時間稼ぎ
切ったその“魔族”は幾つもに分裂し、小さな人型の人形のようになる。
まさか一度に攻撃して消滅させないと延々と分裂していくのだろうか?
そう思ってみていると、特に小さい破片は破片同士がくっついて、大きな形になっていく。
ある一定の大きさはあの物体を維持するのに必要であるらしい。
となると、
「地味な作業だが細切れにしていくか、後は一つづつ潰して核のようなものを探すか」
以前の“魔族”は核のようなものが一つあった。
そう考えるとこの中に“親玉”と呼ぶべき存在がいることになる。
それをたたき潰せば終わり、になるはずだが……そこでイクスが。
「シンイチロー、どれかを倒せば終わりと楽観視していますが、多分違います」
「どういうことだ?」
「昔であったこのタイプの“魔族”は全てが本体と化するように分裂していました。その分こちらへの攻撃能力は下がりますが、それでも“魔族”です。各々の攻撃は強く、集団で攻撃されて……結果は凄惨たるものでした」
遠くを見るように告げるイクス。
昔、共に戦った仲間の事を思い出しているのだろうか?
イクスがそう告げてからすぐに、
「というわけでご主人様、全部の個体を倒さないといけないです」
「それで弱まるといって、どれくらいの強さにになるんだ」
「一体一帯がそこそこ強い魔物になるくらいでしょうか? なのでこのタイプの方が、初めに一撃を与えた後、人数沢山タコ殴りという人の数と力技で押し切れるので、被害は少ないのですが……今はそのどちらもありませんね」
「しかも人数が少なくて力業タイプだから、きついな。まずは、近づいてくるのを一個一個倒しながら……シャロ、ユキナ、近づいた相手を適当に倒すか弱体化させて自分の身だけは守っておいてくれ。それと……そうだ、ユキナ、あの魔物を捕らえる柵のようなものは、どれぐらいの凶悪な魔物に対抗できる!」
俺がそう問いかけるとすぐにユキナの答えが返ってきた。
「ちょ、ちょっと強めだと、何回か体当たりして壊れる感じかな。ドラゴンだと、足に引っかかったみたいな効果しかないみたい」
「イクス、この一体はドラゴンよりも強いのか?」
「さすがにドラゴンよりは弱いですよ。強いですが」
「……時間稼ぎにはなるか。ユキナ、その強めの柵は量産がある程度できるようなものか?」
「う、うん、売っているから、高いけれど」
「持っているか、今!」
「あ、あるよ、これ!」
そこで現れたのは青い棒のようなものだった。
長さも結構長い。
それがユキナの謎のバッグから出てきたのはいいとして。
俺はすぐさま、自身の特殊能力“合わせ鏡”を使い、元の宿に少しつなぎ、
「ミチル、ミチルはいるか!」
『どうしたんだ、シンイチロー』
「今すぐ量産を頼みたい。大量に必要だ」
『分かった、でもものによるぞ。どれくらいだ? すぐ必要なのか?』
「すぐだ。出来れば数百、物はこれだ、受け取ってほしい」
『……これか、前に使った事があるな。……よし、まずは数十本、出来次第送ってく。扉を開いてくれ』
「戦闘中だから小さめにしておく」
『分かった』
そして瞬時に作れる物であったらしいそれを受け取って俺は、自身の特殊能力を再び使ったのだった。




