服選びは大変
こうして俺は長い戦いを覚悟していると、その装置を覆った布の中から人影が一つ。
現れたその姿は、“イクス”に似ている。
似ているとしたのは髪の毛が長いからだった。
それだけでほんの少し印象が違う。
そこで目が合った。
イクスがにまっと笑って俺に駆け寄ってくる。
「ご主人様、どうですか?」
「ど、どうって可愛いとは思う」
「そうですか~、童貞くれるくらい?」
「……やらん」
「え~、そろそろ私も恋人欲しいのにな~」
「……随分エロ発言が多かったように思ったが、恋人が今までいない?」
「いませんよ~、そろいもそろって戦闘バカだったので」
イクスが暗い顔で呟いた、のだが。
「でもそれなら、こういった剣の精霊の男を探せば……」
「あいつら、私のご主人様たち以上に戦闘バカなので、下僕にしかなりませんでした。宝物庫に君臨する女王様って言われるのももう嫌ですし、そろそろご主人様に……」
「や、やめろ、何をする! だ、誰か助け……」
そこでイクスの背後にユキナとシャロが立ち、
「「抜け駆けは禁止って、私言ったよね」」
「……はい、いつもと反応が違うので押してみました。出来心だったので許してください」
イクスが平謝りしていた。
とりあえず俺は助かったようだがそこでシャロが、
「さて、イクスも準備が整ったし、服を買いに行こう。いいお店を知っているの!」
そうシャロが言い出したのだった。
さて、俺は現在彼女達に連れられて、とある店の前にきていた。
そこのお店は下着の専門店だったのでようやく解放されたといってもいい。
「1、2、3、4、5、6、7、8、9、10……両手で数えきれない」
そう俺は呟いてから、深く嘆息した。
先ほどから彼女達三人にどの服がいいかと言われ続けて見せられ続けたのだ。
確かに美少女たちの集団だったので見ている分には楽しかった。
はじめめのうちは。
ただ途中から、服のどの部分がそこまで違うのか分からなくなりかけて、どちらがいいのかと聞かれたりしたのは大変だった。
しかも枚数が多いし選ぶのが長い。
そして当然のことながら俺は、露出度の高いきわどいものなど頼むことは出来ずにいたが、
「ご主人様~、こういうのどうですか?」
「戻してきてください。お願いですから」
イクスが俺の二次元妄想さながらの服を持ってきて、俺は即座に戻すようお願いした。
あれは短いし透けているし穴も空いているし……流石にちょっとという風ではある。
だから俺は丁重にお断りをした。
しかもご主人様と呼ばれると周りの人眼が……。
「やっぱり、二次元と三次元は違うな。可愛いのはいいけれどきつい。しかもどれが一番シンイチローには可愛く見える? って全員聞いてくるし。男目線の可愛さを求めているのか?」
などと考えてみるが答えは出ない。
というかそろそろ早くでて来てほしいと思う。
下着のお店の前で待つのはちょっとそろそろきつい。
そう思っているとようやく三人が出てきた。
かがやくばかりの笑顔な彼女達を見て、可愛いなとは思いはしたが疲れた。
そこでユキナが、
「とりあえず一通り服も購入したし、皆で少し散歩に行かない? シンイチローもつれて」
「「賛成!」」
なぜかそのような話に。
どうしてそうなった、そう俺は思わざる負えなかったのだがそこで……ぷつっと、何かの糸が切れるような音がしたのだった。




