眷属の少女
翔太の鬼人化が始まった。
「もう、手遅れだ。」和泉が眼鏡を押し上げて嘆く。
「夜神の意識がないぞ!」手塚の仲間が叫んだ。
「た、助けてくれぇぇぇ!」
その瞬間、一人の人間が一瞬で現れた。
「『眷属の呪縛、解放。』」
それは一人の茶髪の眉毛のところで揃った前髪に、肩甲骨ほどまでの長さの後ろ髪の少女だった。翔太は意識を失って倒れた。そして、その少女は言い放つ。
「おぉ、和泉、久しぶり。ところで翔太を怒らせたのは、誰っすか?」
「よお、川島。なんでもないよ。」
「あの、川島さん?すまない。俺だ。」
「あなた、誰だか知らないけどまぁ、殺めておきます。」
「同じクラスなんだけど。」
沈黙した。
「ただ、私を殺すとは、いい度胸だな。この私に勝てるとでも?」
その瞬間、手塚は川島という少女の魔法で顔以外を氷で包まれた。
「いい度胸はどっちなんでしょう?あなた、弱すぎます。もっと楽しませてくだせー。」
「分かった、降参だ!」
「カスがちょっかい出すなよ。萎えるから。」
口調はいたって冷静で力の抜けたような喋り方だ。
「んで、そこに倒れてる少女はどうしたんですかい?」
和泉がことの経緯を説明する。
「そか、じゃあ、殺すね?」川島友紀は躊躇いなく言い放つ。
「何言ってんだ!川島!」和泉が止める。
「だって、私の邪魔じゃん。彼が意識不明中だから話せますが、あのツンデレ以外にも、翔太に好意を寄せる奴が現れたらどうでしょう。しかも、超絶美人さんですよ?」
「「「「お前が言うな!」」」」
その場にいる全員が口にした。
「引きますねー。私、翔太以外の男に興味ないんで。しかも、彼の眷属なんで。」
すっかり、平和な空気になった。
そのすぐ近くでは
「見つけた。大物賞金首。」
呟く少女。
「というよりも、なぜ科学者たちは彼とその取り巻きが欲しいんだろうか。」
少女の謎の独り言。ではなく
「アンタ、なぜかなんて私も分からないわ。私達の目的は大金よ?た・い・き・ん。とにかく捕まえればいいのよ。」
また、その時、天界で新たな動きがあったことなど誰も知る由も無い。