転送能力を使ってみるが
勇者の剣は変形するらしい。
普通の銀色の飾り気のない刀身であったはずなのに、幾つもの波紋のように青い光が生じて、そこから青い線が文様を作っていく。
それが結晶化したように刀身に張り付く。
同時に、剣から小さな冷気を感じてしまう。
どうやら俺の魔力を使った魔法が発動しているらしい。
この武器で叩き潰せばいい、恐怖と隣合わせの高揚感に俺は苛まれながら、俺は剣を持つ手に力を込める。
そして敵に向かって駆け出しながら、
「シャロ、援護をよろしく!」
「わ、わかったわ!」
そう言ってシャロに魔法を援護してもらう。
後ろから氷の塊が次々と浮かんで飛んで行くのを見ながら俺は走る。
それらの氷はその魔族に触れるとともに瞬時に消さるのはいつものこと。
俺は今は、攻撃をするために転送の魔法は使っていない。
ここで炎の魔法を使うと同時に瞬時にそれを使うしか無い。
でないと俺が巻き込まれる。
この俺の特殊能力は確かに転送には便利だが下手をすると空間を切り裂くために、物体が恐ろしく綺麗な断面で分断されてしまう。
それが俺自身の体に起こるのはゾッとしない。
けれど何とか上手くいったとしても、いきなり接近して攻撃を食らう瞬間もう一度転送の魔法を、なんて器用に出来る自信が俺にはない。
この転送の魔法自体がどこまでの範囲を意図して使えるのかが分からない。
空間転移の範囲が見えない、それが現状の俺の能力の問題点である。
とは言え近づけば近づくに連れて、相手の攻撃に対する反射のレスポンスが短くないといけなくなる。
それだけ危険ではあるのだが、それなら、
「一度斬りつける前に、空間転移を使った2つ程度にあれを分断する」
そうすれば攻撃力は弱まるだろうか?
思考は一瞬、行動はその直後、0.001秒。
ずっと音を立てるように魔族のからが横に滑り落ちる。
だが、それだけだった。
空間転移はそのままでは空間と空間が接続したままであるので肉体に変化がないのかもしれない。
そうなってくると、分断するにはそのそれまでの空間と“再接続”を行う必要があるのか?
確かに俺は物で練習した時、ずれたな、これで魔法をもとに戻してと特に意識せずにやっていた気がする。
つまり空間操作の転移では、その魔法が発動している状態ではその物体が俺の視覚上でずれているように見えても、その断面ではつながっている状態なのだ。
視覚だけで物事を考えてしまった俺が間違っていたのだ。
そう思って俺は空間の接続を、元の空間に行う。
プツッとこの魔族の肉体は切れたようだが、特に動じる様子もなく、ぬるりと元の姿に戻ってしまう。
この魔族は“物体”としての存在ではないのかもしれない。
それ故に魔力を帯びた剣で攻撃、魔法で攻撃が主体となるのだろうか?
「確かに直接魔法を叩き込んだほうが攻撃としては最適か。外れるリスクを考えるよりは……とは言え俺の肉体が危険な気もするがっと」
俺はそこで炎の攻撃を広報に転送する。
魔族は目前にまで迫っている。
そしてそこで俺は飛び上がり、その魔族に向かって剣を脳天から地面まで、一気に振り下ろしたのだった。
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