決闘の武器は?
こうして俺は城の外にあるらしい闘技場? 練習場のような場所に連れてこられた。
そこで目の前の姫? が眉を寄せて俺を見た。
「……それ、何?」
「鉄……のような金属の棒です」
俺はそう答えた。
だが答えながら俺は絶望的な気持ちになる。
冷たい目で目の前のお姫様が見ているが、俺が選んだのは金属棒で、しかも中が空洞になっているものだ。
俺達の世界で言う、“鉄パイプ”のようなものが俺の手には握られていた。
実は俺自身も盾なり、剣なり、槍なりを選ぼうとした。だが、
「お、重い、何ですかこれ、重いですよ!」
「それは身体強化の魔法を使って持ち上げたりするんだ」
「身体強化の魔法って、どうやるのですか?」
そう問いかけた俺。
どうやらこの世界には“魔法”があるらしい。
そこで、この武器庫の案内人のクロは少し沈黙してから、
「ひょっとして本当にただの一般市民なのか? 魔法も使えないし」
「は、はい、おそらくは一般市民かと」
その俺の答えに武器庫のクロという人物はしばらく沈黙してから、俺の肩を叩き、
「まあ、頑張れ。人生にはそういったこともある」
「え! いや……」
「まあ、姫様も鬼じゃないから、ちょっと痛い目に合わせて牢屋にぶち込んで、侵入経路を吐かせられるだけで済むだろう」
「え、ええ!」
「とまあ、それでも一応武器は選んでおいた方がいいな。軽い武器……そういえば、使いかけの金属パイプがあったような。確かあれは軽かったはずだな」
というわけで俺は、それを選ばさせられてしまったのである。
ちなみに目の前の姫の服装は、スカートの短いドレスを着ているのみで、一本細身の剣を持っているのみだ。
防御が手薄い感じがするのだがそこで、
「よほど魔法に自信があるようね」
「い、いえ、俺は魔法なんて何も知らないです!」
「だったらなんでそんな獲物を持っているの?」
「身体強化の魔法が使えないので、こういった軽い武器? でないと持てなくて」
正直に答えると彼女は目を瞬かせて次に、
「そうやって一般人のふりをしてもダメよ。この城の警備がどの程度のものか私は良く知っている。あそこまで来れた時点で貴方は、“普通”じゃない。いいわ……こうなったら私が貴方の真価を、直接問うてあげるわ!」
等と言われて俺は彼女に襲い掛かられた。
はじめは剣で切り付けられていたが、昔やっていた、ドッジボール校内選手権の練習で延々と球をよけさせられたあの練習のおかげで俺は全ての攻撃をよけた。
そこでお姫様が、
「ちょこまかと……逃げるのはうまいわね。だったら、これでどう! “連火球”」
同時にいくつもの炎の塊が現れて俺に向かってくる。
魔法というものだろうが、一発その炎をこのパイプで受けたらパイプが溶けた。
こんな魔法に、武器で対抗なんてできない。
俺に魔法が使えたら、そう思った所で先ほどの攻撃で間合いを詰められてしまったらしく、姫が俺の目の前にいる。
そのお姫様は無表情で剣を振り上げて、切り殺される、な、何かこれに“対抗できる最適な武器”を、と俺は思った。
思っただけだった。
「! な、何!」
そこで俺の手にはいつの間にかパイプではなく、軽いが大きな剣が握られていた。
しかもその剣にはめ込まれた赤い石から、何かが出てきて、それが金髪碧眼の美少女だと認識したと同時に、俺の顔面に彼女の胸が当たった。
「ご主人様! ようやくお会いできましたね!」
嬉しそうに俺をそう呼び、抱きしめる。
新たな美少女の胸に顔をうずめているこの状況。
俺は今ようやくい世界に来て、良かったと思ったのだった。
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