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とりつく人形

 突然肉体を作ってあげようかと言われたイクスは目を瞬かせて、


「体、ですか?」

「うん、それで色々な服を着たりするの。楽しいですよ。その村の精霊様も喜んでいましたし」

「でも私の場合はすっごく強いから、普通に触れたり肉体的な意味でも、大丈夫なんですよね」

「服も着替えたりとかもできるの?」

「一応は変えたりもできますが、うーん、でも肉体を持つってどんな感覚何でしょう?」

「私が立ち寄った精霊様は、楽しいって言っていましたよ。ほとんど実体化できなかったらしくて」

「となると条件が違いますか。でも私の場合も変えられる服は制限がありますし肉体があった方が変化できていいかな?」

「ではやってみます?」

「やってみます」


 との事でイクスの肉体というか人形を、作成することになった。

 精霊が人間の女の子に。

 物語だとハーレム要員になりそうだなと思った。


 そこでシャロが、


「これしか手に入らなかった」

「そ、そうなのか。でもまあ、シャロも皆も怪我がなくてよかった」

「……そうね。歴代勇者とその周りも死にかけるし死ぬしで、次々と代わりが必要になったりしたから」

「……今回どうしてこんなことになったんだろうな」

「分からない。案外、あたりを引いたのか、もう後がないから女神様が相当頑張ったのか」


 シャロがそう呟くのを聞きながら、あのバスで出てきた女神様がそこまで考えているのかという疑惑が俺に浮かび上がる。

 だが人……女神を見かけで判断してはいけない。

 さて、そんなこんなで俺達は宿に戻った。


「ミチル、さっきは助かった」

「おいよ。それで何に使ったんだ? あれ」

「“魔族”が斬りつけたら分裂したんだ。だからあれを使って移動を制限して叩いていった」

「あー、面倒くさい敵に引っかかったな。それでその“魔物探知レーダー”はどうだった? 性能は」

「幾つか分からない点はあるが“魔族”は現れたからいいんじゃないのか? 間違いもいくつかあるかもしれないが、とりあえずは目的は果たせた。……ただそうなると一つ問題があるんだよな」


 そう思いながらユキナ達を見ると、サヨたちと一緒にミナという少女にかまっている。

 ほのぼのする光景ではあるが、話を俺は戻して、


「ここの町の上空に、将来的に強力な“魔族”が生まれる可能性がある、という事だ。それも“魔王”が」

「被害が凄く出そうだな。人のいる場所に出現か」

「ああ、だがこのレーダーを参考にして事前に人だけは避難させることもできるし、町に関しては、一応はミチルの力でどうにか修復できる」

「確かに」

「そして俺は“魔王”を倒すために連れてこられたから、その“魔王”を倒せばクラスメイトの捜索に手が出せる。そうしないと元の世界に戻れないからな」


 現状では“魔族”が危険すぎるので大体の敵を倒してしまわないとどうにもならない。

 目にした瞬間、“邪悪”だと感じる怪物。

 まさかそんな存在にお目にかかるとは思わなかった。


 そう思った所でユキナが、


「よし、できたわ!」


 何やら大きな装置を作り上げたのだった。


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