CR05 『兎、宇佐見、兎、戦局は転ぶ』
(速攻で決める…!!)
「Lv.1『角兎 ルルー』とLv.3『這う影』を召喚!」
俺は4枚あるリソースを全て支払って、手札から2体のモンスターを召喚した。
さっきのターンに逆召喚した『山兎 ルルー』を含めて、俺の場に3体のモンスターが並び立つ。
【Greifen】では場に同時に3体までしかカードを出すことが出来ないので、後攻1ターン目にして俺は最大攻撃の準備を整えたことになる。
「バトルフェイズだ。『這う影』で相手の『魔獣ラスト』に攻撃!」
俺のフィールドを這って漂う黒い影が、相手フィールドのぬいぐるみのような獣にゆっくりと近づいてまとわりつく。獣は必死に暴れまわるが、実態のない影を掴むことは出来ない。
【Greifen】のカードには数値としてのステータスが3つある。
一つ目は【レベル】だ。【レベル】とは召喚の際に必要になるコストの枚数で、強いカードだとレベル4のカードまで存在する。
ちなみに『クイーン』や『キング』以外の『ルルー』は全てレベル1のカードである。つまり、『ルルー』デッキでは少ないコストで多くのモンスターを並べられるのが最大の武器ということになる。
二つ目は【打点】だ。【打点】とは相手の山札にアタックした時に与えるダメージ、つまり相手の山札を削れる枚数だ。レベル4のモンスターは基本的に4の【打点】を持っている。
最後に【ライフ】である。【ライフ】はその名の通りモンスターの耐久度であり、アタックを受けたり効果を受けることによって減る。これはターンエンド時に元の数値に戻るが、0を下回るとモンスターは破壊されドロップに置かれる。
今は俺の『這う影』がカズヤの『魔獣ラスト』を攻撃したので、『魔獣ラスト』のライフである【4】から『這う影』の打点とレベルの合計である【3+3=6】が引かれて『魔獣ラスト』が破壊された。
相手の山札ではなくモンスターに攻撃する時は打点にレベル分の数値が加算されるので注意が必要だ。
「やってくれるねぇ!僕のモンスターを破壊して、さらに追撃かい!」
「あいにく時間が足りないもんでね。2体の『ルルー』で山札を攻撃!」
『ルルー』はどちらも打点2のモンスターだ。
カズヤは山札の上から2枚を確認しどちらもカウントに置き、次の2枚を確認すると片方だけセットに置いた。3枚の【カウント】が溜まったことになる。
【カズヤ LP 35→31】
「僕の最強デッキの力をそろそろ見せてあげるとしようか!」
(たまっているカウントは3枚。と言うことはレベル3のあのカードか……。)
横でこの勝負を観戦している宇佐見も不穏な空気を感じたのか少し表情が強張っている。
「僕は3枚のカウントをコストにして『ルルー・クイーン』を逆召喚!!」
フィールド上に真っ赤なマントを纏って銀の首輪を付けた兎の女王が表れる。
俺としてはかなり嫌な逆召喚だ。
「俺はこれでターンエンド」
△ ツバサ LP 28 △
『這う影』 『山兎 ルルー』 『角兎 ルルー』
▽ カズヤ LP 31 ▽
『ルルー・クイーン』
「僕のターンだ! チャージの後、1ドロー・1リチャージだ」
【カズヤ LP 31→30】
カズヤはついにドローをした。【Greifen】ではドローが間接的なダメージになるのでありがたい。
「僕は手札からレベル4呪文の『五色のルルー・ダンス』を詠唱する」
【呪文】はカードの一種で、モンスターと違って効果を発揮した後に場に残らずにそのままドロップに置かれる。場に残らない分、強力な効果を持つものが多いのが特徴だ。
「『五色のルルー・ダンス』の効果、ドロップから同名のレベル1モンスターを4体までコストを支払わずに召喚する!」
「今リチャージしたのはそのためか」
「そうさ!リソースからドロップに置かれたのを含めてドロップの『川兎 ルルー』は3枚。これを全て復活させる!」
カズヤのフィールドに3枚の兎が出現する。
場におけるカードの上限枚数である3枚を越えて召喚されたモンスターは代わりにベースエリアに置かれるが、ベースエリアのモンスターは相手のモンスターにしかアタック出来ない。
「この瞬間、『ルルー・クイーン』の効果発動!自分の『ルルー』が召喚された時に1ターンに1度だけ、ドロップのカードを1枚デッキに戻してから1ドローする。僕はこれで手札を増やすよ!」
これが『女王』の能力だ。たった1枚のドローだがその前にドロップを1枚戻すため、山札を消費せずにドローすることが出来る。
3枚以下の差で勝敗が入れ替わることも多い【Greifen】では、この1枚のアドバンテージが恐ろしく大きい。
(しかも、これはLP差5枚のハンデ戦……厳しいな)
「まだ終わりじゃない!僕は手札からもう1枚呪文を詠唱する!レベル0、『五色のルルー・パンチ』!!」
カズヤが手札からカードをプレイすると、フィールド上の兎一体が青い光に包まれる。
「このターン僕の『ルルー』1体は相手の山札をアタック出来ない代わりにレベルと打点が2倍になる!」
(出やがったか。『ルルー』デッキ専用の疑似除去スペル。)
『五色のルルー・パンチ』は山札にアタック出来なくなること以外に弱点らしい弱点がない。『ダンス』と並んで『ルルー』デッキを支える強力な呪文だ。
「このルルーで君の『這う影』に攻撃し破壊する!続いて『ルルー・クイーン』で君の『山兎 ルルー』も破壊だ!」
俺のモンスターが2体破壊される。これで相手のモンスター4体に対して俺の場には『角兎 ルルー』だけだ。
「そして『ルルー』2体でプレイヤーの君に攻撃だ!」
【ツバサ LP 28→24】
俺は合計で4ダメージを受ける。これでカズヤとの山札差は6枚だ。受けたダメージを確認して1枚をセットエリアに置く。
「逆召喚、レベル3『藁人形シルフィド』」
「ずいぶん寂しいフィールドだね。ターンエンドだ!」
ここまで常に優勢でゲームを進めてきているカズヤは笑いながら宣言した。
△ カズヤ LP 30 △
『ルルー・クイーン』 『川兎 ルルー』×3
▽ ツバサ LP 24 ▽
『角兎 ルルー』
(ルルーの展開力が想像以上だな。このままだと押し切られる。)
相手の場に並んでいる『ルルー』の軍団、これを破壊するべきか普通ならば悩むところだが、俺の選択肢は決まっていた。
たしかに『ルルー』を倒せば一時的に受けるダメージは減らせるかも知れない。だが、それは死なないための選択肢であって生きるための選択肢ではない。
【Greifen】での強さとは、どれだけ自分自身をカードに預けられるかだと俺は思っている。俺はこのターンは相手の山札を削ることに専念すると決めていた。
(次の俺のターンが来るまで耐えてくれ……!)
「俺はチャージ、このターンもドロー・リチャージ無しだ」
俺は自分の手札のカードを1枚場に置く。【Flugel】の登場にはまだ早い。
「俺はレベル3『超過爆殺サラム』を召喚し、効果発動!相手の『ルルー』を1体破壊し、さらに3ダメージを与える!」
相手フィールドの水色の兎が炎に包まれて灰になる。
たしかに綺麗だが目を輝かせるのをやめてくれ、宇佐見。
『超過爆殺サラム』はモンスター破壊とダメージを同時に行う効果が強力だが、破壊された時に自分も山札を3枚失うクセの強いカードだ。
そして灰になったのを見て悲しそうな顔するのもやめてくれ、宇佐見。
【カズヤ LP 30→27】
「僕はこのダメージで『白兎 ルルー』を逆召喚する」
「俺は場の『ルルー』『シルフィド』『サラム』の3体でアタック!」
ダメージを与えたことでカズヤのフィールドにまた新たな『ルルー』が現れる。もともと相手の『ルルー』を減らすことが目的ではなかったので、俺は気にせず総攻撃を仕掛ける。3体の打点はそれぞれ2なので合計で6ダメージだ。
あと宇佐見は兎の再登場で少し喜ぶのをやめてくれ。
【カズヤ LP 27→21】
俺のデッキ枚数が24なので初めてカズヤのデッキ枚数が俺を下回ったが、その代償は大きかった。
「セットからレベル4『ルルー・キング』を逆召喚!!」
レベル4
打点4
ライフ8
巨大な兎に黄金の冠と真紅のマント。
相手のフィールドに『王』と『女王』が3匹の兎を従えて並び立つ。
決着はもう近くまで来ていた。
■所持カード[ツバサ]■
枚数:35枚(うち20枚は茜のカード)
○???【Flugel】
○『終世の重機』
○『半直の鬼フォルン』
○『ルルー・キング』
○『ルルー・クイーン』
○『山兎 ルルー』
○『角兎 ルルー』
○『超過爆殺サラム』
○『這う影』
○『藁人形シルフィド』