身体強化の魔法
それから俺は様々な測定をさせられた。
まずは魔力による身体強化なしで体力測定だった。
そこそこ大きな数種類のダンベルに紐のようなものがつけられていて、それで体力を測定するらしい。
また、ギルドの上の階でハムスターがカラカラと回すアレの人間版のようなものを走らされたり、回避能力を見るためにボールをどれくらいの割合でよけたりするのか、等が測られる。
ちなみにシャロはすでにギルドカードをもっているため、こういった測定は必要ないらしい。
羨ましい話だと思いながらそれらの測定を終えた俺。
だが、それで終わりではなかった。
謎のカードを引く検査やら、よく分からない検査を幾つもされた。
他にも身長などの測定、髪の色や目の色なども登録されてしまったらしい。
だがその回るだけでも一苦労なそれをクリアすると、ようやくギルドカードが発行になった。
初心者であるらしい、ギルドのマスコットキャラクターである“ギルド”ちゃんが、“初心者冒険者”といった看板を持っている絵が描かれた、ギルドカード。
銀色のそれには他に、名前と、赤く薄い石がICカードのように埋め込まれている。
これは俺達の世界の身分証明書だなと俺が思いつつ受け取る。
なくした場合は、すぐに連絡してくれ、再発行は……といった説明を聞きながらそれを受け取った。
「とりあえずこれは大切なものだから……ポケットに入れておいて、次はどうしようか」
「そうだな、武器かな」
といった話をシャロとしているとそこで、ギルドの一回の一部でやっている酒場のムキムキなおやっさんみたいな人が、
「よう、坊主。こんな子供がギルドに何の用だ?」
「ギルドカードを登録したところです」
「なるほど、冒険者か。だが子供には荷が重いんじゃないのか?」
それにシャロが向きになって言い返そうとするがそこで、そのおっさんが、
「ギルドで普通に冒険者をやっていけるかどうか俺が見てやる。まずは身体強化だからだを強化してみろ」
と、挑発されたのだが俺は、
「あの、俺、そういったものは知らなくて」
「? 冒険者目指すならまず一番初めに覚えるものだろうが。というか冒険者じゃなくても学んだりするだろう?」
「いえ、俺はその……そういったものは教えてもらっていなくて」
それはそうだ。
ここに突然チート付きで放り出されたのだから。
それでどうしろと?
なので俺は正直に答えるとおっさんが痛ましそうに俺を見て、
「そうかそうか……坊主も苦労していたんだな」
「え? いえ、俺は……」
「いや、言わなくていい。よし、この俺様が身体強化の魔法を教えてやるぜ!」
「いいのですか?」
「もちろんだ! 今から教えてやる、そんな難しいものではないからな!」
「ありがとうございます!」
こうして謎のおっさんに教えてもらう事になった俺。
そんな俺はシャロが背後で小さな声で、
「あ、あの、身体強化は私が……」
と言っているのを俺は聞き逃したのだった。
「ありがとうございます、師匠!」
「よせや、恥ずかしいじゃないか」
「ですがこの身体強化の師匠であることには変わりありません。お礼にお酒をおごらせてください」
「そうか? 分かった」
というわけでおっさんにお酒をおごることに。
話を聞くと、ああやって挑発して冒険者としてやっていけそうなのかを見るのが趣味であるらしい。
なんでも昔、適性のない友人が冒険者を目指して大怪我をしたのが衝撃的で、あれ以来何で俺は止めなかったんだという思いにさいなまれてこういった活動をしているらしい。
実はいい人だったようだ。
こうして別れた俺は、シャロの待つ場所に戻ったが……シャロが頬を膨らましている。
どうも機嫌が悪いらしい。
俺、何かやったかなと真剣に考えるが、何も思い当たらない。
そこで半眼で俺を見たシャロが一言。
「武器を見に行くわよ」
そう言って俺の手を握り、シャロは歩きだったのだった。
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