剣を修復できますか?
どうやら俺の特殊能力は、時空操作とかいうものらしい。
しかし、この“特殊能力”のチートはいいのだが、
「……何故あえてそれっぽい単語にルビを振った」
「特殊能力っぽいよな。合わせ鏡? あれだろう? 無限に続いていくというか空間が繋がっていくからそれっぽいと言えそうだが……“チェンジ”か」
「……やめろ、口に出すな、ミチル」
「まあいいじゃないか。俺なんて“小さな世界”だぞ? 見た目でなく能力で考えよう。食べ物以外の“物”は何でも作り出せる、凄いいい能力だ。……魔道具作成とかそういう形じゃないと戦闘には役に立たなかったがな。ま、格好悪い俺にはお似合いだな」
どこか遠くを見るようにミチルが呟く。
するとサヨが、
「そんなこと無いよ! その能力すごく素敵だと思う。それに私、そんな能力がなくたってミチルは格好いいよ! 何度も私を助けてくれたし」
「サヨ……」
どことなく頬を赤らめているような二人。
こ、これは……と思った俺は、じっとその様子を見つめた。
<Θ><Θ>
だがこの二人は気づいていないらしい。
とりあえずシャロがこの目の前のジュースをおいしそうに飲んでいるので、俺も飲むことに。
程よい酸味と甘味が魅力的な味だ。
そう思って飲んでいた俺はそこで、いつの間にか現れた幼女に気づく。
水色の髪に赤い瞳の可愛い子どもで、6歳くらいだろうか?
彼女は俺の視線に気づくと、
「パパとママのおともだち?」
「? 誰だ?」
そう言うと幼女が、サヨとミチルを指差して、
「パパとママ」
「……おめでとう」
俺はそんな言葉しか出せなかった。
だがそれに慌てたようにサヨが、
「ち、違うの。この小道に迷って魔物に襲われそうになったのを保護したんだけれど、名前しか覚えていなくて、私達が保護したの」
「そうなのか? そうか、うん」
俺が微妙な反応をしていると、サヨが幼女に、
「だ、だから違うの。ミナちゃん、私の事はサヨお姉ちゃんて……」
「ママじゃだめ?」
幼女ミナが悲しそうに告げると、サヨがギュッと抱きしめて、
「うんうん、いいよいいよ」
と答えていた。
その様子を見ていたミチルが俺にこそっと、
「サヨは子供が大好きでな。将来は幼稚園の保母さんになりたいそうだ」
「そうだったのか……」
「とは言え預かっているだけで、しかもこの町にいるのはこの子がこの町に至る道で拾ったからなんだ。だからそういった意味で俺達はここを離れられない面もある」
「なるほど、ということは俺が魔王退治に向かった場所で装具したクラスメイトをここに転送するか? この力で」
「それだ。というかここを拠点に旅をしたらどうだ? 食事もできるし治療もできるし武器も手に入るし」
「確かにい方法だな。そしてお金が足りなくなったらギルドの依頼を受けて……となるとギルドカードを作っておいたほうがいいか」
そういった話になり、シャロに頼んでまずはギルドカードを作ることになった。
それから武器を探そうという話になり、ジュースを飲み干して俺達はこの場を後にしようとしたのだがそこでサヨが、
「あれ? その剣もしかして折れている? 変な形だし」
「ああ、愛剣をシンイチローに真っ二つにされてしまったんだ」
「じゃあギルドに行って戻ってくる間に直しておく?」
「! できるの!」
「うん、私の能力“完結水槽”は、どんなものでも人でも動物でも修復できるんだよ、短時間で」
「お、お願いしたいわ、ぜひ!」
「はい、じゃあこの剣はお預かりですね」
そう言ってサヨがシャロから剣を預かったのだった。
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