黒の兵科章
暖かい日だった。こそばがゆい春の風が桜の花を揺らし、肌をくすぐる。
その桜の木の根元に軍刀を吊った女性軍人が立っていた。
彼女の小柄さとその童顔さから非常に若々しく見えるが、その詰襟軍服の着こなしから短くない時間を軍で過ごしてきた事を伺わせる。
一陣の春風が吹いた。その風が彼女のもみあげと首筋でバッサリと切られた後ろ髪を揺らす。
その黒い瞳が見つめる先には看護婦に付き添われた車椅子に乗った青年が居た。
「あら? また、来られたのですね?」
その視線に気が付いた看護婦がニッコリと微笑みながら彼女に話しかけた。
「オガタさん。マモリさんも、貴女に話しかけられたら、よくなると思います」
オガタは逡巡するように、躊躇うようにそこを動かなかったが、看護婦の手招きに逆らえず、白い病衣のマモリの下に歩み寄った。
「ほら、オガタさん。わらって」
その言葉にオガタは苦笑を浮かべると、少し二人きりにして欲しいと言った。
「すいません。マモリ様を一人にするのは院内の規則に反するので」
「軍務的な事ですので――」
「あら、マモリ様は退役が決定しているので、軍務のお話は無いと聞きましたが」
オガタはさすが陸軍御用達の病院だと舌を巻いた。
それに、マモリと自分と二人きりにするのはまずいとも思い、看護婦の同席を嫌々認める事にした。
「実は、異例にも、この時期に人事異動がありました。わたしは分屯所を離れて、帝都に行くんです。すごいでしょう。帝都ですよ。
こんな田舎のマタギの娘が――、いえ、その、こんな田舎者が帝都で働くなんて、夢のようです」
「…………」
マモリの反応は無い。ただ、焦点の合わぬ目で青く澄み切った空を見るばかりで、外界への興味が失われたような、外界への興味が喪失してしまった青年が居るだけだった。
「あら、マモリさん、明日で退院する事になっているんです」
「え? 退院?」
「はい。ご家族の方が引き取って面倒を見る、と。最後に会われますか? 明日の昼すぎと聞いています」
オガタはしばし、悩むが、首を横に振った。
「わたしは、夕方の汽車に乗らないといけないので……」
「それはまた、急ですね……」
オガタは肩をすくめて仕方ないと無言で言った。
そして思い立たったようにマモリに視線を合わせるようにしゃがむと、襟章を指さした。
「見てください。兵科色が、黒になったんです。異例の人事って言いましたけど、なんやかんやで憲兵になることが出来たんです。マモリ少尉、貴方に、貴方に憲兵になった私を、見せたかった……」
「あ……」
「マモリ少尉!?」
「あ、あああぁあああああッ!!」
マモリとオガタの視線が交差した瞬間、マモリの口から狂気の言葉が漏れた。
「クトゥルフ・フタグン。ニャルラトテップ・ツガー。シャメッシュ。シャメッシュ 。ニャルラトテップ・ツガー。クトゥルフ・フタグン――
クトゥルフ・フタグン。ニャルラトテップ・ツガー。シャメッシュ。シャメッシュ 。ニャルラトテップ・ツガー。クトゥルフ・フタグン――
クトゥルフ・フタグン。ニャルラトテップ・ツガー。シャメッシュ。シャメッシュ 。ニャルラトテップ・ツガー。クトゥルフ・フタグン――」
「マモリさん! 落ち着いて! オガタさん。少しこの場をお願いします。何かしそうだったら、全力で止めてください! 先生! 先生!! マモリさんが――!!」
オガタはその様子をただ、冷たい目で見ていた。そして誰も居なくなった瞬間、オガタの口角がニヤリと持ち上がる。それを見た者は誰も、居ない。
そしてマモリが白衣を着た医者に連れられて消えると、オガタはぶらりと院内を歩き出した。
そのうち窓という窓に鉄格子のはめられた病棟に行くと、そこには呆けるように鉄格子を睨む眼鏡の男が居た。
カンバラだ。
ナイアラによって狂わされた彼は何かにすがるようにブツブツと何かを唱えている。それはきっと、無貌の神への祈りの言葉だろう。
オガタは彼の姿を一瞥すると、また歩き出した。これでオガタの知る知り合いは全て会った事になる。
そう、この病院にタケナガは居ない。
あの二十五連隊制圧の際に本物は分屯所の医務課に運ばれ、ドッペルゲンガーは連隊の軍医の元に送られたはずだが、その後、陸軍の軍服を着た者共の手でどこかに連れ出され、行方知れずになっていた。
そのためこの病院に居るオガタの知り合いはマモリとカンバラの二人だけ。
そう、知り合いは二人。
コツコツと編上靴が病院の廊下を歩み、とある病室で立ち止まった。その病室には『オガタ・ココロ』と名前が書かれている。
オガタがその病室に入るとき、どこかの窓が開いているのか、柔らかい風が彼女のバッサリとしている後ろ髪を揺らし、襟の隙間から覗く白い、傷の無いうなじが見え隠れした。
「失礼します」
病室は個室だった。そこにはもう一人のオガタが寝ていた。
彼女の眼は薄く開いてはいるが、何かを認識する事は無い。
話しかけても彼女はなんの反応もしない。
彼女が言葉を紡いでも、それは意味のある言葉ではなく、ただ喉がかすれるような音をだすだけだ。
オガタは彼女の枕元に近づくと、彼女の細い――自分と同じ細さの――首に両手をかける。だが、その指先に力は入らず、ただただ喉を覆うだけだ。
そして思う。
己という、この世に一つだけの席を守るために――この世に二人の同一人物がいる矛盾を解消するために殺しあいをしたと言うのに、今は不思議と殺意がわかない。
しばらくしてオガタは病院を後にした。そして分屯所に戻る。
自分のデスクはすっかりと片付けられ、その上にはポツンと一個のトランクケースが乗っかっているだけだ。
「おや? ココロちゃん。支度はもうすんだのかね?」
「ヤマナカ大佐! この度は、お世話になりました」
「いや、そんな事は無いよ。任地は変われど、役職は変わらない。帝都でも精進を――。と、言っても君は真面目だからね。心配する事はないか。
補助憲兵から憲兵に昇進した事でもあるし、親御さんもさぞ喜んでおいでだろう」
オガタはその言葉を複雑そうに聞きながら頷いた。
確かに産んでくれたのは親だ。だが、自分の真の姿を思うと、二度と親の前には現れないだろうとオガタは思っていたのだ。
「思えば、アラキから君の補助憲兵推薦を受け取った時は驚いたけど、君の家の事を考えるとね、推薦は断れなかったよ。
……今更になるが、どうかわしを許してほしい」
「ヤマナカ大佐? 許すとは……」
「我々軍人にとって戦傷は名誉の負傷だが、世間は違う。傷入りと言われては嫁入りも婿取りも大変だろう。
あの大逆事件の時の突入作戦を考案した者として、そしてその作戦で怪我をした君達の事が気がかりだった。
故にね、アイツがわしに推薦の審査を持ちかけた時は、なんというか、安堵したよ。
それがアイツのした唯一の善行だろう」
アラキは連隊本部の二階から窓を突き破って、地面に頭から落下して死んだ。
その後の調査で彼の部屋にあった日記等から叛乱の疑い濃厚としてそこに記載されたアラキの新派や連隊幹部を逮捕する事で一件落着した。
だが、その報告書にはミ=ゴやドッペルゲンガーに関しては一切書かれていない。
上からの命令でその事項の一切を記さないように指示されたからだ。その上が参謀本部なのか、それとも陸軍省からなのか、オガタには知り得ない。
その上、二十五連隊の南の森にあった箱舟も忽然と姿を消し、オガタが再調査した時にはただの陽だまりとなっていた。そのためミ=ゴを思い起こさせる物は何一つ無くなってしまったと言って良い。
「その、軍刀、似合っているよ。まさに憲兵さんだな」
「その、ありがとうございます」
これはアラキが本物のオガタに与えた軍刀をオガタが戦利品としてもらった――という事にしているが、実はマモリの軍刀だった。
何故、マモリの軍刀を腰に吊るのか、オガタ自身もよくわかっていない。それでも吊っておいた方が良いと黒い予感がしたので、こっそり交換したのだ。
「寂しくなるねぇ。カンバラも、マモリ君も退役。君とウルキちゃんは帝都か」
「すぐに後任が来ますよ」
「そうそう。マモリの件で、彼に帝都から封筒が届いていた」
「封筒?」
「どうやら、マモリの仕事絡みの内容らしい」
ヤマナカは元マモリのデスクに歩み寄ると、そこの引き出しから一通の茶封筒を取り出した。
「何か、追っていたようだが、彼はもう退役だからね。彼の仕事の大半は君が付いていたから、彼の部下だった君が持っているべきと思う」
そう言って渡された封筒をオガタは受け取った。
受け取ると早速封を切る。そして中の書類を確認すると、オガタはそれをトランクの上に置いた。
「確かに受け取りました。それでは、そろそろ汽車の時間ですので。
ヤマナカ大佐。今まで、ありがとうございました」
オガタはアラキに綺麗な敬礼をし、ヤマナカはそれに答えた。
「達者でな」
「はい!」
オガタはデスクにのったトランクと封筒を掴むと、一礼して仕事場を後にした。その途中、誰も監禁されていない独房の前を通り過ぎる。
あの後、二十五連隊の制圧が行われ、アラキ・ジュウゾウ大佐が飛び降り自殺をしたのち、それに気が付いた兵士が二階に行くと目を覆いたくなるような惨状が広がっていた。
謎の呪文を永遠と呟くマモリ。血の湖に沈むオガタ達。
まさに惨状。
その後オガタは病院に運ばれ、そこで二日ほどを過ごしてから職務に復帰すると、そこにナイアラの姿は霧のように掻き消えていたのだ。
オガタがそれを問い合わせると元々誰も収監していなかったという返答が来て唖然とした。
だが、オガタはアイツなら仕方がないと追跡を諦めた。そして淡々と職務をこなし、そして辞令を受けて帝都に向かう。
軍から交通費を支給されたのですし詰め状態の三等車ではなく、二等車に乗ることが出来たのは行幸だろう。
おまけにこの客車には人が少なく、四人掛けのボックス席一つを占領する事が出来た事も幸運の延長線と言える。
オガタは過ぎ去る田舎風景を眺めていると、誰かが向かいの席に腰をおろすのを感じた。
チラリとその者に視線を向けると、黒いスーツに浅黒い肌の男が薄い笑いを浮かべて座っていた。
「これは、これは。オガタさんではありませんか。ん? 襟の色が違うんですね。部署替えでもあったんですか? いや、そもそも雰囲気もだいぶ変わられましたね。何か良い事でもあったのですか?」
「……確かにわたしは変わりました。ナイアラさん……。いえ、シヤン・タクさん」
「――――ッ」
ナイアラが小さく息をのんだ。
オガタはマモリ宛に届いた封筒をナイアラに差し出す。
「これは特別高等警察に席を置いているマモリ少尉のご友人からの報告なんですが、帝大に問い合わせたらナイアラという学生が卒業した事はない、との事です。大帝都出版に席があるというのは本当らしいですけど」
ナイアラはオガタから渡された封筒の中の書類に軽く目を通す。
そこには白黒の写真でテーブルの上に立ちあがって何かの演説をする民族衣装姿のナイアラが居た。
「ナイアラ・ホテフ。本名シヤン・タク。年齢不詳。出身地不明。
シン国の反国家主義政党の中心的人物。シン国駐屯のタカマガハラ陸軍へのテロ事件の首謀者。
タカマガハラ皇国では出入国管理法違反、治安保持法違反、身分詐称、無政府主義活動家、国家転覆罪等余罪多数の重犯罪者」
ナイアラ――シヤンはオガタに罪状を読み上げられると、今度は嬉しそうに顔をほころばせた。
「わたくしはそんな大した者ではありませんよ。人違いでは?
ですが、わたくしがその、シヤン・タクと過程した場合、目の前に重犯罪者が居るのです。オガタさんはどうされますか?」
「そういうのは司法警察の領分ですから、内務大臣の指揮下でなければ憲兵と言えど、逮捕は出来ません。思想犯は特別高等警察にお任せします。
それより一つ、聞きたい事があります。貴方は――」
オガタはそこで言葉を区切ると、ナイアラの足を蹴った。
その唐突な動作にナイアラは珍しく表情を壊して驚きの色を浮かべる。それを見たオガタはどこか、満足そうに頷く。
「痛ッ。暴力はいけませんよ」
「わたしが間違っていたのなら蹴った事についてもお詫びします。貴方は、この世界の住民ではありませんね」
「ご明察の通りです」
「人間でもありませんね」
「…………」
「シャンタク鳥」
その言葉にナイアラは笑みを辞めた。それは図星であり、子供が悪事を親に看破された時の表情と同じであった。
「シャンタク鳥がわたしの名を騙るとは思いませんでした。それにシヤン・タクと言うのも偽名でしょう。まったく、ふざけた事を――」
「その通りであります。我が主。これまでのご無礼をどうかお許しください」
だが、焦った顔もつかの間。また不気味な笑みを浮かべたシヤンは恭しくそう言った。
「わたしが知っている限り、シャンタク鳥は人語を解しても、話せないはずだけど?
そもそも、この世界はどこ? 日本に似ているけど、わたしが知る限りタカマガハラ皇国って国は存在してない」
「おや? 全てを知った上で無知を演じていると思っていたのですが、まさか本当に記憶が無い?」
忌々しくオガタが頷くと、ナイアラは疲れた顔でため息をはいた。
「まったく。それでどうやって元の世界に戻るつもりです?」
「だからまったく記憶が無いんだって。そもそもなんでこの世界にいるんですか?」
「ならどうしてわたくしがシャンタク鳥であるとわかったのです?」
それは直感だった。ただ、そのような気がしたのだ。
それにオガタは予防線を張っていた。『わたしが間違っていたのなら蹴った事についてもお詫びします』と。
「良いでしょう。お話します。発狂しないでくださいよ。人間は弱い生き物ですから。あの中尉のように――。
我が主は暇を持て余しすぎて、イースの偉大なる種族と接触したのです」
「イースって、あの精神に寄生する、あいつ?」
ナイアラが言うには、おもしろ半分でイースの偉大なる種族と接し、彼らの持つ精神交換の技術を試したいと我が儘を言ったらしい。
「え? つまり、遊び半分で精神交換したら別世界に来ちゃったの?」
「そうです。我が主の憩いの地であるンガイの森を焼き払われたクトゥグア様を異次元に幽閉したいからと気まぐれでイースの技術に自身の魔力を混ぜたせいでパラレルワールドに飛ばされてしまったようです。あ、わたくしはその巻き添えになりました」
オガタはポカンとしていたが、確かにそんな事をしたような記憶があった。
高度な精神生物であるイースの種族をからかうのは大変面白かった。おまけにイースの技術に茶々を入れて目の上のたん瘤であるクトゥグアを別世界に送ってやろうと茶々を入れたら彼らが逆上して――そこからオガタの記憶はプッツリと途切れてしまう。
「で、どうするの? 帰れるの?」
「わたくしは肉の檻に閉じこめられているので元の力を発揮できません。
ですので我が主にそろそろ帰ってはどうかとご助言をしたいのですが――」
「ごめん。そんな方法知らない」
そしてオガタは思った。
自分はどこからがオガタ・ココロであり、どこまでが無貌の神なのだろうか、と。
「はぁ……。主の我が儘には慣れております。
ではまずイースの偉大なる種族と接触しましょう」
「どこにいるのか、わかるの?」
「いいえ。まったく。これから探しましょう。それまで、人間ごっこを続けますか」
人間ごっこ。
オガタはそこでハッキリと今までがごっこ遊びだった事を知った。
そう、全て遊び。
自分のドッペルゲンガーを追ったのも、危険を承知でミ=ゴの箱船に潜入した事も、自分に起こった違和感も、全て面白そうだからそうしたにすぎない。
オガタの行動原理にあるのはそれが面白そうだからそこに首を突っ込んでみたくなるという遊び心だった。
「わたしの行動原理はわたしが人間では無く、ニャルラトホテフだったから、か。それで、なんでわたしの名前を騙っているんです?」
「わたくしもせっかく人の体を手に入れたので、我が主のしている事を真似たくなったのです。
それで、この国の人たちに色々接触しました。そのうちの一人がアラキ・ジュウゾウさんです。
失意の彼にミ=ゴを紹介しました。
そしたら何か、世界最終戦争が――とか、閣下の意向が――と勝手に暴走しだしてしまって、どうも飽きて来たので刺激を入れてみようと――」
「わたしの居る分屯所に来た、と」
「そうです。その方が面白くなるだろうと思って断片的な事を告げました」
「全て眷属にしてやられたって事か……」
「あと、分屯所に行く前――アラキ大佐と接触して、少し経った頃ですか。
アラキ大佐にドッペルゲンガー第一号は主にすべきと進言したのはわたくしです」
「お前か!! って、ん? わたしはオガタ・ココロのドッペルゲンガーだから、わたしはナイアラートテップでは無いんじゃないの? それより植物状態の、もう一人の方が本当のナイアラトテフじゃ……」
「どうやら精神が肉体と強く結びついたせいでわたくしと同様、本来の力が使えないようですね。それにドッペルゲンガーは同一の存在。
我が主――貴女が自身の本質を忘れていたように、もう一人のオガタさんも、その事を忘れているのでしょう。その鏡像に驚いて昏睡してしまうとは、これまた傑作です」
「……どっちにしろ、わたしが偽物である事に違いはないんだ。
と、いう事はその本物がこの世に二つある矛盾はどうするの? わたしは彼女を殺した方がよかったの?」
「そうとも言えません。
アメリカの哲学者ドナルド・デイヴィドソン氏の見解を用いると、本人の経験や経緯に基づいて得られたものこそが知識であるとしています。
つまりミ=ゴによって作られた存在であるドッペルゲンガーは生まれたばかりであり、その経験や経緯をもっていません。
故にドッペルゲンガーにある知識は知識に似たもの、という事になり――。
って、我が主。眠らないでください」
オガタは彼の哲学講義が新手の催眠術に思えた。
それよりもまだ結論が出ていない。
『オガタ・ココロ』という存在が二つあるという矛盾に対する解を彼はまだ示していないのだ。
「まぁいいです。では、我が主だけに通用する単純明快な答えを告げましょう」
うじうじしているのは主に似つかわしくない、とナイアラは再び薄く笑って言った。
「あなた様は千の顔を持つ無貌の邪神。神々に従いながらも彼らを嘲笑する蕃神。故に一つの形と成りえず、絶えず矛盾を孕みながらそこに災厄をまき散らすモノ」
「矛盾を孕みながらそこに災厄をまき散らすモノ……」
千の顔を持つが故に一体とせず、全てに従属しながらもそれに従わない。
矛盾。
互いの存在が干渉することでこの世に存在を許されない存在。
「我が主には全ての矛盾が許される。何故なら主こそ矛盾そのものだから。
故にこの世に二人の同一体がいても問題になりえません」
「そっか……。そうだね。わたしは何人にも――それが世界の法則であっても束縛されないモノ。わたしの本質は混沌にして矛盾を孕む神。
わたしの心を縛る鎖は無く、故にわたしの行動は全てが面白いか否かで決まる」
オガタは自分に語るようにそう言った。
「この肉の生活も、面白いかな?」
「我が主のおっしゃるままに」
「それじゃ、緩くイースの偉大なる種族を探して、その間は愉しむとしよう。この人間ごっこを」
黒い兵科色をつけた女性軍人が口角をニヤリと吊り上げて笑った。
ここまで御付き合いくださり、誠にありがとうございました。
活動報告で大反省会をしておりますのでよろしければどうぞ。
最後に、初めてのホラー小説という事もあり、読者の皆様に満足いただけたのか不安が募っています。
ですがクトゥルフというジャンルを書くのは新鮮であり、とても面白い経験が出来たと思っております。
最終戦争論だったり閣下だったりと伏線が残っていますが、この物語は一旦終わり。他の連載小説を進めていきたいと思います。
また御縁があればホラージャンルの片隅でお会いしましょう。
それではご意見、ご感想をお待ちしております。




