それは本当の決まりです
戻ってきたその人達は、どうやらこの城の王様たちであるらしい。
つまり先ほど倒した姫の父などだ。
その父親と思われるやけに着飾った、頭に冠を被った偉そうな男性が俺達の様子を見ていた騎士達に、
「これはいったいどういう事で?」
「はい、実は姫の浴場に男が侵入し、姫が“決闘”を行いました」
「なんと! ……もしや、異世界からいらした勇者様なのでは!」
「ええ!」
「あの剣は勇者の剣。宝物庫に大切にしまわれたものであったのに、何故かの者の手にあるのか?」
「それが姫と戦闘中に、突然彼の手に現れまして」
「選ばれし勇者……それ故に、剣自らかの者の手に渡ったというのか」
といった話を感慨深げに話している王様達だが、とりあえず俺はその勇者の剣の精霊? に、
「俺が勇者だから、現れたのか?」
「いえ、勇者が来ないな~、まあいっか寝ようと寝ていたら、そこで魔力を注入されて私は目が覚めただけですので、勇者様の手に飛び込んでいくことはありませんね」
「じゃあそれが俺の特殊能力なのか?」
といった話を俺達はこそこそしつつ、先ほど倒してしまった姫を抱き上げる。
上半身抱き起して息を確認する。
一応は大丈夫そうだ、そう俺が確認するとそこで、姫に似ているがもう少し幼い少女が俺の前にやってくる。
大人しそうな雰囲気。
けれどこの姫によく似ている。
そういえば先ほど倒したこの姫の名前を聞いていなかったと、今更ながら思い出した。
そこで、この大人しい少女が、ギュっと俺に抱きついてくる。
「え?」
「……予知の巫女、レフィスが告げます。この方はいずれ魔王を倒す勇者様です」
厳かな声で告げた彼女。
周りが一瞬静まり返り、そして、王様が、
「やはり勇者様か! ようやく、ようやく悲願の勇者がここに! 今日は宴じゃ!」
「「おおー!」」
そんな歓声が上がる中、王様が近づいてきて俺に、
「して、勇者様はどうしてわが娘、シャルロッテと決闘などという事態に?」
「いえ、その浴場に落ちてしまいその、シャルロッテ……様のそれを目撃してしまい、初めは暗殺者だと思われたのですがどうも違うらしい、と分かって頂けたのですが……見てしまったので、決闘を受けて勝利しないと、処刑だと」
「そんな時代錯誤な。古い時代のどこかの国ではそういったこともありましたがそれはないですね。普通に牢屋行きです」
「……そういえば時代錯誤な、と答えたら、逆に疑われてしまいました。もしやこちらの世界の常識を口にしたから俺は疑われたと?」
そもそも話す言語まで同じなのだから、更に嘘をついている怪しい人物のようにシャルロッテは感じてしまったのかもしれないと、今更ながら俺は気づく。
だがこの決闘自体も、どうやら時代錯誤のようだと俺は思いながら、
「でもこの決闘に勝利したら、嫁になるとかシャルロッテ姫は言っていたのでどうしようかと思っていたのですが、それはも嘘で安心しました」
「あ、いえ、それは本当の決まりです」
王様がさらっと俺の言葉を否定した。
だがそれはつまり、
「え、え?」
「本当の決まりです」
王様は、冗談を言っている風ではなく、そう俺に告げたのだった。
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