『山のサラダ弁当』
山登りが趣味のマサトは、今日も休日を利用して山に登ってきた。今日は、山の麓に移動お弁当屋さんが来ていた。
山の上で食べるお弁当も美味しそうだなと思い、マサトはひとつ買うことにした。
不思議と眼力が強いおばあちゃんが、一人でお弁当屋を開いていた。
何種類かのお弁当があったが、少しだけおにぎりを持ってきていたマサトは、お野菜たっぷりのサラダ弁当を買うことにした。健康にも良さそうだ。
今日の空は薄く雲がかかっている。別段雨が降りそうではないので、マサトは普段と同じ感覚で頂上を目指して登っていく。
山はやっぱり気持ちがいい。特に一人で山に登っていると、聞こえるのは自分の呼吸の音だけ。
そして周りの風の音。……あれ、今日は風がないみたいだ。
マサトは二時間ぐらい、いいえ三時間ぐらい歩いたでしょうか。
見晴らしの良い頂上に着いた。でも空には薄い雲がかかっている。すっきりした天気だったらもっと気持ちが良かったんだろうな、とマサトは思った。
マサトはリュックから水筒を取り出し、そしてあのおばあちゃんから買ったお弁当箱を出した。
お弁当箱の蓋には、半透明のプラスチックの蓋がかかっている。マサトはどんなお弁当か楽しみで、半透明の蓋を開けてみた。
するとどうでしょう。それと同時に、空に薄くかかっていた白い雲も晴れて、急に日差しが差し込んできた。いい天気になってきた。
日差しがとっても気持ちがいいな、とマサトは思った。
マサトが買ったのはサラダ弁当。お野菜たっぷりのお弁当だ。
いろんなベビーリーフが入っている。それに大きなブロッコリー。
それから蒸したじゃがいもに、そしてプラスチック製のフォークが一本添えられてあった。
なかなか本格的なサラダお弁当だ。うっすら塩味で美味しそうだ。
マサトは日が強く差し込んできたので、お弁当を抱えて、頂上にある木の陰に入った。
葉がとっても生い茂っていて大きな緑の塊に見えました。ここでゆっくりしながらご飯を食べようと、マサトは思った。
マサトはいろんな葉っぱのベビーリーフから食べることにした。
フォークにさすと、ザクッという音がした。
いえ、お弁当の中からではない。マサトの背後の方からだった。
あれ、勘違いかな。そう思ってそのままベビーリーフをフォークで口に運んだ。とっても美味しい。
次にはじゃがいもにフォークをさした。
グサッと音がしたのは、お弁当箱の中からではない。マサトの後ろの方からだった。
マサトは驚いて後ろを振り向く。何の音かな。しばらく耳を澄ましていたが、何も聞こえない。
もう一度、じゃがいもにフォークを差し込んでみる。
グッサ。
やっぱり、後ろの方から音がしたような気がする。
なんだろう、不思議だな。風で草がすれ合う音なのかな。
マサトはそのままじゃがいもを口に運ぶ。じゃがいもなのに甘くて、とっても美味しい。
今度は大きなブロッコリーを食べようと、マサトは思った。フォークをブロッコリーにさす。
グサッと。
マサトの頭の上から音がした。マサトは驚いて頭の上を見上げる。何にもない。
さっきからとっても不思議だなあ、と思いながら、ブロッコリーを大きなお口にかぶりついた。
とっても美味しい。むしゃむしゃと、マサトは食べてしまう。
そうすると、頭の上の木も、ざわざわとぐしゃぐしゃと音を立てる。
マサトが慌てて上を見上げたら、
パクッと。
大きな赤い空洞に飲み込まれてしまった。
おしまい。




