ギルドへの道、俺は今朝の出来事を思い出していた
ギルドへの道を歩いている俺は、今朝の事を思い出していた。
実は今朝、目を覚ますと俺は、何故かベッドに寝ていた。
そして目の前では、シャロが無邪気な寝息を立てている。
こうしてみると美人が際立つなと思いはしたが、そこで俺は気づいた。
「おかしい。俺はソファで寝ていたはずなのに何でベッドに寝ているだ」
疑問を呈してみたが答える者はいない。
いや、一人いる。
先ほどから俺達の様子を上空から楽しそうに覗いている勇者の剣の精霊、イクスだ。
そのニマニマした感じが俺には危険を感じてしまう。
そこでシャロが小さく呻いた。
起きたのだろうか?
いや、起きる前にこの状況を打開するにはどうすればいいのか?」
「考えている暇はない。即行動に移すべき……え?」
そこでシャロがもう一度小さく呻いてから俺に抱きついてくる。
それはもう、ギュっと、大切なものを抱きしめるかのように。
女の子のいい匂いがして、でもそんなもの感じている場合じゃないと俺はあせるが、どうすればいいのか分からない。
状況が状況だけに、以前よりは、こう抱きつかれた時には感じる余裕がなかったが、柔らかいその感覚がっ。
しかも顔をぐりぐりとこすりつけてくるシャロが……お、俺はどうすればいいのか。
抱きしめられていて動く事すらできない。
そこでそれまで様子を見ていた剣の精霊イクスが俺に、
「ご主人様、そのまま、れっつ、ごーです!」
「俺をどこに行かせる気だ!」
「ん? 3P?」
「きわどい発言をするなぁああああ」
この剣の精霊は美少女なのに中身が親父だ。
うぶな男子高校生を弄ぶ悪魔なのだ!
などと俺が焦燥感に包まれているとそこでシャロが目を開ける。
終わった、俺のすべてが……そう俺が思っていると、シャロが微笑み、
「シンイチロー、おはよう」
「オハヨウゴザイマス」
「どうしたの? 顔色が悪いけれど」
「イエ、イツノマニオレハベッドニハイリコンダノデショウカ」
「え? えーと、気持ち良さそうにソファで寝ていたから、私がベッドに引きずり込んだの」
「……」
「どうしたの?」
「いえ、なんでもありません」
どうやら俺は自分から入り込んだわけではないらしい。
良かった、よかった……やはり修学旅行に行くと眠れずにいて、ここにきてこれだ。
疲れがたまっていたのだろうと思っているシャロが、
「何かしようと思ったけれど、あまりにも熟睡しているからしばらく寝顔を見ていて……そのまま寝ることにしたわ」
「アリガトウゴザイマス」
俺はそう答えたのだった。
それから、ミチル達と先ほどの話をしながら食事をとり、俺とシャロはギルドに向かう。
朝一番に来たが、人はそこそこいるが、身体強化の魔法を教えてくれたあのおっさんはいない。
朝一番からここに入りびたりお酒を飲むような人ではないのだろう。
「人は見かけで判断しちゃいけないな」
「? どうしたの?」
「いや、あの親切な人はいないなと思って」
「……シンイチローは私に素直に魔法を教わっていればいいの」
むっとしたようにシャロは言うが、なんで不機嫌になるのかが俺にはわからなかった。
そうして、依頼を一つ受けてみることに。
この世界の魔物がどんなものか分からないので、それを選択する。
それからこのギルドの売店で周辺の地図を買う。
正確に測量された地図をお願いしますというとこれだそうだ。
「そんな地図を買ってどうするの?」
「こういったものを参考に、俺の能力が使えないかと思って。その方が場所がイメージしやすいからな。……ここか」
そこで俺は地図から、今回の依頼の場所を探し当てたのだった。