特殊能力(チート)が判明
宿の中はそこそこ広いが、今は食堂には人はいないようだった。
そこで食堂のカウンターの反対側、つまり調理場にいた男が、
「おーい、主人。その二人……ぎゃああああああ」
そこでシャロを見た彼が悲鳴を上げてカウンターに隠れた。
あの視線の方向から考えるに、俺ではなくシャロを見て悲鳴を上げたようだ。
カウンターの下半分に潜ったままでてこない彼のただならぬ様子に俺は、
「何をやったんだ?」
「いや、優れた料理人は自分で材料を取ってくるので、こう、戦闘能力も高いので挑戦を……」
カウンター越しに怯えたように震える料理人。
シャロは一体今まで何をやっていたのだろうというか、あの“決闘”みたいなことをやっていたのだろうなと俺は思っているとそこで、ミチルが、
「おーい、おやっさん。とりあえず俺と同じ世界の人物が今、一人見つかった」
「そうなんですか……なるほど、服装がよくにていますね。ですが私はそこにいる姫の顔を見ると体が凍りつくので、隠れながら料理を出しますね」
「あー、とりあえずは今は飲み物だけでいい。もしかしたなら用事もあるかもしれないし」
「分かりました。では、“オドセドの実”の飲み物をご用意します」
といった会話をしてから俺達は、カウンターから腕だけを出して飲み物がおかれたのでそれをもらい、席に着く。
話を切り出したのはミチルの方だった。
「さて、他のクラスメイトだが俺は今の所、サヨ以外に会えていない」
「そうなのか、先が思いやられるな」
「あ、いや、15人ほどの居場所は分かっている」
「……何で合流しないんだ?」
「俺にも生活があるのと散らばりすぎて接触できない状況だ。連絡を取るのも難しくてな」
「居場所も分かっているんじゃないのか?」
それにミチルが少し黙ってから、
「シンイチローは、もうギルドに行ったか?」
「いや? ギルド?」
「能力測定をして登録すると依頼が受けられて、こなすと報奨金が支払われる。ちなみにギルドカードは組合員として入るとお金は取られるが身分証の代わりになって重宝するぞ。ただ……ギルドの人には俺達はあまり歓迎されていない」
「なんでだ?」
「魔力測定の機械を壊すからだ。一番魔力の強そうなシンイチローは……まあ頑張れ。皆通った道だ」
という投げやりな答えが帰ってきた。
どうしろと言うんだと俺が思いつつミチルに、
「それで居場所不明の15人とギルドの話、何か関係があるのか?」
「いや、ただ単ギルドの人が、ここ最近、これでこの異常値出した人物がギルドで15人かって言っていたのを聞いただけなんだ」
「でもクラスメイトと限らないのでは?」
「いや、ちらっと資料を盗み見したら、クラスメイトの名前があった。あいつら本名で登録してる」
「……そうなのか」
「そうそう、他にもフードファイターをやって料理の戦いを繰り広げている人物達もいるらしいとか噂の範囲では……全部で20人ぐらいは検討はついている」
「そのギルドの人達から教えてもらえないのか?」
「個人情報ですって断られた。一応、ギルドに登録された人物は全国のギルドに一週間ごとに情報が共有されるらしいから、これからもっと誰が何処にいるのか分かるかもしれない。その情報が見れれば、だが」
それを聞きながらギルドの情報を何処かで手に入れたほうが効率的だよなと俺は思う。
そこでサヨが、
「そういえば特殊能力はシンイチローはどんなものなの?」
「それが全然分からないんだ」
「? “ステータス・オープン”しないの?」
「“ステータス・オープン”?」
つぶやいた俺の目の前で、水色の光の板のようなものが現れる。
そこには魔力などが数字で描かれていたが、俺が気になったのは特殊能力の項目。
「“合わせ鏡”? 空間操作系、転送もできるよ?」
そんな説明を見たのだった。
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