目的の一部達成
危機を感じ取った。
予感に近いものだ。
だから俺は、目の前に自身の特殊能力を使った。
ずっと小さな音がして俺達に向かってその体が腕のように伸びた。
三本ほど。
そしてそれらは後ろに突き抜けたがすぐに、俺達めがけて戻ってくるように動く。
間に合わない!
背後に現れたその鋭利なとげの形をしたそれに串刺しにされる、その恐怖を感じていた所で、銀色の何かが視界を覆った。
よく見るとユキナの腰ポケットから銀色の線のようなものが出てきてそれのお陰で防がれたようだった。
助かったと思うと同時に俺は即座に、少しでも時間が稼げればっと思って能力を使う。
すべてを切り裂き細切れにして遠くへ!
そこでユキナの腰kじゃら出てきたその銀色のそれが小さく震えて何かを吹き飛ばしたらしかった。
おそらくはへばりついた魔王の残骸だろう。
案の定、黒い液状のものが結界の上に落ちている。
俺はすぐさまそのイクスの剣で切り付ける。
少量のかけらでも、この魔王を減らせるのには変わりがない。
そして倒してから俺は、まわりをみまわすと、もぞもぞと這うように魔王のかけらが集まっている。
以前の魔族の時のようにすぐにはくっつかない、否、くっつけないようだった。
だがそれぞれの魔力が大きいからすぐに動けないのかもしれない。
だがそれは俺達にとって好都合だ。
「周りに散らばっている“魔王”のかけらをつぶしてくれ」
「分かったわ、魔法よりも魔剣でそのまま切った方が速そうね」
「わ、私も打ち込みます」
シャロとユキナがそう言っているのを聞きながら、俺も走る一つずつ潰して少しでも相手をけずれればいいと思った。
だがしばらくしてから再び見上げると相変わらず異様な気配の“魔王”がいる。
また動く。
そう感じた俺は先ほどよりも遠くにそれを転送し、代わりに攻撃をしてきたこの“魔王”の目前までやってきて力を振り絞り、剣で切り付ける。
その時魔力を大量に入れたためか、
「ご主人様、力みすぎです!」
「だがこれはすぐに蹴りをつけないと、すぐに回復してしまうみたいだ!」
「く、仕方がありません。私、頑張ります!」
イクスの言葉に頼んだと俺は告げて再び切り込む。
一度の切込みでは途中までしか行かなかったが、そこそこ、かなりのダメージがいっているようだった。
感覚的十分の一程度減っているがすぐに回復しているのを感じる。
ならば俺達に攻撃するよりも早く、斬りつけるしかない。
無我夢中、そういうのが一番だろう。
たまたま部活でちょっとかじっただけの剣術も含めて役に立っていると思う。
無駄な経験はないのかもしれない。
そう思いながら攻撃をして、うめき声のようなものを聞いた。
同時に霧のように霧散していく黒いそれと、透明な今までで見たことも無い大きさの結晶だ。
最後は魔力でのごり押しになってしまったが、とりあえずは、
「勝利した、のか」
そう呟くと同時に緊張が途切れたのもあってか、力が抜けてしまう。
目の前も暗くなっていきそして……気を失ってしまう。
誰かが駆け寄ってくる音と声が聞こえたがもう何も分からない。
だが果たすべきことはしたと思う。
こうして俺は、女神に言われていた“魔王”を倒したのだった。




