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「ただいまー」
森から村に帰って来て、すぐにギルドに直行してみた。
「おう、お帰り!どうだった、初バトルは?」
ギルドの受付に座っていたゲンさんが、にっかり笑って迎えてくれる。
ゲンさんは、50代間近の頭頂部に代わって顔の周りがもじゃもじゃなおじさんだ。
太い二の腕と豪快な笑い声が自慢らしい。
「ひどい目にあったよー。変な汁が出るなんて教えてくれなかったじゃんー」
「ユーリ、そりゃちゃんと聞いてないお前さんが悪いさ。俺はちゃんと言ったぞ?『返り血には気をつけろ』ってな」
「あれ返り血じゃないもん、絶対違うもん、変な汁だもん」
文句を言いながら核を並べていく。
「おぉ、こりゃ結構狩ってきたな。最初でこんだけ出来りゃ大したもんだ」
「そーでしょ、こんな時間までがんばったもん。ね、幾らくらいになる?」
「そーだな、ご褒美でこれくらいか?」
おじさんの指が1本立つ。
「えー、それじゃまるっきりギルド規定値じゃん。子供相手だし、せめてこのくらいは」
と言って指を5本立てた手を突き出す。
「動物なら肉とかあるが、核だけだとなあ・・・この村にゃ鍛冶屋も魔導師もいないからなぁ」
そう言いながら指が2本になる。痛いトコを突いてくるな。
「うっ・・そ、そりゃそうだけど、でも将来私たちが他の街に核とか運べるようになったら、運送費とか安くできるでしょ?」
口では強気に出ながらも、そっと指を1本下ろす。
「そりゃー出世払いってことじゃねーのかぁ?見込みのある奴にしか出来ない技だなあ」
にやにやしながらもおじさんの指は上がらない。
「うー、しょうがないなぁ・・・おじさん、私の初めて(取ってきた核)をあげるから、お・ね・が・い?」
そう言って眼を上目遣いにして、ポケットから若干大きめの核を取り出しそっとカウンターに載せる。
それを見たおじさんの眼が少し見開かれ、次いで破顔した。
「がっはっはっは!ユーリにはかなわねぇなあ!よーし、今日は多めに色を付けといてやるよ!」
大声で笑いながら、3本に増えた指を振った後、ごつい手で私の肩をバンバン叩いてくる。痛いよ。
「やったー、ありがとう!」
うまく交渉が纏まったところで後ろを振り向くと、盾を持ったマフィ、マントを羽織ったマーリン、鍋を持ったウィンディに生暖かい眼で見られていた。