうて」


「ちぇー。つまんなーい。あっ、そうだ!」


 ヴイーヴルがニコニコと俺に笑顔を向けて、アスタロトがやって来た方向に指をさす。


「特別に良い事を教えてあげる。わざわざこんなつまんない所に来たって事は、あいつ等を探しに来たって事でしょ? あっちの方にもう少し行くと、捜してる人達がみつかるぞ♪」


「何!? 探してる人達って、タンバリンの大人た――」


「――ヴイーヴル!」


 まさかの情報に思わず聞き返すが、老人がヴイーヴルの名前を呼び遮られた。


「もー。アスタロト様こわーい」


「はあ、やれやれ。本当にもう戻るぞ」


「はあい」


 ヴイーヴルは返事をすると、もの凄い速さでにょろにょろと俺の目の前まで近づいた。

 突然の事に俺が驚いていると、俺の体にぴったりとくっついて、自分の胸を俺の腹部に押しあてる。

 そして、俺の胸部に顔をくっつけて抱き付き、俺の顔を覗き込むように顔を上げて上目遣いをする。


「また会いましょう、ダーリン」


 笑顔でそう言うと、俺の体から離れて老人の所まで戻って行き、ヴィーヴルは老人と一緒に地中へと消えていった。

 俺とナオは何も出来ず、ただ、それ等を見る事しか出来なかった。







 ヴイーヴルが指さした方角に向かって歩き、辿り着く。

 するとそこは、辺り一面に魔石が壁からむき出しになっている場所で、その直ぐ側には黒い髪をした獣人達の姿があった。

 どうやら、ヴィーヴルがくれた情報に間違いは無かったようだ。

 罠の可能性も考えたが、来て良かった。


 全員と言うわけでは無いけど、ミーナさん以外の初めて見る大人の獣人の中には、二足歩行の獣ってイメージがしっくりくる者もいた。

 まあ、簡単に言うなら、二足歩行の犬や猫って感じだろうか?

 全身毛むくじゃらで、顔がまんま動物の顔なのだ。


「あっ! パパー!」


 ナオが走り出し、その中の比較的に人に近い、猫科の獣人の一人に抱き付いた。


「ナオ? ナオなのか? どうしてナオがこんな所に!?」


「ヒイロとベルっち……じゃにゃかった。英雄様と封印の巫女様と一緒にパパ達を助けに来たんだにゃー」


「そうか。巫女様と……。ありがとう、ナオ。お前が無事で良かった。英雄様と言うのは?」


「にゃー。英雄様はヒイロだにゃ」


「ヒイロ?」


「ヒイロだにゃ!」


 未だに右手は痛いし死にかけもしたけれど、村の人達は助ける事が出来そうだし良かった。

 そう思いながら、俺は嬉しそうに笑うナオを見つめた。


 こうして、鉱石洞窟マリンバでの俺達の戦いは、幕を閉じたのだった。


【魔族紹介】


 サーベラス

 種族 : 魔族『魔従』

 部類 : 獣型『犬』

 魔法 : 闇属性


 穴の下の空洞にいた三つ首の魔従で、ネビロスの部下。

 凶暴性が高く、暗闇の中でも周囲が見えている厄介な犬。

 口から毒を吐き出す事で、狙った獲物を溶かす事が出来る。

 人の言葉を喋る事は出来ないが、理解する事は可能で、ネビロスの前ではお利口さんの犬として振る舞っている。

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