姫様も鬼じゃないから大丈夫だと思うぞ
こうして俺は、決闘をすることになった。
いやいや、決闘って何だというか、
「も、もう少し穏便な方法は無理ですか?」
「どんな?」
「じゃんけんとか、カードゲームとか」
「じゃんけん? 何それ。でも今の話から知るとカードゲームみたいな、武器を交えて戦わない方法のようね……却下よ」
「そんな……」
「それとも、今すぐこの場で……」
「け、決闘を受けます!」
首にあてられたナイフ? のようなものに力が入った気がして俺は、決闘を受けると答えた。
ここでやられるよりは、とりあえずそれを受けた方が良さそうだし。
そう俺は思って答えたのだが……そこでナイフのようなものが無くなり、そして襟首をつかんでいた手が離される。
今なら逃げられるのでは、と俺は思ったのだが、そこで後ろにいるらしい彼女が、
「逃げようなんて思わない事ね。もしそのようなそぶりを見せたならその瞬間、消し炭よ!」
「はい!」
俺は、今すぐ元の世界に戻りたいと思いながら、そう答えたのだった。
こうして俺は、決闘を受けさせられる羽目になった。
だが本物の武器の扱い何て俺は知らない。
そもそも俺の世界と同じだとすると、あれは金属の塊のようなものと考えられる。
そんなものを振り回せるのか? といった疑問がある。
そこでドレスを着た先ほどの姫が俺に、
「ここが武器庫よ。好きなものを選んで」
「好きなもの?」
「そう、丸腰の貴方を叩きのめすなり、魔法で吹き飛ばしてもいいけれど、それだったらただの人形でもいいわけでしょう?」
嗤う彼女の顔を見ながら俺は、要するに彼女は“抵抗”が無いとつまらないと暗に言っているのだろうと推測する。
なんて恐ろしい子なんだ、美少女なのに……残念だと俺が思っているとそこで、
「今日はお父様たちが留守でよかったわ」
「え?」
「なんでもないわ。それに召喚された“勇者”なら、私に勝つくらいでないとね」
何処かうきうきとしたような声で、姫が言う。
俺、これからどうなってしまうのだろうとおもっていると、
「武器の番人がいたわね。クロ、いる?」
「あ、はーい、姫様、何でしょう」
「こいつに武器を上げて。決闘をするから」
「……王様たちの許可は」
「今は私がこの城の主」
「……分かりました。じゃあ案内するよ」
そこでクロと呼ばれたこの武器庫の管理をしている兵士、20代くらいの若い彼に俺は案内される。
姫は入り口付近で待っているらしい。
逃げないように、なのだろうか?
そこでクロという人が、
「しかしどうして決闘という話になったんだい?」
「いえ、その、入浴しているお姫様の裸を目撃してしまって」
俺がそう正直に答えると彼は少し黙ってから、
「何で姫様のお風呂を覗いたんだ? この国である程度強い奴は皆、姫様から逃げているというのに」
「そうなのですか?」
「あー、異国から来た人なのか。まあ、姫様も鬼じゃないから大丈夫だと思うぞ、頑張れ」
「あの、あのお姫様はそんなに強いのですか?」
「姫騎士と呼ばれているくらい強いぞ」
そのクロの言葉に俺は“く、ころ”という単語が俺の中で浮かび上がりながら、俺は諦めて武器を探したのだった。
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