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不気味な予兆

 不気味な予兆。

 今まで経験したことのない“悪意”を俺は感じた。

 平和な日本、平和ボケが動向といった話を聞いたことが有るが、いざ危機を感じるとこれでもかというかのように神経が研ぎ澄まされていく。


 それは突如として現れた。

 黒い人の等身大のマネキン、それも目も口も鼻も耳もない、人のような形のそれ。

 ゆらゆらと揺れる黒い霧のようなものを纏っていて、それには時折赤い炎が交じる。


 まるで何かの兵器であるかのような無機質な物を感じる。

 だが感じる気配は、この周辺、人も含めた全ての“死”だ。

 警戒心が俺の中で上がっていく、そこでシャロが、


「魔族……」


 言葉を失ったようにそう呟いた。

 つまりあれが俺がこの世界に召喚された原因であり、倒すべき相手……それの下の方の部類なのだろう。

 初めてのギルドの依頼でいきなり遭遇。

 

 しかも突如現れたというのは、俺と同じ転移能力を持っているのか?

 小さな疑問が浮かび上がるが、今はそれどころではないので後回しにする。

 シャロはすでに杖を構えて、


「“氷の轢”」


 杖を振ると、杖の青色の石が一瞬輝き、そこから現れた光の粒が瞬時に青い光の魔法陣に変化し、その少し離れた場所に俺の握りこぶしの3倍程度の氷の塊がいくつも現れる。


「“行け”」


 その言葉とともに氷は飛んでいくが、それらはその人形のような物にタルト瞬時に水となりぼたぼたと一部は液体に、大部分が水蒸気となり消失した。

 この世界の物理法則は、やや俺達の世界に似ているようだと俺は思いながら、そこで首の後ろあたりがざわりと総毛立つ。

 何かが、来る。


 周囲の空気の流れなのか、それが、恐ろしいほどに“静か”になったのだ。

 それは一瞬だった。

 魔族の前に彼の身長以上の直径が有る魔法陣が浮かび上がった。


 赤く煌々と輝く魔法陣が生み出されたその瞬間、俺は、無意識の内に特殊能力チートを使っていた。


「“合わせ鏡(チェンジ)”」


 手を前にして、何かに取り憑かれでもしたかのように焦燥感に包まれながら、目の前と、少し後方の空間を“接続”する。

 その俺の予感は当たっていた。

 ちかっと赤い魔法陣輝くと同時にその魔法陣など見えなくなるような赤く輝く炎の濁流が俺達に襲いかかる。


 だが、空間を切り取り、俺達の後方に流していく。

 熱はそこまで感じない程度に離れていたらしい。

 けれどその、もし失敗していたならと思うと、今更ながら冷や汗が出てくる。


 やがて炎が収まり、俺達が生きているのを見るとその魔族は、じっと観察するように動きを止める。

 だがすぐに再開するかもしれない。

 そう思いながら、俺は特殊能力チートを展開しつつシャロに、


「一度撤退して、援護を呼ぶか? こんな技をいきなり使ってくるとは思わなかったぞ? さっきの魔物とは大違いだ」

「あんな雑魚の魔物とは比べ物にならないわ。……でも援軍を呼べば、その分魔族への対抗が遅れて被害がひどくなる。しかも魔族は、時間を追うごとに強くなっていく」

「どうしてだ?」

「分からない、でも今までの経験上そうなっている。まさかいきなりこんなことになるなんてね。初陣で魔族は酷だけれど……期待しているわ、異世界の勇者様!」


 そう俺にシャロが告げる。

 そして勇者の剣も、


「いずれは戦わないといけない相手です。とりあえず攻撃は先ほどの方法で受け流せますので……一回くらいは切りつけましょう。私も久しぶりで体がなまっているといけませんしね」

「分かった、それでどうする?」

「とりあえず今回の魔族は炎の属性のようなので、剣の“属性(モード)”をシンイチローの魔力を吸収して変換します」

「分かった」


 それと同時に俺の握る剣が碧く輝き、変形したのだった。


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