旅立つことに
部屋の扉がノックされて、どうぞと告げるとは言ってきたのはシャルロッテ姫だった。
だが一番初めの出会いがアレだったので、見かけは俺が今まで見たことのない美少女で胸もそこそこ大きくスタイルもいい彼女を見ても、ドSな本性が思い出されて苦手意識が消えない。
と、彼女が俺の目の前まで来て、
「……さっきは悪かったわね」
「何の話でしょうか?」
「処刑の話よ。時代錯誤って言うから、この世界に詳しいと思ったけれどそうでないみたいだし……どうやらそこそこ文明が発達した場所から呼ばれたようね」
そうシャルロッテがいうが、この世界の感じを部屋を見る範囲でおおざっぱに見ると、ある程度魔法でカバーされているが、俺達の文明の方が技術的な意味では進んでいる気がする。
だがそれを言うとまたあらぬ諍いが起こる気がしたので、沈黙し、代わりに、
「それでシャルロッテ姫は、どうしてこちらに?」
「シャロでいいわ。近しい人はみんな私の事をそう呼ぶの。それで、その……私に勝ったから、その……」
「あ、妻になるって話ですか?」
「! そ、そうよ。それで……」
「いえ、深く考えなくていいですよ。結婚は、恋愛してするものですから。俺、特にそういったものを求めていませんから」
先ほど王様から、決闘して勝利したものが姫を嫁に出来る、というものは今でも通用するルールであるらしいのだが、その時王様に俺は言ったのだ。
結婚はお互いが愛し合ってするべきだと。
確かに美少女でドSだが、倒されたからといってその男の花嫁にさせるのは、その女の子が可哀想な気もするのだ。
いざ自分の立場になってしまうと、俺はそう考えてしまったのだが……。
そこで、そう告げたシャルロッテが顔を赤くしてプルプルと震えて、
「あ、あんたも、もっとお淑やかな子の方がいいっていうんでしょう!」
「え? いえ、そういうわけでは……」
「い、いいわよ! 私だって、ま、まだあんたの事なんて認めていないんだからぁあああ」
シャルロッテが俺の言葉にそう言って、涙目で走り去っていってしまった。
そして、残された俺はというと、
「え?」
「すごーいご主人様私も含めて二人も女の子ゲットです?」
「いや、違うだろう……シャルロッテのコンプレックスに俺、触ったのかな?」
俺は悪い事をしたような気持になっているとそこで、
「……よし、私はこの状況を楽しもう」
剣の精霊イクスはそんな薄情なことを言っていたが、俺にはよく分からなかったのだった。
次の日。
俺は王様達からお金などを貰い旅立つことになった。
防具類は重くて使えないのでお断りした。
身体能力強化の魔法の使い方がよく分からないからだ。
剣の精霊イクスに聞いても、
「私が魔法の使い方なんて知るわけないじゃないですか~、やだな~ ご主人様は」
と流されてしまった。
これはこれでどうなんだろうと思いつつも、城下町でとりあえずは装備を整える事に。
そして城を出ようとした時俺は、呼び止められた。
「私もついていく」
「……シャルロッテ姫。お姫様に怪我をさせたら俺、困ります」
「自分の身ぐらい守れるわ」
「でも普通の服に見えます」
「布に防御の魔法がかかっているので十分なのよ。剣だって二本持ったし」
「一本はこの前俺が折ったものでは?」
「……お気に入りなのよ」
そう返すシャルロッテ姫。
けれど俺はこの城にお姫様は置いていきたかったのだが、王様によろしくと言われてしまった。しかも、シャルロッテが、
「この世界について貴方は良く知らないんでしょう? だったら私の知識が役に立つと思うけれど」
「だが……」
「“嫁”を信用してよね」
「いや、あの“嫁”の件は……」
だが俺の話など、シャルロッテは聞いていないようだった。
もうどうにでもなれと俺は思って、こうして俺は旅だったのだった。
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