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鐘がために英雄はなる  作者: こんぐま
第4章 呪われし種族
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19話 楽器魔法を手に入れよう

※今回は三人称視点のベル達のお話です。



 話は遡り、楽器魔法を手に入れる為にヒロと別れたベル一行は、火山の洞窟ピアノの最深部にある大きな空洞の前までやって来ていた。

 もちろんこの空洞内にも溶岩がそこ等中に流れているし、溶岩が溜まって出来た溶岩の池のような物まである。

 熱気も他より遥かに高い温度で、みゆの魔法で暑さをしのいでいるにも関わらず、体感温度は四十度を超える猛暑。

 空洞の奥には祭壇があり、そこが楽器魔法“ピアノ”が封印されている場所だった。

 ここまで無事に辿り着いたベル達だが、ここで一つの問題が起きる。


「わあ。ワンちゃんがいっぱいいるよ?」


暴獣ぼうじゅうヘルハウンド……魔族化はしていないようですが、数が多いですね」


「うん。東の国に生息してるのは知ってたけど、まさかこんな所にこんなにもいたなんて……」


「にゃー。百匹くらいかにゃあ?」


「もっといません? ここ結構広いですし……あ。見て下さいよぅ。祭壇の上にも何匹かいやがるんだぜ」


 最深部の空洞には、彼女達が言うように暴獣ヘルハウンドの群れがいた。

 パッと見は分からないが、その数なんと二百。

 百どころの騒ぎではない。

 その為、ベル達は直ぐに空洞に入ると言う事はせず、空洞内の様子を見ていた。


 ヘルハウンドの見た目はみゆの言う通り犬で、ドーベルマンに近い。

 とは言え、もちろんただの犬では無い。

 毛の色は黒く、腹は黒めの赤。

 鋭い牙と爪を持ち、息を吐く様に炎を吐く。

 凶暴な獣で、普段から群れで行動している彼等は、溶岩を水代わりに飲む生物だ。

 そして、この洞窟内に生きる生物達の、食物連鎖の頂点でもある。


 ヘルハウンドの群れはここをねぐらにしていて、移動する気配はない。

 と言うのも、今は狩りの時間を終えて休んでいる時間。

 その為、何処かから狩ってきた獲物を食すものや、溶岩の池で溶岩を飲むものがいる。


 そんな暴獣ヘルハウンドを前に、ベル達は困っていた。

 相手は暴獣で、人を見れば襲う凶暴な獣の群れ。

 流石にこの暴獣達を相手に無謀に直ぐに出て行くとはならない。

 だが、決して諦めたわけではなく、困りながらもヘルハウンド攻略の為に作戦を考える事にした。

 そして、暫らく話し合うと、武器を手にして作戦を実行する。


「では、いきます」


 メレカが静かに呟き魔銃まじゅうを構え、銃口に魔法陣を展開。

 狙うは暴獣ヘルハウンドではなく、空洞内にある溶岩の池だ。

 そして、それと同時にみゆが楽器魔法“オカリナ”を召喚する。


「バレットウォーター」


 魔銃から水の弾丸が放たれて、それは溶岩に命中。

 同時にみゆがオカリナを吹いて、周囲にオカリナの音が鳴り響く。

 すると次の瞬間、溶岩がメレカの放った水の弾丸に反応し、ボコボコと膨れ上がって大きな爆発を起こした。

 爆発の規模はかなりのもので、空洞内にいたヘルハウンドがその衝撃に次々と倒れていく。

 とんでもない規模の爆発となったが、その爆発の影響はヘルハウンドのみに発揮された。

 理由は、みゆの楽器魔法だ。


 楽器魔法“オカリナ”単体の効果は、音を鳴らして結界を張り、結界内の攻撃を外に出さないと言うもの。

 但し、強力故にその効果は使い捨てで、魔力の消耗が激しい魔法。

 しかも、この空洞の広さを考えると魔力の消耗は凄まじく、みゆの負担は明らかだった。

 だが、それでもみゆは魔法を使用して、溶岩の爆発をその中に抑えこんだ。


 メレカとみゆの連携で、空洞内のヘルハウンドがダメージを負うと、直後にナオとフウが空洞内に飛び出す。


「いっくにゃあ!」

「スラッシュ!」


 突然の爆発にダメージを負い驚き怯んだヘルハウンドを、ナオの爪とフウの風の剣が次々と斬り裂いていく。

 そして、メレカも魔従で水の弾丸を放ち、次々とヘルハウンドの頭を撃ち貫いて仕留めていく。

 だが、ヘルハウンドもやられっぱなしではない。


 元々ヘルハウンドは火の加護に護られている為、爆発によるダメージはそれ程ではなかったのだ。

 結果、爆発を受けたヘルハウンドの殆どが直ぐに状況を理解し、ナオとフウを襲い始めた。

 更には、オカリナの音の出所と水の弾丸の出所に気付き、ベルとメレカとみゆに向かって何匹かが駆けだした。


「わっ。こっち来た!」


「みゆちゃん下がって! ライトニードル!」


 ベルが光の針を魔法で放ち、向かって来るヘルハウンドを仕留めていく。

 だが、数が多い。

 メレカは空洞内にいるナオとフウを援護しているのもあり、ベル一人ではヘルハウンドを完全に止めきる事が出来そうにない。

 しかし、それでも十分だった。

 何故なら、みゆは下がってと言われて、下がる様ないい子ではないからだ。


 みゆは下がる事無く参戦する。

 オカリナを引っ込めて、今度はカスタネットを楽器召喚する。

 そして、タンッと鳴らして衝撃波を飛ばせば、衝撃波を食らったヘルハウンドは吹っ飛び地面や溶岩の上に落ちていく。

 その結果、ベルだけでなくみゆがヘルハウンドを次々と攻撃していく事で、三人の許へヘルハウンドを寄せ付ける事は無かった。

 ただ、みゆの音撃は致命傷には至らず、ヘルハウンドを仕留める事は出来ない。


「やっぱりわたしのじゃとどめさせないなー」


「みゆちゃん、お願いだから下がってて? 危ないよ」


「先程の魔法で魔力がいちじるしく低下しています。姫様の言う通り、後ろでお休みになって下さい」


「うーん……だったらサポートするよー!」


 話を聞いているのかいないのか、みゆは後ろには下がったが、休むつもりは無いようだ。

 楽器魔法を次々と召喚し、指揮者のポーズを構える。

 そして、いつもの「ミュージック~スタートー♪」の掛け声とともに、勢いのあるメロディを流し始めた。

 これにはベルもメレカも苦笑して受け入れるしかなかった。


「みゆみゆの音楽にゃ!」


「いつ聞いても力が湧きますねん!」


 みゆの流す曲でナオとフウの動きのキレが増し、ヘルハウンドを斬り捨てる二人の速度も増す。

 更には、ベルとメレカの魔法の貫通力も倍増し、一度の魔法で二匹以上のヘルハウンドを仕留めていった。

 だが、そう簡単にはいかない。

 ヘルハウンドの数が丁度半分になる頃に、地震が発生し、低い地響きが洞窟内に響き渡る。

 そして、空洞内にあった溶岩の池から、明らかに他のヘルハウンドよりも大きなヘルハウンドが現れた。


「にゃー! 滅茶苦茶デカいのが出てきたにゃ!」


「うわあ。五メートルくらいありません?」


「ワオオオオオオオオオオオオンッッ!」


 ナオとランが現れた大きなヘルハウンドを見上げて、大きなヘルハウンドが咆えて二人を威嚇する。


「大きなワンちゃんだ! 鳴き声低いけど可愛いね」


「え? 可愛い? みゆちゃんにはあのヘルハウンドが可愛く見えるんだ……?」


「あれ? べるお姉ちゃんは違うの?」


「う、うん。私はちょっと怖いかも……」


「お二人とも、お話をしている場合ではございません!」


 瞬間――大きなヘルハウンドが音を鳴らすみゆを狙って、大玉サイズの炎の塊を吐き出した。

 その速度は凄まじく、魔法で防御が間に合わないとメレカが一瞬で判断し、急いでみゆとベルを掴んで避けた。

 すると、炎の塊が地面に当たって地面を抉り、直後に爆発を起こして、衝撃が三人を襲う。


「きゃああ!」

「うきゃあ!」

「――くっ」


 ベルとみゆが叫び、メレカが二人を庇って背中を焼く。

 背中を焼かれたメレカは隙を作り、そこにヘルハウンドが飛び掛かる。


「ライトニードル!」


 隙を作ってヘルハウンドに襲われたメレカだが、ベルの魔法で難を逃れた。

 だが、まだ油断は出来ない状態だ。

 大きなヘルハウンドの登場がきっかけとなり、ベルとみゆとメレカはヘルハウンドの群れに囲まれてしまった。

 しかも、一回目の爆発は自分達の作戦の一つだったとは言え、洞窟内で二度も爆発が起きたのだ。

 酸素が薄くなり、息をするのも辛くなる。

 それに体感温度も格段に上がっている。

 あまりの暑さに汗も蒸発する速度が凄まじく、体力の消耗も激しくなる。

 しかし、にもかかわらず、元気に叫ぶ少女が一人……いや、二人。


「絶対あの可愛いワンちゃんがボスだよ!」


「一気に斬り裂くにゃー!」


 みゆとナオは大きなヘルハウンドに向かって駆けだした。

 みゆに至っては体力も魔力も限界に近かったが、逆にそれがテンションを上げる要因になっていた。

 何故なら、このみゆと言う名の少女は漫画やアニメやゲームが大好きで、少年漫画もこよなく愛す。

 そんなみゆにとって、己の限界が近いこの状況は、燃えずにはいられない展開なのだ。


「――みゆちゃん!」


 ベルがみゆに手を伸ばしたが、捕まえる事は出来なかった。


「楽器召喚“トライアングル”超特大サイズだよ! いっけええええ!」


 みゆは楽器魔法で大きなトライアングルを出現させて音を鳴らし、大きなヘルハウンドの体を拘束して身動きを封じ込めた。

 そしてそこへ、ナオが己の爪に蒼炎の炎を纏い、大きなヘルハウンドの頭目掛けて勢いよく振るう。


「蒼炎の爪を食らうにゃー!」


 次の瞬間、ナオの蒼炎の爪が大きなヘルハウンドの脳を貫き、大きなヘルハウンドは白目を剥いて倒れて絶命した。

 そして、大きなヘルハウンドが絶命すると、残っていたヘルハウンド達が慌てて空洞内から逃げ出していった。


 みゆとナオはヘルハウンドが逃げて行くと、それを見届けてから駆け寄って、二人で一緒にハイタッチして喜び合った。

 しかし、かなり体力を消耗しているので、直ぐに二人仲良くその場に座り込む。


「流石に疲れたにゃ」


「わたしもー。ずっと歩きづめだっしもんね~」


「二人ともお疲れ。でも、みゆちゃんがいきなり走り出すから、びっくりしちゃったよ」


「なんか、わー! ってなっちゃった。ごめんね、べるお姉ちゃん」


「ううん。みゆちゃんが無事なら良いの。でも、あまり無茶しないでね?」


「うん! ……あ、そうだ。ピアノ」


「あの祭壇の所にあるにゃ?」


「そうみたい」


 みゆは答えながら立ち上がって、ヘルハウンドの屍を避けながら祭壇へと進み、ベルが後を追って来たので手を繋いで歩く。

 それから祭壇の上に登ると、ベルの手を離して祭壇の中心に向かった。

 そして、楽器召喚封印解除の儀式が始まる。


 みゆが手をかざし、ピアノが祭壇の上に浮かび上がる。

 ピアノは美しい音色を奏で、音は光の粒子となって音符に姿を変えて、空洞内が音と音符で満たされていく。

 その幻想的なピアノの演奏会は暫らくすると終わりを迎え、召喚されたピアノが小さな光となって、みゆの体内へと入っていった。


 儀式を終えると、みゆは「ふう」と息を吐き出して、両手を上げてジャンプした。


「楽器魔法“ピアノ”ゲットだよー!」


【暴獣紹介】


 ヘルハウンド

 種族 : 野獣『暴獣』

 部類 : 犬

 魔法 : 無し

 加護 : 『火』


 火山の洞窟“ピアノ”に生息している暴獣で、常に群れで行動している。

 口から炎を吐く事ができ、鋭い牙と爪は鉄をも貫き斬り裂く威力があり、縄張りに入ったものを襲う凶暴性を持っている。

 他種の生物を餌としか認識していないので、見かけたら逃げないと殺されてしまう。

 溶岩の中で泳ぐ事で、体にくっついた汚れやノミを取り除く習性がある。

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