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ミュージカルを観に行く

作者: WAIai
掲載日:2026/07/29

今日はクラス全体でミュージカルを観に行くので、電車に乗っていた。


午前の部を観に行くので、朝から皆、テンションが高かった。


授業は息苦しくて、流れゆく景色を見ていたほうが楽である。


「今日は皆、元気だね」


彼女は向かい側に座っており、俺は少し眠たそうな目で答える。


「そうだな。俺なんかミュージカルを観ないで寝ないか心配だ」


ふわあとあくびが出ると、彼女が手でフィルターを作る。


「パシャリ!! ライオンさんの寛いだ姿を撮った!!」

「あのな…。全く、うちのうさぎさんはユニークなんだから」

「そう? えへへ」


彼女が笑いながら、髪をいじる。

彼女の毛は極上の絹のようにさらさらで、触ろうかどうしようとうずうずする。


「…ちょっと持った」


俺はのんびりモードから、急に真剣な顔つきとなる。

彼女は目をぱちくりとまばたきし、俺の言葉を待つ。


俺は斜め方向を睨むと、じっと見つめる。

彼女も同じ方向を見、「わあ」と声をあげる。


「美男子だね」

「…美男子か」


どうりで周りの女子がうるさいと思った。

まるでシャム猫みたいに、気位の高い人間が、3人立っていた。


先程から視線を感じていると思っていたが、目的は何だと見極めようとする。


「アイドルみたい」

「お前は好きなタイプなのか?」


2人で会話していると、1人が動き出し、こちらへやって来る。

他校の生徒らしく、制服が異なる。


何しに来たとすごむと、シャム猫はびびったらしいが、負ける気はないようだった。


「彼女、可愛いね」


よりにもよって、俺の彼女に話かけたので、俺は更に神経を尖らす。


目的はうちのうさぎさんのようで、俺は嫉妬心をむき出しにする。


「俺の彼女なんだけど」


立ち上がり、向かい合うと、俺のほうがでかかった。

シャム猫は後ずさったが、仲間2人を手招きし、対抗してくる。


「別に。君には用がない」

「は?」


俺は額に青筋を立てると、3対1で負けてたまるかと胸を張る。

彼女はどうしようか迷っているらしく、

「喧嘩は、あの、その!!」

上手く言葉にならないようだった。


ライオンが全身のオーラを強めると、シャム猫達は横に並び、拡散させる。


こいつら…と俺が殴ろうかどうしようか、拳を作っていると、車掌さんがやって来た。


「君達、何をしているのかな?」


丁寧な言葉遣いだったが、警戒しているのが分かる。


「別に何も」


シャム猫が少し生意気に答えると、俺も反論する。


「何でもありません。ただのいざこざです」

「いざこざね…」


車掌は間に入ると、両手で交互に胸を指す真似をする。


「とりあえず座りなさい。皆の邪魔になるから」

「そいつらがどこかに行ったら座ります」

「何…!!」


ライオン対シャム猫軍団のゴングが鳴るかと思ったが、車掌のほうが頭の回転が早いらしい。


「若くて血気盛んなのはいいけれど、ここは君達だけの空間じゃないんだ。他のお客さんのことも考えて」

「…はい」


俺が渋々、引き下がるのに対し、シャム猫達はあっかんべーをしたり、中指を立ててきたりと、やりたい放題だった。


どういう教育を受けているんだと、堪忍袋の緒が切れそうになると、車掌がたしなめる。


「君達!! やめろと言っただろうが!!」

「はい…」


3人は大人しくなり、車掌が彼らの背中を押す。


「向こうの車両に行きますよ。ここにいたら、喧嘩が勃発しそうなので」

「ありがとうございます」


俺が頭を下げると、車掌はシャム猫達を連れて行ってくれた。


俺はふうと息を吐き出すと、彼女が心配そうに言ってくる。


「大丈夫?」

「ちょっとだけ疲れた。見た目は綺麗なのに、心は黒いんだな。最悪だ」


吐き捨てると、どかりと椅子に座り直す。

俺はまだ苛々しており、うさぎさんに言う。


「寝る。お前も気をつけろ」

「う、うん」


彼女が俺の膝を擦ってきたので、少しだけ機嫌が良くなったのだった。



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