「グラトニーオーダー」
第一戦。和泉勇太郎は試合を三十秒で終わらせた。
「次は、神崎さん、ですね。い、和泉さん、みたい、に、お強いん、ど、すえ?」
ツクヨミは完全に三十秒の試合を観て、怯えているようだ。しかも、先ほどの試合をしたやつに「団長」と言われているのだから尚更のことだ。
「俺は和泉より弱いぞ。」
「そ、そうなんですか、団長さん。あまり信じられないですね、その言葉は」
「団長って言うんだから、俺より強いよ。」
「二戦目開始!」
「火属性魔法、火遁銃!」
相手が銃を放ってきた。が、その時には
翔太が空中に浮遊した魔法陣から剣を抜いていた。
「強闇属性魔法、裁き執行。」
剣に闇を纏わせた剣で次々と火の銃弾を斬っていく。
2分後ーーーー。
火遁銃を斬るだけの試合が続き、相手がバテ始めた。
「火術、業火竜の突進!」
相手が竜の形をした攻撃を放ってくる。
その竜は、真っ直ぐに翔太の方へーーー。
(まずい。切れないな、これは。)
ただ、翔太は相手に傷1つ、つけたくない。
(ーーーーーーならば。)
「グラトニーオーダー、羅生門!」
翔太は、自分の前に血と闇で覆われた門を召喚した。
相手の技を一瞬にして飲み込み、また地に帰っていった。
大罪者のみが出せる術の一つだ。
相手は体力の限界で膝から他面についた。その隙に、翔太は目にも留まらぬ速さで相手に近づいてーーーー。
柔道の横四方固めで勝利を収めた。
「神崎さん、凄いですよ!銃弾を全て斬るなんて!と言うよりもその剣、よくみてみると料理に使う包丁ではないですか!」
「それほどでもない。ただ、耐久しただけだ。包丁というか、少し形状は変えているけどな。」
ツクヨミの言葉に翔太は少し照れてしまう。その一方、
「和泉さん?」
翔太は、斜め下の地面を苦しそうに睨みながら沈黙した。
「なぁ、団長。確かに今の試合、あんたを知らない人には強く見えるかもしれない。でもよ、この世界に来る前からあんたを知ってる俺は、いや、俺たち団員は、今のあんたにガッカリするだろうな。正直、俺もガッカリだぜ。」
勇太郎はそう言って、寂しそうにため息を吐いた。
「あっ、次は私なので行ってきますね!」
二人は黙ったままだった。
「三戦目開始!」