CR09 『殴り合い』
「『三速ドライン』でお前の山札に攻撃!」
シュウの宣言と共に巨大なモンスターの爪が俺を襲う。モンスター無視でプレイヤー単独狙いの殴り合い。実に赤単色デッキらしい試合運びだった。
【ツバサ LP 21→17】
俺の山札の上から4枚のカードがダメージとなる。俺はそのうち1枚のカードを掴んで宣言する。
「逆召喚、レベル3『人形遣いのパト』!!」
俺の場に仮面をつけた奇術師のような男が出現する。その指から伸びた紐の先にあったのは、かぼちゃの化け物だった。
「パトの効果で俺はドロップから『鬼爆弾』を召喚します。この効果で召喚したモンスターは攻撃出来ません」
「場のモンスターを増やしても無駄だ!俺はもう1体の『ドライン』で攻撃する」
【ツバサ LP 17→13】
「レベル3『這う影』をもう一度逆召喚します」
「俺はこれでエンドだ。『ドライン』は『一速』『二速』と違って召喚した2ターン後のエンド時に破壊される」
(つまり、次に相手ターンが回ってくれば、そのターンのエンド時に『ドライン』は自壊し、その次のターンにさらに加速したあのカードが来る……!)
△ シュウ LP 20 △
『三速ドライン』×2
▽ ツバサ LP 13 ▽
『這う影』 『人形遣いのパト』 『鬼爆弾』×2
「俺のターンです。俺は手札から『角兎 ルルー』を1体召喚してバトルフェイズに入ります!『三速ドライン』に攻撃!」
俺の場に角の生えた兎が一匹現れて『ドライン』に噛みつく。打点の高さの代わりにライフの低い『ドライン』は破壊された。
「そして『這う影』と『パト』で相手の山札を攻撃!」
【シュウ LP 20→15】
シュウは山札の上から3枚を見て1枚を場に出した後に、次の2ダメージからも1枚の逆召喚を宣言した。
「逆召喚、レベル2『垂直落下のラスト』。そしてもう1枚は――レベル1『下限ゲタ』だ」
「っ!?」
『下限ゲタ』は強いカードではない。『ルルー』と同じスペックにも関わらず「自分のエンド時にライフ2以下の自分のキャラを全て破壊する」というデメリット効果の付いたカードだ。
だが、この状況では最高のパフォーマンスを発揮する。
『三速ドライン』は元々のライフが3のモンスターで、ターンエンドごとにライフが1ずつ下がっていき、エンド時に破壊されると次のターンに加速召喚される。
(『下限』と『ドライン』、この2枚のコンボか!)
俺は何もできず、ターンエンドするしかなかった。その瞬間、シュウは『下限』の効果発動を宣言する。
「俺の『下限』の効果により、俺の場の『下限』と『ドライン』は破壊される」
△ ツバサ LP 13 △
『這う影』 『人形遣いのパト』
『角兎ルルー』 『鬼爆弾』×2
▽ シュウ LP 15 ▽
『垂直落下のラスト』
「俺はメインフェイズを開始する。この瞬間、ドロップの『三速ドライン』の効果発動。」
シュウは手を前にかざして宣言する。
「加速召喚!!レベル4『光速アハト』!!」
シュウの場に現れたのは大きなトカゲではなかった。忍者のように布を巻いていて顔も見えないが、爪だけは唯一飛び出ていて確認出来る人型のトカゲだった。
「ついに来たか。『加速』デッキの切り札……!」
『光速アハト』は『三速ドライン』の効果でしか加速召喚出来ず、普通に手札からは召喚出来ない。さらに出したターンのエンド時には自身の効果で破壊されてしまう。
その代わり、そのスペックは並のレベル4を大きく凌駕しレベル5――つまり、俺の【Flugel】にも匹敵する。
「『光速アハト』が加速召喚された時、俺の他のモンスターは全て破壊され、この効果で破壊したモンスターの数だけ『アハト』は攻撃回数が増える」
今の俺のLPは13枚で『光速アハト』の打点は6だ。
(ギリギリで俺の山札は1枚残る……!)
「安心するのは早いぜ。俺は手札からレベル1『自壊人形ローフ』を召喚!効果で『ローフ』自身を破壊することで相手に2ダメージ」
【ツバサ LP 13→11】
俺の山札の上から2枚のカードがダメージになる。俺はそれをカウントに置いた。
(まずい……。俺のデッキは11枚で『アハト』は6打点で2回攻撃だ。このままだと……)
「俺は『光速アハト』で攻撃!」
【ツバサ LP 11→5】
山札6枚が一度にダメージとして消える。俺はその中の1枚のカードを手に取った。勝負の結末を確信したのか、観戦している森嶋がにやりと笑った。
「逆詠唱――レベル3呪文『屋根裏の闇』!!!」
『屋根裏の闇』は黒単色デッキにだけ許された最強の除去呪文だ。その効果は相手の場のレベル3以下のモンスターを1体破壊する。そしてもう一つの効果は――
「詠唱色強化!レベル7!」
――カウントにある黒のカードの枚数以下のレベルを持つモンスターを1体破壊する。俺のカウントには黒のカードが7枚置かれているのでレベル7以下のモンスターを破壊出来ることになる。
もちろん、対象は『アハト』だ。
相手の場の『アハト』は闇に消え、シュウの場にはモンスターは居なくなった。
「俺はターンエンドだ。」
△ シュウ LP 15 △
▽ ツバサ LP 5 ▽
『這う影』 『人形遣いのパト』
『角兎ルルー』 『鬼爆弾』×2
「問題はここからだね」
森嶋が笑いながら言う。そう、ここからなのだ。
俺もシュウもそれを理解しているが、シュウはあえてそれを口に出す。
「今のターンで俺の『アハト』の一撃を免れる粘り強さは確かに認める。でも、このターンで俺を倒さなければ結局お前の負けだ」
シュウのLPは15で、1ターンには3体までしかアタック出来ないので俺は平均打点5になるようにモンスターを3体揃えなければならない。これがどれだけ難しいことかは、追い詰めたシュウだからこそ理解しているのだろう。
「いや、先輩にあんなかっこいいコンボ決められた以上、俺もやり返させて貰いますよ」
俺は最初から手札に持っていた1枚のカードを場に出す。
「レベル4『爆炎魔鬼ランタン』を召喚!!」
俺の場に出現したのは怪物ではなくもはや意思を持った爆風だった。
「『爆炎魔鬼ランタン』が召喚された時、俺は自身のモンスターを2体破壊しなければいけない!俺は『鬼爆弾』2体を選択!」
俺の場のかぼちゃの化けもの派手に爆発し、その爆風がシュウを襲う。
『鬼爆弾』は攻撃出来ない代わりに、破壊された時に相手の山札に4ダメージを与えるモンスターだ。シュウは合計で8ダメージを受ける。
【シュウ LP 15→7】
シュウがセットエリアから場に出したのはさっき見たばかりのカードだった。
「まだだ!俺は『終世の重機』を逆召喚し、お互いのフィールドのモンスター全てのライフを7下げる!」
お互いの場のモンスターたちが次々と消えていくが、俺にとってはこれも想定の範囲内だった。
「残念ですが先輩。『終世の重機』じゃ俺の『爆炎魔鬼ランタン』は倒せません」
『爆炎魔鬼ランタン』はライフ8のモンスターだ。
そして、『爆炎魔鬼ランタン』がアタックする時に相手は自分のモンスターを生贄にして、そのモンスターのレベル分ダメージを軽減させられると言うデメリット効果も持っていたが、もうお互いのフィールドには『爆炎魔鬼ランタン』以外のモンスターは残っていなかった。
「俺は……打点8の『爆炎魔鬼ランタン』で先輩に攻撃します!」
【シュウ LP 7→0 GAME END】
競技机の投影は薄くなっていった。
(……勝った。いや、勝てた。)
俺はあまりにもギリギリの勝利に直面して、『机上高』の生徒のレベルの高さを痛感していた。
(一年生でこれだとしたら、この森嶋と言う男はどれほど強いんだ?)
二人に対して拍手をしている眼鏡の男。
俺は若干の恐怖を感じていた。
■所持カード[ツバサ]■
枚数:40枚
○『片翼の夜騎士グレイヴ‐ф』
○『角兎 ルルー』
○『超過爆殺サラム』
○『這う影』
○『藁人形シルフィド』
○『宙を漂う砂粒』
○『鬼爆弾』
○『人形遣いのパト』
○『屋根裏の闇』
○『爆炎魔鬼ランタン』