“敵”だと
ぱちぱちと何かがはじけて生み出されるような音がする。
この音を俺は知っている。
そして現れてくる気配も。
「な、何これ!」
悲鳴に近い声を上げるユキナ。
きっと俺と同じ感覚を味わっているのだろう。
怖気を誘うそれは、本能的に悟っているのだろうか?
“敵”だと。
黒くのっぺりとしたマネキンのような無機質なそれ。
いまにも切りかかりたい気持ちになりながら俺は、ユキナに、
「出現の%は幾つだ!? あれは“魔族”だ!」
「あれが! え、えっと……100%になっている! さっきまで96%だったのに!」
「一気に出現率は変化しやすいのか、後は特定の%まで行くといつ出現してもおかしくなくなるのかもしれない。イクス、準備だ」
ユキナにそう答えながら、俺は剣を取り出した。
“魔族”と戦うにはこの剣の威力はもってこいだ。
今回はどんな能力を持った魔族なのだろうか?
そう思って警戒して様子を見る。
一応は、俺の能力“合わせ鏡”を全面に展開。
場所が分かるように今回はうっすらと黄色い光を生じさせる。
色は適当だが、相手側からあまり気づきにくい色がいいだろうと思い、明るい時間である今は黄色にした。
後ろの様子も見ながら俺はその能力を使ったが、とりあえずは声をかけておく。
「今、俺の能力で全面の攻撃を後ろに転送する。だからその光の壁の後ろに立たないようにしてくれ」
「分かったわ」
「そ、そうなんだ、なるほど……」
シャロが勢いよく答えて、ユキナが頷く。
そして目の前の“魔族”に俺は警戒を移す。
今度はどんな攻撃をしてくるだろうか?
シャロの魔法は援護になるが、ユキナは自分の身を守る魔道具があるとはいえ、敵をせん滅するようなものとなると……。
「ユキナは、戦闘用の魔道具は、どんなものがある?」
「ま、魔物。小型の魔物の集団を倒すような、火炎放射器の類が中心だったかも。今回もそれでいいかと思ってそれを持ってきちゃって……でも、アレに近づくのはちょっと……誘導型のミサイルのような物でも作れるかな」
「作ろうとするとどれくらいかかる?」
「み、見てみる……1時間強」
「時間がないな。今回は防御に専念してくれ。まさか突然現れるとは思わなかったからな……一日で1%だし、間違っているのかもと思っていたし」
本当は今日はそこまで戦闘をするつもりはなかったのだ。
少なくとも俺は大丈夫だろうと安心しきっていた。
楽観視していたのだろうか?
違う。
俺が、“そうであったらいい”と思っていたから、自分に都合の良い結果を期待して、準備を怠ったのだ。
自分自身のミスを痛切に俺は感じる。
だが後悔はこの現状を乗り越えてからだ。
まずは目の前の敵を倒すのみ。
そこで、ふっと風が渦巻く。
たまたま風が吹いたのか、初めは俺はそう思ったが、その小さく渦巻いた風が、突如とぐろを巻く蛇のように渦巻き始める。
焦る間もなく、それは俺達の方に打ち込まれて……後部に転送される。
“魔族”はそれが効果がないのを見て次々と俺達に魔法を打ち込む。
けれど後ろの方にその魔法は転送され、背後の森が大きな音を立てて蹂躙されている。
ただ受け流すだけなのも被害は大きいか、何かいい方法はないか、そう俺は考えながらもそこで攻撃がやむ。
「イクス! 行くぞ!」
「はーい。風ですから……普通に硬度強化で金属系で行きますか」
そう言うとともに剣が変形する。
そして俺は目の前に即座に、“魔族”のすぐそばに出入り口を作って飛びだすと共に出入り口を消失させる。
突如現れた俺に“魔族”は魔法を使えないようだった。
だからいっきに剣を振り下ろしてから、切り刻む。
ぼろぼろと地面に落ちていく黒い破片。
だが……この前とは違った。
ふつふつと泡立つように、小さな塊が膨れ上がって人のような形を作る。
「っ、増えた!?」
予想外の動きに俺は、舌打ちしたのだった。




